近年、気象災害や異常気象などによる農作物の不作や価格高騰に悩まされる日本。そんな課題の克服に、とある農家が取り組んでいるそうです。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では、繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、そのSDGsなビジネスモデルを紹介しています。
「手抜き農業」で創る、SDGsなビジネスモデル
国の政策として進んできた「大規模な強い農業」が、崩壊しつつあります。
決まった農作物を地域全体で作り、特産品として、大量に販売してきました。
しかし、大きな気象災害が多くなると、被害に遭った地域の農作物は出荷できなくなり、日本全体での品不足や価格高騰に繋がります。
こうした現象が近年繰り返されるようになってきたため、リスクの分散という観点から、多品種少量生産の小規模農業の必要性が注目されるようになりました。
さまざまな農作物を少しずつ栽培する農家がたくさんあれば、緊急時にも地域の需要に応えることはできるはずです。
この大きな課題に取り組んでいる農家があります。
愛知県の山間部で、自然有機農業に取り組んでいます。
野菜や果物を200種類以上栽培し、ヤギと鶏を飼っています。
自然農法と言えば、雑草も放置したまま野菜を育てる方法。
有機農法と言えば、農薬や化学肥料を使わず育てる方法。
自然有機農業というのは、この2つを組み合わせたものかと思えば、そうではありません。
この農家は、常識を捨て去った方法で、たくさんのファンを持つ、おいしい野菜を育てているのです。
まずは、畑の不耕起。耕さないのです。
自然農法では普通のことですが、その後の工程が少し違います。
種を蒔く時は、泥団子に種を仕込み、適当な場所に置くのが一般的ですが、この農家では、種をそのまま雑草の中に投げ入れています。
そして、粉砕機能のある草刈機で草を刈りながら、粉砕された雑草をその場に落とし、蒔いた種を覆うのです。
刈った草が天然の肥料になると同時に、直射日光から土の乾燥を防いでくれます。
驚くのは、これですべての作業が終わり、放置してしまうことです。
肥料はなし、農薬もなし、水やりさえしません。
農薬や肥料を使わないことで、土の中に、ミミズやアリ、微生物が多く棲むようになり、勝手に土を耕してくれるのです。
その結果、土壌が柔かくなり、保水率も上がり、水やりが不要になります。
害虫がいても、他の生き物が食べてくれます。
自然界の法則によって、人の手を必要としないのです。
雑草と生き物が共存する環境で、野菜も自然の一部として、育っていくということです。
自然界のメカニズムを知れば、時間と労力を掛けることなく、農作物を生み出すことができるのです。
できた野菜や果物は、朝市などで直売していますが、非常に評判が良く、並べ始めると同時に、お客さまが手を出し、すぐに完売となります。
お客さま曰く、「甘い」「本物の野菜の味がする」「旬の美味しさを知ることができる」。
食品の安全性を気にする人が増えているいま、自然有機農業はますます注目されるはずです。
新規就農を考えているなら、付加価値の高い農作物を検討すべきです。
しかも、この農家のような“手抜き”なら、苦労も少なく、楽しい農業となるのではないでしょうか。
【新事業アイデア】
おでんの移動販売。
地方では、肉・魚・野菜などを車で移動販売している光景を見かけます。
車が普及し、通信販売も充実してきたものの、需要は減るどころか、増えているぐらいです。
高齢で車の運転ができなかったり、元々免許を持っていない女性のひとり暮らしが多いからです。
野菜は自給していることが多いので、肉・魚・加工品を中心とした食材を販売しています。
ところが……
高齢者を見ていると、だんだん手の込んだ料理はできなくなり、簡単に済ませることが多くなります。
すると、移動販売で売っている食材でさえ、調理するのが面倒になり、すぐに食べられるモノを欲するようになります。
しかし、移動販売では、調理されたモノはほとんどありません。
サービスとして、惣菜を仕入れて売っていることもありますが、利益が見込めないので、正直なところは扱いたくないはずです。
こうした地方の高齢者に喜んでもらえるのが、惣菜などの“おかず販売”です。
特に、自分で作るには手間が掛かる料理。
そのひとつが「おでん」。
あれこれ食材を揃えなければいけない上に、煮込む時間も掛かります。ひとり分を作るのは、手間。食材も余ります。
「おでん」を移動販売で買うことができたら、田舎のおばあちゃんたちが、殺到することでしょう。
地方での「おでん・惣菜」の移動販売は、独占市場だと言えます。
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