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ワイロを贈らなかったから不細工に描かれた?ある中国四大美女の悲喜こもごも

三国統一後に現れた絶世の中国美女・緑珠をご存じでしょうか?商人に愛されたその美女の一生について今回のメルマガ『歴史時代作家 早見俊の無料メルマガ」』では時代小説の名手として知られる作家の早見俊さんが紹介。また、中国の後宮に入るために欠かせなかった「パネマジ」が生んだ中国四大美女の一人、王昭君のエピソードについても語っています。

中国の美女「緑珠」知られざる物語

中国史上における伝説の美女というと、王や皇帝の寵愛を受けた女性ばかりですが、今回は商人にとことん愛された美人を紹介します。その名は緑珠(りょくじゅ)、生きたのは三国志時代の後、三国が統一された西晋の頃、紀元三世紀です。

彼女の名、緑珠は出身地である南越国が真珠の産地であったことに加えて、真珠のようだと美貌を称えられたことにもよります。彼女は日本で言うところの芸妓である妓女でした。

妓女であったため、美貌に加えて笛と舞が大変上手だと評判されました。これを聞きつけたのが、大富豪の石祟(せきすう)です。彼は高級官吏であったのですが、商人としても巨万の富を築きました。特に南方交易では大いなる利を得、評判の美女緑珠を身請けします。

身請けに要した費用はなんと真珠三十斗です。一斗は十升、つまり十八リットルです。ですから、緑珠を身請けするために、五百四十リットルもの真珠を用意したのでした。石崇は垂涎の緑珠を洛陽郊外に用意した広大な荘園付きの妓楼に住まわせました。

ちなみに、石崇は千人もの美女を囲っていたそうです。そんな石崇がメロメロとなった緑珠、当然ながら大いなる評判となります。

やがて石崇は西晋の権力抗争に巻き込まれ、彼を追い詰める者の中には緑珠を我が物にしたいと狙う者が出てきました。その男、孫秀は政争の混乱に乗じて緑珠を奪おうと使者を石崇に送りますが石崇は拒絶します。

すると孫秀は実力行使に出ます。兵士を向け、緑珠引渡しを拒んだら石崇を殺せと命じました。緑珠が住む妓楼は兵士に囲まれました。すると、緑珠は、「あなた様の前で死にます」と妓楼に登り、石崇の目の前で飛び降り自殺を遂げました。

真珠の女は莫大な富で慈しんでくれた男の前で玉と砕け散ったのです。その後、石崇も殺されました。没収された財産の中には八百人もの奴隷、水車を動力として穀物をひく唐臼が三十もあったそうです。

中国史上有数の大富豪に愛された緑珠、千人もの美女の中から広大な屋敷を与えられ特別に愛されたのは、美貌に加えて笛の名手であったからですが、この笛、ひょっとして日本の尺八のようであったのかもしれません。

美女が競い合った中国ではパネマジ、すなわち、パネルマジックが行われていました。写真を加工して実物よりも可愛く、美人に見せる技術ですね。

特に大々的に行われたのが、古代中国、前漢の後宮においてです。もちろん、写真をよく見せる技術ではなく、実物よりも美人に肖像画を描くことです。前漢の皇帝元帝の頃、後宮には三千人を超える女性が仕えていました。

その中から元帝の目に留まり、寵愛を受けるのは至難です。元帝の方も後宮に足を運び、三千人の中から好みの女性を選ぶのは大変。そこで、元帝は絵師に後宮の女性の肖像画を描かせ、それを見て好みの女性を選んだのでした。

女性は元帝に選ばれようと絵師に賄賂を贈り、パネマジ肖像画を描いてもらったのです。

ところが、一切の賄賂を贈らなかった女性がいました。西施、しょうせん、楊貴妃と並んで中国四代美人に数えられる王昭君です。美貌ゆえ、パネマジの必要がなかったからなのか、そもそもパネマジや賄賂という行為を嫌ったのかはわかりません。

ともかく、賄賂を贈らなかった為、絵師の不興を買い、王昭君は逆パネマジというべきか実物と大違いの不美人に描かれたのです。このため、彼女は元帝の目に留まることなく、虚しい日々を送ります。

そんな紀元前三十三年のある日、元帝は遊牧民族匈奴の王から皇族の姫を妻に欲しいと要求されました。皇族からは嫁がせられないと、後宮から選ぶことにし、肖像画を物色、不美人の王昭君に白羽の矢を立てます。哀れ、王昭君は遥か異郷、蛮族の国へと人身御供同然に嫁がされました。

嫁ぐ日、初めて実物の王昭君を見て、絶世の美女ぶりに元帝は驚愕、嫁がせることを後悔しました。しかし、時既に遅し。王昭君は二千キロを超える過酷な旅へ向かったのです。逆パネマジをやった絵師を元帝は調べ、収賄が発覚、絵師を処刑しました。

それでも王昭君を諦め切れない元帝でした。それに対し、王昭君は匈奴の王に愛され三人の子供を産み、逞しく暮らしました。逆パネマジが生んだ悲喜劇です。

image by: Shutterstock.com

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歴史、ミステリー四方山話、思いつくまま日本史、世界史、国内、海外のミステリーを語ります。また、自作の裏話なども披露致します。

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【著者】 早見俊 【発行周期】 週刊

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