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なぜ、3歳の女の子は亡くなってしまったのか?韓国全土を騒然とさせた事件

大学病院の転院拒否の末、死亡してしまった3歳の女の子。この事件が韓国で大きな衝撃を与えています。無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、その詳しい内容とこの事件で見えてきた市民と医療界の視点の「乖離」について語っています。

転院拒否の末に死亡した3歳の女児事件

忠清北道報恩で溝に落ちて心停止状態で救助されたが、大学病院の転院拒否の末に死亡した3歳の女児事件と関連し、当時子供のそばを守っていた救急室の当直医師の録音記録が公開された。録音記録には、該当医師が「やるところまではやってみなければならないのではないか」と119状況室に助けを要請する内容が盛り込まれた。

報恩漢陽病院の救急救命室の当直医師A氏が事件当日の先月30日、119状況室と通話した録音記録を9日、朝鮮日報が公開した。報道によると、当時A氏は大学病院の度重なる全員拒否に「このように(生命が)消えるのを見ることはできないのではないか」とし、「助けなければならないのでなんとか助けてほしい」と119状況室要員に訴えた。

当時、緊迫した状況は録音記録を通じてそのまま伝えられた。心肺蘇生法(CPR)で子供の呼吸が戻ってきたが、近くの大学病院で全て「小児集中治療病床がない」などの理由で子供の移送を拒否すると、A氏が結局119状況室に助けを求めたのだ。当時、A氏は直接、あるいは119状況室を通じて忠清・京畿地域の大学病院9か所全てに救助を要請したが、全て断られた。

この日、生後33か月になるBちゃんは報恩郡報恩邑のある住宅の近くにあった縦、横、深さ1.5mの水たまりに落ちて、午後5時ごろAさんが勤務する病院に運ばれた。Bちゃんは移送当時、心停止状態だったが、Aさんと医療スタッフの応急処置のおかげで、午後5時33分ごろ脈拍がしばらく戻ってきた。病院側はこれと関連し、「薬物による(一時的な)心臓の鼓動信号と見えたが、それでも助けようと医療スタッフが大型病院に転院を試みた」と朝鮮日報に明らかにした。 Bちゃんは午後7時ごろ、再び心停止に陥り、約40分後に死亡判定を受けた。

医療界は、大学病院に搬送されても、Bちゃんの命を救うのは難しかっただろうと見ている。大韓救急医学会のイ・ギョンウォン公報理事(龍仁セブランス病院救急医学科教授)は「移送に耐えられる状態で転院を進めることが重要であり、心血管系が不安定な状態で転院をこころみることはむしろ患者の安全を脅かすこと」と述べた。

しかし、録音記録によると、A氏も同様に、このような状況を認知していたものと見られる。彼は「メンタル(意識)はまだ目覚めていないが、良いことだけを予想して今ここでこうしていることはできないのではないか。話にならないのではないか」と考え「最大限装備が整えられたところに行かなければならない。応急処置は私たちができる限り行った」と話した。「誰かは引き受けてくれるべきではないのか」「距離が遠くてもどこか引き受けてくれる病院へ今行かなければならない」と訴えたりもした。

保健福祉部はこの事件以後、Bちゃんの死亡と大学病院側の転院拒否に因果関係があるか調査を行い、最近忠北大学病院側に「違法性がない」という意見を通知したと伝えられた。Bちゃんの遺族も、「転院拒否について問題にしたくない」という意思を警察に伝えたという。

この事件がマスコミに報道され、専攻医の集団行動による人手不足で転院を拒否されたのではないかという指摘が提起されたりもしたが、医療界ではそれより地域医療界の劣悪な環境を如実に示した事件だという声が出ていて、市民の見る目と医療界の視点のちがいがだんだん乖離してきているように見える。(朝鮮日報参照)

さて、きょう4月10日は韓国の総選挙の当日だ。夜にはおおかたの姿が現れているにちがいない。犯罪集団民主党が勝つか保守・国民の力が勝つか。どちらにしても今後の韓国の命運を左右する重要極まりない選挙となるのはまちがいない。静かに結果を待つばかりではあるけれど。

image by: Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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