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トヨタから街のケーキ屋さんまで「愛知企業」がビジネスに強い理由

日本の中央部に位置し、特有の文化を醸成してきたことでも知られる愛知県ですが、ビジネスにおいても独自の特徴があるようです。今回のメルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』では同県出身でMBAホルダーの理央 周さんが、自身の経験を交えつつ愛知企業のカルチャーと、その強みを分析。さらにこれからの時代に求められる、「社員起点のマーケティング」について解説しています。

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愛知企業は、なぜ強いのか?~愛知商法からひもとく、今必要とされるマーケティング

その相見積もり、いらないよ~愛知ビジネスの特徴

私は、愛知で生まれ育ち、社会人5年目から16年間、東京と海外で仕事をしました。その後、会社員として愛知に戻った時、ある違和感を覚えたのです。

広告に使う印刷物を発注するときでした。東京やアメリカで仕事をしてきた私にとって、複数の印刷会社さんに依頼して、「相見積もり」を取るのが商習慣でした。そして相見積もりをお願いしようとすると、私の上司は、「今までお世話になっているから、A社さんに頼めばいいよ」と私に指示しました。

もちろん長くお付き合いのある、ビジネスパートナーさんは重要です。また、私も質が同じなら、安い方を取る、と考えていたわけではありませんでした。ただその時の私は、「会社にとって最適な選択は、広告の質とそれに関わるコスト、すなわち費用対効果だ」と感じたのです。なので、上司に付き合いが長いので、あえて、相見積もりを取る必要がないよ、と言われたことに対して、「合理的ではないな」と違和感を覚えたのでした。

一方で、愛知での商売では“一見さんお断り”、という雰囲気があるらしく「愛知で仕事はやりにくい」と、転勤の多いビジネスパーソンは言います。確かに、私も東京と比べると、愛知では仲間意識が強く、結束が固い、というイメージがあります。起業直後には、「愛知での商売はまず、紹介だね」と人脈を重視するといいよと、アドバイスをよくもらったものです。

先程の相見積もりの話と合わせて考えてみると、やはり愛知ビジネスは関係性を最優先する、というイメージになるのでしょうか。

ここで少し見方を変えてみると、「それだけ人間関係を大事にする」と読み取ることができます。もちろん、金額が安くなれば、その分利益にもなりますし、お互いに緊張感も高くなります。しかし、愛知ビジネスの根底には、「長い信頼関係は、金額に変え難い」という信念があるのだ、と今更ながら感じます。

愛知でのビジネスは、「間口は狭いが、奥行きが広い」ことが特徴です。なかなか心を開かないですが、いったん信頼してもらえると、懐を開いてくれて、長くビジネスをしてもらえます。

その後起業して、今の仕事についてからは、「愛知企業の強さは、どのあたりにあるのでしょう?」とよく聞かれます。そのたびに、この事例を思い出します。

先日トヨタ自動車が、北米での売り上げ1位を達成した、と報道されていましたが、その一因は、強いサプライチェーンによる、半導体不足の克服にありました。これこそが、ビジネスパートナーを重要視する、愛知企業がこれまで積み上げてきた資産なのです。

愛知ビジネス、イコール、“人と人”のビジネスなのです。

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これからのビジネス、これからのマーケティング

ここ数年、幸福経営、ティール組織、といった、次世代経営や組織のマネジメントの形が、論じられています。「社員が幸せだとビジネスがうまくいく」、「やる気のある社員は顧客も幸せにする」、といったことが言われています。私も100%同感です。企画マンとして30年以上仕事をしてきた私が、痛感しているのは、「いいアイディアはポジティブな姿勢、楽しい雰囲気から生まれる」ということです。

会社がつまらない、上司が嫌だ、と感じていると、残念ですがなかなかいい発想は、出てこないものです。一方で、幸せなだけ、ポジティブな状況さえあれば、いい発想が出て、それが独自性のある製品開発につながったり、市場で売れる製品やサービスになるのか?ということも感じています。

やはりビジネスには、売上と利益がついて回ります。また目標値も、決めていかなければなりません。楽しいだけでは、ゆるい雰囲気が続き、ひいては仲良しクラブで終わることが大半です。

いいアイディアが頻繁に出て、それを具現化して、失敗を繰り返して、その失敗を非難することなく、そこから学び、修正を繰り返して、成果につなげていける、仕組みがあることで、初めて、ビジネスとしての果実がなる、と私は考えています。

雰囲気がいいことを「社風」と呼ぶとしたら、ポジティブで闊達な意見交換ができる仕組みがあることは、「社内文化」ですよね。

今の時代、あなたも気づいている通り、変化のスピードが従来の何倍かになっています。また、変化の中身も予測ができません。ITの発達によるDXの浸透、コロナ禍の継続による「新常態」が、すでにノーマルになってしまっています。

