MAG2 NEWS MENU

内部の酷いドロドロ具合。いまサッカー韓国代表の中でどんな惨事が起きているのか?

先日行われたサッカーアジアカップで、ヨルダン戦「有効シュート0本」という不名誉な記録を作り脱落した韓国。その背景には代表選手たちの内紛があったことが明らかになりました。無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、現在のサッカー韓国代表に漂う不穏な空気を詳しく解説しています。

韓国の看板選手二人が殴り合いの喧嘩…なぜ起きたのか?

すべての構成員が心を一つにして勝利を切実に望んでも容易ではない状況で「クリンスマン号」内部で小競り合い(モムサウム)まで起きていたことが確認された。チームの主将、孫興民(ソン・フンミン=トッテナム)とMF李カンイン(パリ・サンジェルマン)が胸ぐらをつかみ殴り合い、その過程で孫興民が指の脱臼(骨折に近い)を負ったことが分かった。

ユルゲン・クリンスマン監督率いる韓国サッカー代表チームは10日に幕を下ろした「2023アジアサッカー連盟(AFC)アジアカップ」で準決勝で負け決勝進出が失敗に終わった。不振の末、辛うじて準決勝まで進んだが、7日に行われたヨルダンとの4強戦では有効シュート0本というとてつもない不名誉な記録を刻印し屈辱の末、脱落した。

あまりにもひどい内容と結果が出たことで、クリンスマン監督の指導力に対する批判の声が強まっている。一般ファンはもちろん、政治家までも監督の更迭を強く要求している。さらに、選手団内の深刻な内紛まであったことが明らかになり、衝撃を与えている。

14日、英国のザ・サン紙は、孫興民の指骨折負傷が選手団内の争いによって生じたものだと報道した。ザ・サンとニュース1の取材によると、主将の孫興民はヨルダン戦を翌日に控えた5日、一部の若い選手が卓球をするために夕食を早く終えて席を立ったことに不満を示した。

チーム結束が重要な時点で個別行動をすることがキャプテンの立場では良くないように見えたのだ。ザ・サンは「ソン・フンミンが問題にした後輩の中にはパリ・サンジェルマンのエース、イ・ガンインもいた」と報道した。大韓サッカー協会も当時の状況を認めた。

大韓サッカー協会の関係者は「孫興民は李カンインをはじめ、数人の選手が試合前日に卓球をすることを不満に思った。主将だから苦言を呈した。ところが、イ・ガンインが受け入れずに逆にかえって腹を立て、その時怒ったソン・フンミンがイ・ガンインの胸ぐらをつかんだ」。ソン・フンミンが自分の胸ぐらをつかむと、イ・ガンインが直ちにソン・フンミンのほほを拳骨で殴り、反撃したことが分かった。ソン・フンミンがイ・ガンインの拳を避け、すぐに周辺にいた同僚たちが駆けつけて喧嘩を引き止めた。この状況でソン・フンミンが仲間たちの制止を振り切ろうとして指の脱臼(骨折に近い)負傷を負ったのだった。

この事件後、数人のベテラン選手がクリンスマン監督のもとに行き、李カンインをヨルダン戦の先発リストから外すよう要請したことが取材の結果わかった。雰囲気を曇らせるという趣旨だったが、黙殺された。クリンスマン監督は1次リーグで3ゴール1アシストを記録した李カンインを外さず、最悪のチームの雰囲気の中でヨルダン戦を迎えることになった。そして、全世界に放送されたように、韓国は最悪の競技内容の末、有効シュートを1本も打つことができず無気力な敗北(韓国サッカー史上最悪のゲーム。筆者もライブを見ていたが韓国チームの不甲斐なさに驚きを隠せなかった)を喫した。

試合後、ソン・フンミンはミクストゾーンで「これから代表チームでできるかどうか、考えてみなければならないようだ」と代表引退をほのめかすようなコメントをしていた。一連の過程を振り返れば、主将としてチームを率いる過程での気苦労あるいは葛藤が込められていた発言と解釈される。

一方、太極戦士(韓国の国旗・太極旗から代表チームを意味する)内の葛藤は、単に孫興民と李カンインだけの問題ではないようだ。彼らの他にも、一部の海外派とKリーグで活躍するベテランの間で大声を張り上げる場面もあったりし、何人かが大声で争うのを現場取材陣も確認している。

