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第2の天安門勃発か。3期目迎え神格化を目指す習近平が最も恐れているもの

「2期10年」というこれまでの慣例を破り、3期目を発足させた習近平国家主席。しかし今後の政権運営は困難を極めることが予想されるようです。その理由を解説しているのは、外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏。アッズーリ氏は今回、習近平氏がアメリカより自国民を恐れている訳を解き明かすとともに、場合によっては天安門事件以上の衝突が起こる可能性も否定できない、との見方を記しています。

1期目2期目以上に習近平3期目は政権運営が厳しくなる理由

2022年10月、習近平政権の3期目が正式にスタートした。2期10年を終え、慣例破りの3期目に突入したことで、おそらく5年で終わることはなく、ここに習近平の金正恩化が実現されたと言えよう。最高指導部など習3期目の人事をみても側近たちは全てイエスマンで固められ、習カラーは一層強まった。それくらい中国、世界にとっては大きな出来事である。

10月の共産党大会での演説で、習国家主席は2035年までに社会主義現代化を確実にし、中華人民共和国建国100年となる2049年までに社会主義現在化強国を進めていく方針を明らかにし、台湾統一については必ず実現するがそのためには武力行使を排除しないという姿勢を改めて鮮明にした。習国家主席は共産党の党規約を改訂し、その中で台湾独立反対、それを抑え込む趣旨の内容を盛り込んだことから、台湾への圧力も3期目に入ってよりいっそう強化されることになろう。

習国家主席は11月14日の米中首脳会談の際にも、米中関係が競争から衝突に発展することを回避するよう努め、対話のチャンネルを常に維持していくことで一致した一方、台湾は中国にとって核心的利益の中の核心であり、米国が超えてはならないレッドラインだとバイデン大統領を強くけん制した。習国家主席は、「やっとここまで来た!長期政権のもとできるだけ早く米国を追い抜き、俺は中国の象徴、もう1人の毛沢東になる!」と情熱にあふれていることに違いない。

習近平が自国民を最も恐れる訳

だが、3期目が始まって間もない中、習国家主席は既に大きな難題に直面している。それは、習国家主席が最も恐れる内からの反発だ。習国家主席が最も恐れるのは米国ではない、中国国民だ。

11月下旬、新疆ウイグル自治区ウルムチで外出禁止など厳重な封鎖措置が実施されるなか、10人が犠牲となる火災が発生したことで国民の導火線に火がつき、3年あまりに渡って実施されているゼロコロナ政策に抗議するデモが一気に拡大した。抗議デモは北京や上海、香港や広州など国内各地だけでなく、東京やロンドン、パリやシドニーなど世界各都市にも飛び火した。中国ではゼロコロナの名のもと、外出禁止など市民は日常生活を奪われ、病院にも行けず自宅で亡くなる市民も大幅に増加した。

企業も社員が工場やオフィスに行けず、自由に経済活動できなくなり、大きな損失も被った企業も多い。それが3年も続いたことで、中国国内では失業や経済格差などが拡大し、中国市民の社会的経済的不満はこれまでになく高まっている。新規感染者数が少ないのにゼロコロナが継続されることで、ゼロコロナは新たな人権侵害政策だと怒りを募らせる国民も多い。

政権批判の高まりは何を招くことになるのか

3期目の発足当初から難題に直面した習国家主席は、ここでゼロコロナを大幅に緩和させる決定を下した。その背景にあるのは、やはり内からの脅威だ。習国家主席は3期目で自分の神格化を目指しているが、そのためには国民から支持され、象徴にならなくてはならない。そのためには初めからこけるわけにはいかず、今回、理想と現実の狭間でバランスを取らざるを得なかったのだろう。

10月の共産党大会の前後、北京市北西部にある四通橋では「ロックダウンではなく自由を、PCR検査ではなく食糧を」、「独裁者習近平を罷免せよ」などと赤い文字で書かれた横断幕が掲げられ、上海でも若い女性2人が「不要」などと書かれた横断幕を持って車道を歩く動画がツイッター上に投稿された。それくらい習独裁体制への不満が強まっており、今回はウルムチでの火事でその不満が一気に爆発した形になった。

仮に、習3期目に対する非難の声が抗議活動として今後顕著になれば、まず、習国家主席は国民の非難をかわすため、対外的に強硬姿勢に転じることで国民のナショナリズム、忠誠心を高揚させる戦略に出る可能性がある。そうなれば、米中対立はいっそう激しくなるだけでなく、台湾情勢でも緊張がいっそうエスカレートし、我々は台湾有事を現実問題として考えることになろう。そして、そうなれば日中関係も悪化し、対中邦人が意図的に拘束逮捕されるケースが必然的に増えることになる。

第2の天安門、もしくはそれ以上の衝突も

だが、問題なのは現代の中国人が習国家主席の思うように動くかということだ。現在の中国人の中には欧米など諸外国に留学駐在し、欧米文化などを熟知し、それに親しみを持つ人々が少なくない。若い世代の中には自由や民主主義を重視し、共産党体制に違和感を抱く人々も多い。以前のように中国人ナショナリズム、中華民族の偉大な復興などに共鳴する可能性は低いと言える。

対外的強硬姿勢に転じたことで結果が出ないとなれば、第2の天安門、それ以上の衝突が習3期目で到来することもあり得よう。習国家主席にとって重要となるのは政権基盤を安定させるであり、そのためには国民の反発を治安維持や武力をもって抑える必要がある。習国家主席の3期目は、こういった内から反発と外の敵(米国など)との間でバランスを取りながら政権運営をしていくことになる。しかし、それは簡単なことではなく、たとえば第2の天安門となれば、中国国民と世界が結束する恐れもあり、習国家主席としてはそれはなんとしても避けたいところだ。習政権3期目は1期目2期目以上に難題に直面することになろう。反ゼロコロナはその始まりでしかない。

image by: Shag 7799 / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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