こんな中で、旧来の「顧客ニーズを探って、認知度を上げ、店頭で販促をして買ってもらう」とか、「飛び込み訪問やお願い営業で、関係性を強化して、契約を取る」というやり方が通用しなくなっています。

顧客に価値を提供するのがマーケティングですが、顧客が「自分にとっての価値は何か?」も、わかりづらくなっているので、リサーチをして顧客に聞いてもわからないのです。

このような状況の中で、企業としてはやるべきことは、「市場や、顧客の小さな変化を見逃さないこと」を出発点にすることです。そのためには、営業や、マーケティング、製品開発や技術部、品質担当といった、組織上の役職に囚われることなく、社員1人1人が目を凝らし、「隠れた顧客のニーズは何か?」を探り出すことが必須です。

そして、次のステップとして、「顧客の新しいニーズに対して、うちの会社は何ができるのか?」を、これまた役職関係なく、全員で考え合うことで、新しい製品やサービスを開発することに、取り組むのです。その時に、「私は営業だから関係ない」「品質担当なので売り方はわからない」と言っていてはもったいないですよね。

顧客を見つめること、社員同士がお互いを尊重すること、そして、SDGsのような社会課題の解決も含めて、地域にも貢献できることを、社員総出で考えていくのが、これからのマーケティングです。すなわち、人間を見つめ大事にする、「社員起点のマーケティング」が必要なのです。

ヒューレット・パッカードの創業者が、「マーケティングはマーケティング部に任せるには、重要すぎる」と言いましたが、今まさにその時代に来ているのです。

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愛知ビジネスと社員起点のマーケティング

社内文化の醸成、組織の仕組みづくり、というと、一見「マーケティングには関係ない」と感じるかもしれません。

もともとマーケティングとは、人間に関する考え方です。「市場にいる人を動かすこと」が目的ですし、調査、分析、戦略立案、製品開発、施策実行など、マーケティングの前後にある、ものやサービスを作り出し、販売するのは、全て社内にいる「人」です。

こう考えてくると、社内起点のマーケティングと、組織や社内文化とは、密接に関係があるものだ、とお分かりいただけることかと思います。

そして、人間を重視するという意味においては、社外にいる、顧客や取引先のビジネス・パートナー、地域の人々、といった関係者も人間です。

さきほど、愛知ビジネスの特徴は、人間関係を大事にすることだ、と書きました。もちろん、愛知企業の特徴は、素晴らしい技術力を持った、製造業という側面もあります。しかし、それを支えているのは、とりもなおさず「人間力」なのです。

先程事例を出した愛知の企業は、上場もしていた大企業ですが、この人間重視の姿勢は、大企業にしか当てはまらない、というわけではありません。

愛知県一宮市に、シトロンヴェール、というケーキ屋さんがあります。おいしいケーキと、洗練された雰囲気で、繁盛しているお店です。ここの名物がプリンセスシリーズ、というオリジナルのデコレーションケーキ。1つ1万円以上するものもあり、一宮市外からわざわざ買いに来る人も多くいます。オーナーシェフが以前、マーケティングを学んだこともあり、独自性抜群の商品です。ビジネスも順調でお店も法人化し、スタッフも増えたそうです。

そのオーナーシェフが気づいたことが、「社員がハッピーだと、いいアイディアが出て、新しいケーキも開発できるし、店内の雰囲気も明るくなった」ということです。そこで今後は、オーナーシェフの思いである、経営理念、目指すビジョンを、冊子として形にして、社員で共有しよう、という取り組みをしました。いわゆるいい雰囲気の社風を、持続的に成長させるための仕組みづくりまでに、持っていこう、ということです。

これも、愛知の企業に脈々と流れる、「人間関係重視」の姿勢の表れなのです。

ビジネスをしていると、どうしても、結果にこだわりすぎ、数字やノルマが目的になりがちです。もちろん、成果を上げること、数値を見える化することは重要です。しかし、製品を生み出し、バリューチェーンにのせ、ユーザーに届けるという一連の流れの、中心にいるのは「人」です。

モノづくりは人づくり。

愛知ビジネスの強さは、「人重視」の姿勢にある、と、特に強く感じています。

(※本記事は、メルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』2022年1月11日号の一部抜粋です。続きをお読みになりたい方は、ご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: beeboys / Shutterstock.com

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ビジネス・仕事に大事なのは、情報のキモに「気づき」どう仕事に「活かす」かです。トレンドやヒット商品には共通する「仕掛け」と「思考の枠組み」があります。このメルマガでは、AI、5G、シェアリングなどのニュースや事例をもとに、私の経験とMBAのフレームワークを使い「情報の何に気づくべきか?」という勘どころを解説していきます。現状を打破したい企画マン・営業マン、経営者の方が、カタくなっている頭をほぐし情報を気づきに変えるトレーニングに使える内容です。

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