「一つの中国」を声高に主張し、台湾を自国の一部と唱え続けている中国。軍事侵攻も辞さない姿勢を取り続ける習近平政権ですが、そこまで台湾にこだわり続ける理由はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、これまであまり語られてこなかった経済面から台湾問題を分析。さらに尖閣や南沙諸島に手を伸ばさざるをえない事情についても解説しています。
※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2022年5月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
中国が台湾を絶対に手放さない経済的理由
ロシアのウクライナ侵攻をきっかけにして、昨今では中国の台湾侵攻についても論じられるようになっています。「これを機に中国も台湾に侵攻するのではないか?」ということです。
台湾問題については、これまで政治的、軍事的観点からさんざん論じられてきました。なので、筆者は経済面、お金の面から台湾問題を分析したいと思います。
台湾というのは、かつて中国が共産党と国民党が争い、国民党が破れて逃げ込んだ地です。第二次世界大戦後、中国では、これまで政権を握っていた国民党と、新たに勃興していた共産党とが、全土で戦争を繰り広げていたのですが、最終的には共産党が勝利し「中華人民共和国」を建国したのです。が、台湾に逃げ込んだ国民党は、台湾を支配をつづけました。そういう状態が70年以上続いているのです。
アメリカを中心とする西側諸国は、国民党政府を支持していましたので、共産党が「中華人民共和国」を樹立しても、これを認めず、台湾の国民党政府を唯一の中国を代表する政府だと認め続けていたのです。
が、1979年にアメリカと中華人民共和国を国交を樹立し、中国での政権として認めたので、国際的にも中華人民共和国が中国を代表する政府ということになったのです。
しかし台湾の国民党政権は、中国を代表する政府としては認められなくなりましたが、それ以降も事実上「中華人民共和国」とは別の国家として存続してきました。
「台湾と中国は70年間も別々の政府だったのだから、もう分離でいいじゃないか?」
世界ではそう思っている人も多いはずです。
しかし、中国は頑なに台湾の領有を主張し続け、もし台湾が独立を強行するならば一戦も辞さないという態度をとり続けています。
中国が台湾を手放さないのは、もちろん国家としてのメンツもあります。が、それ以上に経済的な事情が絡んでいるのです。
台湾を手放せば広大な海域を失う
中国という国は、世界で第3位の広い国土を持つ国ですが、実は「排他的経済水域」は驚くほど狭いのです。中国の排他的経済水域は世界で10番目であり、229万平方メートルしかありません。日本は世界で8番目であり、中国の2倍近くの排他的経済水域を持っています。
「排他的経済水域」というのは、その国が持つ海洋上の権利のことです。他の国は、船、航空機などの通過は許されるけれど、漁業や資源採掘などはできないということになっています。
近年、海洋開発の技術が進み、海には陸以上の資源が眠っていることがわかってきています。そのため、排他的経済水域の広さというのは、その国の資源埋蔵量に直結するようになっているのです。
中国という国は、東アジアの広大な地域を占める「陸の大国」です。が、中国の海岸からすぐのところには、日本、フィリピン、台湾があり、ちょうど中国からの海へ出る道をふさぐような形になっています。
また中国の東西の両端には、インドシナ半島と朝鮮半島があり、韓国、ベトナムなどと海を分け合う形になっています。
つまり、中国という国は、海に向かうといろんな国とぶつかり合う位置にあるので、排他的経済水域は、国土の割には非常に狭くなっているのです。
もちろん中国は、少しでも排他的経済水域を増やしたいと考えています。そのため、日本をはじめ、フィリピン、ベトナムなどの海域を侵し、紛争の種となっているのです。尖閣諸島問題なども、もろに海洋資源が絡んでいます。尖閣諸島とは、沖縄から左(西)に400キロ離れた8つの小さな島です。この尖閣諸島は、戦後まで何のトラブルもなく日本の領土として国際的に認められていました。
