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文在寅“逮捕”にまた前進。韓国大統領選で野党候補の一本化成功

3月9日の投開票まで1週間を切った韓国大統領選挙ですが、野党がまた一歩、政権交代に近づいたようです。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、ギリギリのタイミングで成功した野党候補の一本化を伝えるニュースと、これまで双方が歩み寄れなかった経緯を詳細に紹介。さらに統一候補となった尹錫悦氏の演説内容と熱狂する聴衆の模様をレポートしています。

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尹錫悦、一本化会見の後即、天安遊説

尹錫悦(ユン・ソンヨル)と安哲秀(アン・チョルス)がとうとう一本化に成功した。3月3日午前零時頃から2人は直接に会い、安哲秀が尹錫悦を応援するという形の一本化に成功したわけだ。同日の討論の時は、2人の会合は予定になかった。劇的な会合が実現した背景には、「国民の力」党の張済元議員と「国民の党」の李泰圭(イ・テギュ)議員の相当の努力があった模様だ。会合にはこの2人も同席した。3月2日午後、張議員と李議員は電話で「ひとまず私たちが個人の資格で会って胸襟を開いて話し合おう。歴史の罪人になってはいけない」と話し、会って両候補間の3月2日の3回目(最後の)討論の後、2人の会合推進に合意したという。その後、張議員は江南にいた尹候補を、李議員は国民の党本部にいた安候補を訪れ、2人の会合を説得した。このとき尹候補は張議員に「実現しなければまた一本化フレーム(つまり、一本化が「できる・できない」というハタから見てると両方の頭をなぐりたくなるようなじれったさ。ジレンマ)に陥るのではないか」と懸念を示したという。

特に、昨年10月には安候補が、今年2月には尹候補が、会談を推進しようとしたが互いの誤解で実現しなかった経験がこのような憂慮に火をつけたもの。内幕に詳しい双方の関係者によると、安候補は昨年10月、自分を「尹候補と近い間柄」と言ったある野党関係者から「尹候補と会合の約束を取りつけた」という連絡を受けて約束場所に向かったが、この席に尹候補は登場しなかった。一方、尹候補も今年2月、安候補に近いというある野党関係者から「安候補がソウルの某所にいるからすぐ出て来い」という連絡を受けた。しかし、尹候補が該当の場所に移動する途中、「会合が取り消された」という通知を受け、尹候補も当惑したという。関係者によると、当時2人に会合を提案したのは、いずれもいわゆる「無許可業者(本人の真意とは無関係に動く人物)」だったという。こんなことが、この二度だけではないのだから始末におえない(トラウマになる)のも無理はない。

今日3日の日に会った席で、尹候補が「2人で直接会ったら誤解が解けました」と述べると、安候補も「そうですね」と応えた。安候補は一本化合意後の午前3時ごろ、「国民の党」の主要関係者らが参加しているSNSに「一本化の発表を今日の朝にすると思う」と知らせたという。さらに、「決心した理由については後ほどご説明する」と言っていた。一方、「国民の力」選挙対策本部関係者は「報道が出る前までは交渉に参加した少数の人員を除いては、誰も知らなかった」ということだ。たとえばキム・ジンギョンという元検事で尹錫悦とかなり近い人物で尹錫悦の選対委にいる人も、「きのう2日の最後の討論会のあと、2人の一本化合意のことが気になって眠れなかった」と明かすほど、2人の会合はかなりの側近連中にも知らせられていなかったことがわかる。

3日午前8時に予定通り尹錫悦と安哲秀がいっしょの場に立って「一本化」合意を公にした。安哲秀はこれまで、名前の哲秀(チョルス)と撤収(チョルス)が韓国語では発音が同じこともあって常に「チョルス政治」(つまり撤収政治)などと皮肉を言われてきた。前回の大統領選挙では文在寅との単一化を図ったり、ソウル市長選挙ではパク・ウォンスンに譲ったりした。その他数回、常に途中で自分は撤収(チョルス)して相手に任せる形(つまりチョルス政治)をやってきているので、みんなからチョルス政治、チョルス政治とばかにされてきていた。今回もはやくチョルス政治をやれ、という雰囲気がずっとあった。だからたぶん彼の奥さんが今回だけは最後まで貫徹しないとまたばかにされる、ダンナ安哲秀の選挙日(3月9日)までのレース継続を主張していた模様だ。ダンナが奥さんの意見を聞くのは大賛成なのだが、それも時と場合による。これほどまでに頑なだった安哲秀がなんで突然一本化(つまり自分はチョルス=撤収する)の気持ちになったのかはまだ深いところまでは誰にもわかっていない。彼の内実はともかく、尹錫悦への支持を表明し尹錫悦一本化で行くことになったことだけは事実だ。午前8時の記者会見では、2人ともほとんで寝てない状況だったと思う。尹錫悦のほうは最大の動力を得ることになったゆえ顔は輝いていたが、安哲秀のほうはどことなく目が魚の目のような感じだった。ぼーっとしていた。でも、尹錫悦と力を合わせてよりよき大韓民国を作っていくために一本化に合意したという簡単な演説文を読むときには、その声には力があった。

尹錫悦はこの記者会見後、天安(チョナン)での遊説の予定が入っていた。午前10時半ごろ天安に彼は現れた。おそらく本当に昨日から今日にかけて一睡もしていないはずだ。朝ごはんもどこで食べてきたのだろうか。車の中で食べてきたとしか思えない。ちょうど筆者がこの天安に住んでいて、遊説の場所が歩いて7分ぐらいのアラリオ広場であったので、筆者も朝ごはんを食べコーヒーを飲むとすぐに出かけた。記者会見(質疑応答までやっていたから)から遊説の時間までそれくらい時間のない状況だった。尹錫悦はソウルから天安にやってきたわけだが、車で一気に来ても1時間はかかる。朝めしは移動の車の中で食べてきたのであろう(朝めしをどうやって食べようと重要なことではないけれど、どうも筆者はつい、気になってしまう)。遊説の台に上った尹錫悦はいたって元気だった。顔色もいい。天安の市民も大挙して尹錫悦の応援に集まっていた。オミクロンが猛威をふるっている時期ではあるのだけれど、みんな尹錫悦の生の姿を見ようと尹錫悦が台の上にのぼると演説台のほうにぐっと押し寄せるのだった。筆者ももみくちゃになりそうだったので、間一髪でするすると人波をかき分けて後ろのほうに陣取ることができた。「この腐りきった政権を立て直すために天安の皆さん、よろしくお願いいたします」と尹錫悦とが力強く言うと、人々も「ユン・ソンヨル、ユン・ソンヨル!」とユン・ソンヨルコールを繰り返すのだった。人々の熱気は熱い。結果が出るまで気を緩めることはできないけれど、明日からはじまる事前投票(4日、5日)と3月9日の本投票まで、尹錫悦は気分のよい全国行脚を続けることができることとなった。この勢いで政権交代ができることを祈るばかりだ。

(無料メルマガ『キムチパワー』2022年3月3日号より一部抜粋)

image by: 国民の力 - Home | Facebook

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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