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世界に響く中国・西安からの悲鳴。コロナよりも「都市封鎖」で殺される人民たち

先日掲載の「習近平の面目丸つぶれ。ゼロコロナ失敗の中国は『尖閣奪取』に動く」でもお伝えしたとおり、自らのメンツを守るため西安のロックダウンに踏み切った中国当局。封鎖から約20日、1,300万人もが住む巨大都市はどのような状況となっているのでしょうか。今回のメルマガ『黄文葦の日中楽話』では、2000年に来日し現在は日本に帰化されている中国出身の作家・黄文葦さんが、各種報道を引きつつ西安の現在を紹介するとともに、悲劇の再発防止を強く訴えています

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2022年西安、響きわたる悲鳴

西安は昨年12月23日午前0時から都市丸ごとに閉鎖された。中国語で「封城」だという。

厳格なロックダウンは人々の生活に深刻な支障をきたしただけでなく、経済活動もストップしてしまった。武漢のロックダウンから約2年が経過したが、西安は武漢の経験から学んでいないように見える。

「封城」の前、西安のスーパーや市場ではパニック的な買い占めが起こり、個人の携帯健康コードがクラッシュし、数万人が出勤や通勤ができない状態に陥った。「封城」の後、生活必需品の供給が追いつかず、「食料がない」と報告するネットユーザーも大勢いた。2022年、西安の悲鳴が世界中に聞こえてくる。

「コロナによる死者はほとんどいない。でもコロナ対策によって何人もの死者が出ている」。

 

6日、中国版ツイッタの微博(ウェイボー)には、西安市当局のコロナ政策に憤る市民のコメントがあふれた。きっかけは妊婦が診療を拒否され、死産したという投稿だ。

 

中国メディアなどによると、1日夜、妊娠8カ月の女性が腹痛を訴え市内の病院に搬送されたが、コロナの陰性証明の有効期限が4時間前に切れていたとの理由で、氷点下の屋外で2時間待たされた末、死産となった。妊婦の親族が、屋外で待たされ大量に出血する女性の様子などの映像をSNSに投稿すると「非人道的な対応だ」と病院の対応に批判が殺到した。

西安、都市封鎖で悲劇続く 「ゼロコロナ政策で死者が出ている」

食料品の購入が困難な住民、ロックダウン期間中に饅頭を買いに階下に降りたところ防疫官から残忍な暴行を受けた住民、心臓発作を起こした老人などなど…千年の都での極端な制限は市民の不満の火種となった。

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西安在住のフリージャーナリストの江雪氏は、閉鎖中の日記「長安の十日間」の中で、「この都市は、最終的にどんな壮大な物語から苦しみが語られても、私は、今夜はただ、父親を失った少女のこと、泣きながら見知らぬ防疫官のところに行って生理用品をもらい、何度も何度も告げた若い母親のことだけを考えている。そして、辱められ、傷つけられ、ないがしろにされてきた人々。そもそも、こんな目に遭う必要はなかった」と書いている。

混乱状態の後、反省も教訓もなく、官僚たちが「表彰と賞賛」を急ぐようでは、人々の苦しみは「無駄に終わるだけ」である。西安の惨憺たるコロナ対策は、西部地域の管理水準が上海や広東などの先進地域からかけ離れていることをある程度反映しているといえるだろう。

中国で2年間の新型コロナと戦う経験と、武漢でのロックダウンの前例がある。しかし、住民人口1,000万人を超える西安は、新型コロナに関する知識がほとんどなかった武漢に比べて進歩はなさそうだ。抜け穴だらけで、食料不足などで苦しんでいる人が多いことに胸が痛む。

2022年の西安、響きわたる悲鳴は、この2年間、新型コロナを封じ込めると宣言する中国の防疫対策に影を落としている。武漢、そして西安、ロックダウンの教訓は深い。人々の生活と人権が侵害されるに第三の中国都市が生まれないことを願うばかりだ。

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image by: amnat30 / Shutterstock.com

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在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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