しかし、1969年、国連の海洋調査で「近海に豊富な油田が存在する」と発表された途端に、中国が領有権を主張し始めたのです。
また日本が戦後、領有権を放棄した南沙諸島も同様です。南沙諸島周辺の海域には、豊富な石油、天然資源が眠っているとされています。中国の調査では、2,000億バレルの石油が埋蔵されているそうです。これはサウジアラビアの埋蔵量に匹敵するものです。
そしてこの南沙諸島は現在、中国、フィリピン、ベトナム、マレーシアなどが領有権を主張しています。
このように中国としては他国の領域さえ分捕ろうという姿勢なのだから、台湾を手放すようなことは絶対にないのです。
しかし、現在の台湾をかたちづくった国民党政府は、第二次大戦以前からアメリカ、イギリスなどの連合国が支援してきた政府であり、現在も強い結びつきがあります。
アメリカ、イギリスになどのメンツもあるので、香港のように、簡単に中国に吸収されることはないでしょう。台湾問題も、今後の世界情勢において大きな火種になりかねないのです。理屈は
そして、中国の抱える人権問題、チベットやウイグルの問題も実は、台湾同様の経済問題が背景にあるのです。次回はそのことについてお話ししたいと思います。
初月無料購読ですぐ読める! 5月配信済みバックナンバー
※2022年5月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、5月分のメルマガがすべてすぐに届きます。
- 【GW特別号】元国税が暴露、子育て世代を苦しめる「税金の無駄遣い」のヤバさ(2022/5/6)
- 「税金を使おう」「零細業者を直撃するインボイス制度」「中国が台湾を絶対に手放さない経済的理由」(2022/5/1)
こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー
実はこれまでに配信されたバックナンバーも大
※初月無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。
▼2022年4月分
- 「自治体から家賃を補助してもらおう」「国民健康保険の減免制度とは?」「中国の静かなアジア侵攻”スリランカ危機”」(2022/4/16)
- 「乳房税とは?」「住んだまま家を換金する方法」「ロシアは”仲間外れのジャイアン状態”だった」(2022/4/1)
▼2022年3月分
- 「日本維新の会と吉本興業の危ない関係」「犬を飼っている人にかかる犬税」「空き家を放置すると固定資産税が6倍に」(2022/3/16)
- 「ふるさと納税がやりやすくなった」「孫への教育資金援助の特例」「国がワクチン接種を進める理由」(2022/3/1)
▼2022年2月分
- 「生命保険は相続税対策にもなる」「ワクチンは重症化を防ぐという嘘」(2022/2/16)
- 「遺産分配の基本は”配偶者優先”」「実は恐ろしいワクチンの有害事象データ」(2022/2/1)
▼2022年1月分
- 「起業するとき会社にするか個人事業者でやるか」「ワクチンは重症化を防ぐという大ウソ」(2022/1/16)
- 【新年特別号】元国税調査官が教える「節税」で日本に正義を取り戻す方法とは?岸田政権“新しい資本主義”で損をしないポイント(2022/1/3)
- 「所得控除を使いこなそう」「先進国でワクチンが強要されている理由」(2022/1/1)
▼2021年12月
- 「戦後最悪の超過死亡はなぜ起きた?」「争族を防ぐための相続
入門」(12/16) - 「日大の田中理事長の脱税事件とは?」「国税OB税理士は脱税
し放題?」ほか(12/1)
毎号、税務ノウハウと時事論評を配信する大村氏。12/1号では
▼2021年11月
- 「争族にならないための相続入門」「国会議員と国税庁の怪しい関係」(2021/11/16)
- 「本当に純金は財テクになるのか?」 「プラチナ積立って何?」 「相続税よりも怖い“争族”」(2021/11/1)
11/16号と11/1号では、遺産相続をめぐる争い(いわゆる
▼2021年10月分
