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日本は何もできない可能性大。“呪い”のフレーズ「台湾有事は日本有事」は本当か?

中国が悲願とする「台湾統一」のために、もし武力を行使したら、日本はどのような行動を取るのでしょうか。即アメリカとともに台湾側に立って中国と戦うことになるのでしょうか。メルマガ『j-fashion journal』著者で、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、選択するのは日本ではないと考えます。本当に台湾を守るのであれば、国家として承認し国交を結ぶ必要があり、日米ともに現実的にそれができない以上、選択権は中国が持っていると解説。あまりに多くの人が「台湾有事は日本有事」と考えていることを“呪いのフレーズ”と一蹴しています。

台湾有事で日本は何ができるのか?

1.戦争の善悪は結果で決まる

戦争もスポーツも勝負を競うが、両者には大きな違いがある。スポーツは勝者を決めることが目的だが、戦争は敗者を決めるのが目的だ。そして、勝者は善、敗者は悪と断定される。

スポーツでは敗者になっても、次の試合で勝者になることができる。スポーツの敗者は悪ではない。戦争において、敗者は悪であり、戦争の責任は敗者が負う。敗者は、資産や自由が奪われ、勝者となった国に管理されるのだ。

スポーツで勝つには、自分を鍛えることだ。相手を攻撃して、弱体化させることはルールに反する。しかし、戦争は相手を倒すことが目的だ。自分を鍛えるだけでなく、敵の内部を混乱させたり、相手を恫喝して、精神的に弱体化させることも有効である。

スポーツに善悪はないが、戦争は双方が正義を主張する。そうしないと、戦意が高揚しない。実際にどちらが善で、どちらが悪かは戦争の勝敗で決まる。日本人は勧善懲悪が好きなので、どちらが善でどちらが悪かを決めないと落ち着かない。しかし、善悪は立場で変わる。

日本に侵略する国があれば、文句なしの悪だ。しかし、ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナのどちらが悪かは判断できない。判断できるほどの情報もないし、判断できる知見もない。従って、日本は関わるべきではないと思っている。

2.戦争を開始するにも理由が必要

戦争はどのように始まるのだろうか。ロシアとウクライナの場合、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナがNATOに加盟することはレッドラインを越えることだと宣言していた。ロシアと接するウクライナにNATOの軍事基地ができれば、いつでもモスクワに攻撃できるのだ。

また、ウクライナの親露派の大統領は、クーデターにより追放され、親米派の大統領に替わった。そして、アゾフ大隊などの民兵組織はウクライナ東部のロシア系住民を攻撃した。

プーチン大統領は、NATOが東進しないという約束を反故にしたこと、ウクライナがミンスク条約を守らなかったことなどを軍事侵攻の理由として表明した。また、その目的は、ロシア系住民の保護、ウクライナのNATO加盟阻止であることも表明している。もちろん、それでロシアの国際法の違反が許されるわけではないが、ロシアなりの論理は通っている。

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3.台湾有事はどのように始まるのか?

さて、台湾有事の場合はどうだろうか。中国は「台湾問題は核心的利益の核心」と主張している。しかし、それだけの理由で一方的に侵攻することはできない。台湾にいる中国人を守るため等の理由が欲しいところだ。

日本政府は台湾有事は日本有事と言っているが、一方で台湾の国家承認や国交正常化を行っていない。もし、中国政府が台湾海峡の航行の自由を保証すると宣言すれば、日本が台湾を助ける理由はなくなってしまう。国交のない国、国家として認定していない国を守るために、日本人の血を流すのかという議論が出てくるはずで、これは米国も同様だ。

もし、中国が台湾を攻撃した場合、米国はウクライナと同様に兵器等の支援を行うことになるだろう。日本もウクライナ支援に準じた形で台湾支援を行うことになる。

もし、中国が日本の米軍基地を攻撃した場合は、中国が日本を攻撃したことになるので、否応なく自衛隊は米軍と共に参戦することになる。中国は台湾と戦うのか。それとも、台米国、日本の連合軍と戦うのか。それは、中国の選択次第だ。

4.台湾の国家承認、国交正常化は可能か?

現在、米国も日本も一つの中国の原則を守っている。それが、中国が「台湾問題は内政問題」という理由だ。もし、日米両国が本気で台湾を守るのならば、台湾を国家承認し、国交正常化を実現すべきだろう。そうすれば、中国の台湾侵攻は他国への侵略行為となる。

その場合、中国は日米両国と国交断絶するか、それとも日米両国との国交は維持したままで、台湾の独立を認めるのか、の二者択一となる。やはり、選択権は中国にある。もし、中国が日米両国と国交断絶すれば、中国にある日米両国の企業資産は全て没収され、中国にいる日本人と米国人は全員人質に取られるかもしれない。

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更に、世界のトップ3の経済大国が国交断絶する経済ショックは、日本、米国、中国の経済崩壊に留まらず、世界経済をも崩壊させるだろう。もし、世界を混乱させることで、中国共産党の利益を守れるならば、中国はそれを選択するかもしれない。しかし、日本と米国にとっては容認できない。つまり、日米両国にとって、台湾独立、台湾との国交正常化は非常に困難な選択肢なのだ。

そもそも台湾有事とは、中国が一方的に台湾を侵攻することであり、中国が決定権を握っている。そして、中国は現在の状態を維持することも可能だ。

多分、中国は習近平政権の期間に結論を出すことはできないだろう。もし、行動を起こすとしても、台湾領内の小さな島を占領する程度であり、完全に台湾海峡を封鎖することもないと想う。戦争はそんなに簡単に起こせるものではないのだ。

編集後記「締めの都々逸」

「やくざの喧嘩は簡単だけど 堅気の喧嘩は難しい」

「台湾有事は日本有事」というフレーズは、安倍元総理が残した呪いなのでは、と感じています。こんなことを言うと、保守系の人に叱られそうですが、あまりに多くの人が台湾が攻撃されたら、自動的に日本も参戦すると思っているからです。実際には、戦争にも手続きが必要です。日本はそれほど簡単に戦争に参加できません。

日本に中国が攻めてきたら、直ぐに応戦できますが、台湾というのが微妙です。中国が台湾を攻撃しても、日本は中国と国交を結んでいて、一つの中国を承認しています。

日本の最大の貿易国は中国であり、中国には多くの日本企業が残っていて、日本人が10万人も住んでいます。ですから、好き嫌いの問題ではなく、簡単には喧嘩できないのです。(坂口昌章)

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image by:JENG BO YUAN/Shutterstock.com

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