人間誰しも、注意を受けたり耳の痛い指摘をされた際にはこちらの言い分を口にしたくなるもの。しかしそれが「得策」かと言えば決してそうではないことも、ほとんどの方が理解しているのではないでしょうか。今回、iU情報経営イノベーション専門職大学教授を務める久米信行さんのもとに届いたのも、そんな「反論グセ」をなんとかしたいというご相談。久米さんはメルマガ『久米信行ゼミ「オトナのための学び道楽」』の中で、「どうすれば反論を飲み込めるようになれるのか」という読者からの質問に、極めてユニークかつ建設的な作戦を伝授しています。
オトナの放課後相談室「すぐ反論する性格から脱却したい」
Question
会社で、注意や指摘を受けると、反射的に反論してしまいます。
本来ならまず受け止めるのが、マナーかと思うのですが、責められているように感じて、防御本能的に反論してしまうのです。
なので、周囲からは素直じゃないヤツ、言い訳の多いヤツと見られています。
何とか脱却したいのですが、どうすれば反論を飲み込めるようになるでしょうか?(東京都・31歳、男性)
久米さんからの回答
反論は飲み込まずに半ばスルー。ただ注意と指摘をメモしてはいかがでしょう?
私も昔はついつい反論してしまう人間でした。その血を引き継いでしまったのか、今では、二人の息子に意見するたびに反論されているのですが、逆の立場になって気づいたのですが、あまりいい気分ではありませんね。
さて、どうすれば「反論を飲み込めるか」とのご質問ですが、「飲み込む」という表現からして「嫌いな食べ物を無理やり胃袋に放り込む」がごときツラそうなことに聞こえます。
そこで、もっと簡単にスルーできそうな楽な方法を一緒に考えましょう。
思わず反論してしまうのは、おそらく、ご自身が、誰かの言葉を重く受け止める真面目な性格だからでしょう。真面目なこと自体はもちろん美徳です。ところが、つい過剰に反応して反論した結果、悪気はないのに相手から反感を持たれてもつまらないですよね。
そこでまずは「アドバイスありがとうございます。次からそのようにいたします」とでも返答して、半ばスルーされてはいかがでしょうか。
そして、注意を受けながら、その場でメモを取ってみるのも得策です。助言を傾聴し、叱咤激励を真摯に受け止めていることが相手にも伝わることでしょう。
これまで私は、経営者として、また教師として、誰かを怒らなければならない修羅場を経験してきましたが(実は気持ち良い役割ではなく私は嫌いなのです)、実は怒りながらも不安を感じているのです。
「ちゃんと注意や助言の意味を理解してくれているだろうか?」
「理解した上で、ちゃんと実行してくれるだろうか?」
「それどころか逆恨みされてしまうのではないだろうか?」
こうした「叱る人の不安」を解消してあげてはいかがでしょう。
そのためには、怒られ始めたら、思い切って「ご注意ご助言いただいたことメモさせていただいてもよろしいですか?」と切り出してみましょう。
そんな言葉は、私もかけられたことが無いので、きっとそれだけで感動します。そして、叱る側も、怒りたい激情より、助言したい理性の方が優位になるでしょう。その結果、感情にまかせて叱られて「何が悪いのか、何をすれば良いかがわからない」という最悪な状況から脱することができるはずです。
この「叱られた時はメモする作戦」が良い点は、思わず反論したくなる脳の回路を、とりあえず言われたことをメモする回路に切り換えることができることです。言われたことをそのままメモするのは、やってみればわかりますが、意外に、脳のメモリやCPUを食うものなのです。おそらく反論する余裕も無くなるはずです。
そして、一通り、お叱りが終わった時点で、メモする手を止めて、「ご注意いただきありがとうございました。次回から気を付けます」とお礼を言って みましょう。
おそらく、上司も驚き、ちょっと拍子抜けするはずです。
そこで「ただいまのご助言をメモさせていただきましたので、復唱させていただいてよろしいですか?」と、さらに相手を驚かせます。
「このメモで足りない点があったら、さらにご助言いただけたら嬉しいです」
これなら上司が「私の助言が伝わっただろうか」などと不安になることもありません。
もしも、差し戻しで納期のある案件だったら「ご助言に従って、〇〇日に仕上げたいと思いますが、その前に、一度チェックしていただいてよろしいですか?」と添えれば、上司もさらに安心することでしょう。
こうして、反論せずに良好なムードで、その場を乗り切ったら、後でメモを読み返してみましょう。冷静になった頭で、上司が怒った理由や、何をして欲しいかという真意を探るのです。
その場で面と向かうと反論したくなる気持ちは、メモを取るのに集中し、後で見返す時には、もう収まっているはずです。しかも、怒った上司でさえ、最後は驚き、少しは機嫌が良くなっているでしょうから、お互いに感情の高ぶりも鎮まっていることでしょう。
あとは、上司の助言で納得できた点は素直に受け入れて仕事をやり直しましょう。
もちろん、納得できないこともあるかもしれません。
しかし、まずは「言われたことを素直にすぐやる」ことを最優先してみましょう。言われてないことを自己流でやって失敗しては、さらなるツッコミが入るかもしれませんので。
どうしても「自分流」をつけくわえたい なら、事前に上司に確認に行った際に相談してみれば良いのです。
「先日のアドバイスの通り、案を作ってみて進めたいのですが、加えて、こんなアイディアを思いついたのですが、どうお考えになりますか?」
要するに、叱られている時に反論して火に油を注ぐより、上司の意見を聞いて相手を気持ちよくした状態=意見を一番聴いてくれやすい状態で、さりげなく自分のアイディアを伝えるわけです。
もし思いついたアイディアが採用されたらしめたもの。上司を良い意味で驚かせて「見直したぞ」と評価を高めることになるでしょう。
もしも「そのアイディアは使わない方が良い」と言われたとしても、あえて自分の案をゴリ押しするのは控えましょう。自案が通らなくとも、そして口に出されなくとも、「言われたことをちゃんとすぐやる上に、プラスアルファの考えを付け足そうとしている」熱意が評価されるはずです。
また、若い頃は反論好きだった私も、年を重ねた今、「やっぱり年長者の意見が正しかった」と感じることも少なくありません。
そんな10年後20年後の気づきのためにも「お叱りメモ」を書いて蓄積しておくのは、将来きっと役立つ はずです。
ということで、反論し感情のぶつかり合いで身心をすり減らすより、とりあえず相手の意見をメモしながら良く聴いて実行してみてはいかがでしょう。反論を飲み込むより楽だと思いますよ。
ちょっと遠回りに感じるかもしれませんが、こうした 小さな積み重ねで、上司から「カワイイやっちゃ」と思ってもらうと、何かと楽に仕事ができます。こうして人間関係の地ならしをした上で、自分のアイディアを少しずつ通していけば、ストレスなく仕事ができる理想の職場環境や人間関係が築けることでしょう。
※ 大好評「オトナの放課後相談室」の他にも久米さんのコラム、さらに「毎月のお題」やなんでも歓迎「フツーのおたよりコーナー」に寄せられた読者の声に対する久米さんのお返事等々、圧倒的ボリュームでお届けする「読者参加型サロン」的メルマガ『久米信行ゼミ「オトナのための学び道楽」』は初月無料! ぜひこの機会にお申込いただき無料サンプルをご覧ください。
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