- 「なぜ日本人の賃金は韓国より安くなったのか」「なぜWHOは役に立たないのか」「PCR費用は医療費控除できるか」(2021/9/16)
- 「おしどり贈与で賢い相続を!」「金持ちの税負担はフリーター以下」(2021/9/1)
10/16号では、関西電力の“脱税”問題を厳しく批判。表向き
▼2021年9月分
- 「なぜ日本人の賃金は韓国より安くなったのか」「なぜWHOは役に立たないのか」「PCR費用は医療費控除できるか」(2021/9/16)
- 「おしどり贈与で賢い相続を!」「金持ちの税負担はフリーター以下」(2021/9/1)
日本で最も税金を払っていないのは富裕層だ──大村氏は9/1号
▼2021年8月分
- 「なぜ長者番付が廃止されたのか?」「非正規雇用は税金払いすぎ」「日本国民を戦争に走らせた超格差社会」(2021/8/16)
- 「副業収入は税務署にばれるのか?」「フリーター、非正規社員は税金を払いすぎているかも」「国民を幸福にしない日本の医療システム」(2021/8/1)
フリーター、パート主婦、定年後のアルバイト…そんな人たちほど
▼2021年7月分
- 「消費税5%より食料品を0%に!」「国民健康保険、国民年金には減免制度がある!」「橋下維新と竹中平蔵氏の危ない関係」(2021/7/16)
- 「震災復興事業での鹿島建設社員の脱税事件」「国民健康保険料は自治体によって全然違う」「今の大阪では子供を産めない!」(2021/7/1)
7/16号では、標題のテーマ以外に、国民健康保険や国民年金の
▼2021年6月分
- 「付加年金という年金の裏ワザ」「住宅ローン控除の特例が新型コロナで延長された!」「若者が大量流出!大阪が危ない!」(2021/6/16)
- 「ふるさと納税の限度額を知る方法」「自営業の確定拠出年金」「橋下維新という日本の闇」(2021/6/1)
6/1号では、自営業を手厚く優遇している「確定拠出年金」の活
▼2021年5月分
- 「ふるさと納税の具体的な仕組み」「大阪のコロナ死者数を激増させた維新の責任」(2021/5/16)
- 【GW特別号】元国税が教える「ふるさと納税」の今と未来と賞味期限。節税で最大限「得する」ための考え方(2021/5/5)
- 「確定拠出年金を使い倒せ!」「坂本龍馬の倒幕戦略~経済で幕府を倒す~」「公共事業大国なのに社会インフラがボロボロ」(2021/5/1)
5/5号と5/16号では、普通のサラリーマンでも「実質負担2
▼2021年4月分
- 「相続税の密告に気をつけろ」「公的年金を増やす方法2」「もはや日本は途上国」(2021/4/16)
- 「ビットコイン長者の脱税」「公的年金を増やす方法2」「ワクチンは本当に安全か2」(2021/4/1)
4/16号は「税務署への密告」がテーマ。税務署は市民の密告を
▼2021年3月分
- 「年金を増やす方法1」「新型コロナワクチンは本当に安全なのか?」(2021/3/16)
- 「働き盛りパパの生命保険の罠」「素人が陥りやすい投資の罠」「なぜ新型コロナ特効薬イベルメクチンは承認されないのか?2」(2021/3/1)
「年金額を月1万円増やすのは、500万円貯金するのと同じ」と
▼2021年2月分
- 「コロナ特効薬イベルメクチンはなぜ承認されないのか?」「カジノとマネーロンダリング」「エリート税務署員のとんでもない犯罪」(2021/2/16)
- 「自営業、経営者、副業者に役立つ小規模企業共済」「クレジット詐欺メールにご注意を」「オリンピックに頼る日本の愚かさ」(2021/2/1)
2/16号は、犯罪などで得た“汚い金”を“洗浄”して、正当に
▼2021年1月分
- 「相続税対策としての生命保険」「日本に民間病院が多い驚愕の理由」「本能寺の変~光秀と信長の経済対立~」(2021/1/16)
- 「なぜ日本はコロナ重症者が少ないのに医療崩壊に瀕しているのか?」「サプリ、栄養ドリンクも医療費控除の対象に」(2021/1/1)
- 【新年特別号】元国税が教える「2021年版 節税の裏ワザ」税金還付は最強の財テクだ(2021/1/1)
1/1号では、「こんなものまで医療費控除になる!」いろんな裏
※1ヶ月分330円(税込)で購入できます。
image by: Shutterstock.com