代表チーム内の新旧世代の葛藤は、実は古い話だというのがサッカー界のもっぱらの噂だ。孫興民、金ヨングォン(34、蔚山)、金ジンス(32、全北)、李ジェソン(32、マインツ)ら30代の選手グループと、金ミンジェ(FCバイエルンミュンヘン、DF)とファン・ヒチャン(ウルバーハンプトンワンダラーズ、FW)、ファン・インボム(28・ズベズダ)ら96年生まれのグループがそれぞれ練習の度に別々に集まるという話は随時出てきた。

海外派と国内派の間もぎしぎししている。昨年11月、中国とW杯予選を行った後、欧州派選手たちが韓国に早く帰ろうと、自費でチャーター機を借りて帰国したことは、そのギャップを見せてくれた事例だ。アジアカップの現地練習場では、ある欧州組の攻撃手が「あまりにも強くタックルをしてくる」とし、Kリーガーの守備手にボールを蹴りながら怒る姿が目撃されたりしていた。

昨年3月にはソン・フンミンが「代表チームに選ばれて光栄」というコメントをソーシャルメディアに載せると、キム・ミンジェが突然ソン・フンミンのアカウントを「アンパル(購読取り消し)」し、両選手の不和説がふくらんだこともある。

イ・ガンインはこの日、報道が波紋を呼ぶとインスタグラムに「アジアカップ準決勝を控えてソン・フンミン先輩と言い争いをしたという記事が報道された。いつも私たちの代表チームを応援してくださるサッカーファンに大きな失望を与えた。本当に申し訳ない。私が先頭に立って先輩たちの言葉によく従うべきだったが、サッカーファンに良くない姿を見せることになって申し訳ないだけだ。私に失望された多くの方々にお詫び申し上げる」と書いた。しかし、喧嘩の当事者である先輩のソン・フンミンと代表チームの同僚たちには謝っておらず、また別のわだかまりを醸し出している。

今回の事件をめぐり、クリンスマンの統率力が再び俎上に載せられた。代表チームを引き受けた当時、戦術的力量は多少足りないが選手たちに動機づけをよくして疎通に優れたマネージャー型司令塔という評価があったが、結果的にこれさえも不十分だったのではないかという指摘だ。

協会は15日午前11時、戦力強化委員会を開き、今回のアジアカップの結果を評価する。大会を終えて帰国して2日後の10日、自宅がある米国に出国したクリンスマン監督は、画像で会議に参加する予定だ。この日、クリンスマンの去就について本格的な議論が行われるものと見られる。

ファンらはソン・フンミンのSNSを訪れ、「頑張ってください。幼い後輩たちを率いて主将をやるのは苦労が多いね」、「10年以上見せてくれたフンミンです、あなたの人間性を信じる。心から謝罪を必ずもらって、これからは後輩たちには必要に応じて厳しい時には厳しくするように願う」、「サッカー協会の言論プレーやうわさにストレスを受けずにサッカーにだけ集中してください」等の応援コメントが残された。

一方、イ・ガンインのSNSには彼を非難するコメントが相次いだ。彼らは「キャプテンにあえて逆らうのか? イ・ガンインをまた見ることになるのはいやだ」、「チームは無戦術かつ無対策なので互いの疎通がもっと重要だったはずだが、卓球がそんなに大事なのか」、「そんな
に卓球がしたかったのか」、「卓球選手に転向しろ」等、イ・ガンインを嘲弄するコメントの山となった。

一丸となって戦っても相手に勝つのは容易ではないこうした大試合であるが、四分五裂した太極戦士らのせいで代表チームはついに破局を迎えた。アジアカップを通じて最悪の指導力を見せたクリンスマン監督は、戦術の不在とともに、選手団管理でも深刻なリスクを露呈した。

前述のように大韓サッカー協会は15日、戦力強化委員会を開き、クリンスマン監督の進退を決めるものと見られる。監督の更迭もしかりだが、これから韓国の代表チームが一つになって進むことができるのかさえ危ぶまれる状況となっている。これほどまでに酷い内部状況であったとは、驚き以外の何物でもない。

「2026 FIFAワールドカップ」のアジア2次予選の最中にある現在、韓国チームがどのような対策を立てて進んでいくのか、目が離せない状況である。(news1、朝鮮日報など参照)

image by: mooinblack / Shutterstock.com

キムチパワーこの著者の記事一覧

韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 キムチパワー 』

【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け