とんかつ定食とざるうどん、糖質量は同じなのですが、実は食後の血糖値に差があるそうなのです。メルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』著者で糖尿病専門医の江部康二先生は、その差について詳しく解説しています。
とんかつ定食とざるうどん、糖質量は同一でも食後血糖値に差
Question
ざるうどんを食べると、2時間後血糖値が240mg/dlくらいになります。量は、普通の1人前です。
食前の血糖値は、96mg/dl前後、糖質量は、どちらも70g程度です。
糖質制限をしている背景もありますし、とんかつ定食の場合、GLP-1やGIPにより、インスリンが分泌されているから食後の血糖値が低くなっているのだと思います。
しかしそもそもインスリンが出ているのであれば、酸化ストレスやAGESのことを考えると、食後の血糖値が140mg/dlくらいでもご飯は食べない方がいいのでしょうか?
江部先生からの回答
とんかつ定食とざるうどん、合計糖質量は同一なのに食後血糖値の上昇に大きな差があるとのことです。
可能ならば、もう一度実験されて、とんかつ定食摂取1時間後血糖値とざるうどん食後1時間血糖値を測定してみましょう。
食前 ⇒ 食後1時間血糖値 ⇒ 食後2時間血糖値
の測定ですね。
さて、GLP-1には、インスリン分泌促進やグルカゴン分泌抑制以外にも、脂肪分解を促進したり、心機能を保護したりする効果があります。
また、GLP-1は骨格筋における筋組織の血流増加やGLUT4の発現増加を促します。
このように、GLP-1はいろんな作用で血糖値を下げてくれるとてもいい奴なのです。
GIPは、GLP-1に比べると、効果はかなり小さいです。
次に、
1) 一価不飽和脂肪酸
2) 多価不飽和脂肪酸、
3) 食物繊維
の効能について考えてみます。
例えば、オリーブオイル豊富な地中海料理は、糖尿病食としてすでに一定の評価を得ていますが、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、食物繊維が豊富なのです。
この3つの栄養素が、GLP-1の分泌を高めてくれることが大きなプラスとなっているのです。
とんかつ定食は、キャベツがあるので食物線維はOKです。
豚肩ロース脂身つき100g当たり、
総脂質量:23.29g
飽和脂肪酸:9.95g
一価不飽和脂肪酸:10.82g
多価不飽和脂肪酸:2.52g
豚脂に含まれる飽和脂肪酸のうち、約15%を占めるステアリン酸は、HDLコレステロールを増やす働きがあり、動脈硬化を予防する効果があります。
そして一方の不飽和脂肪酸は豚の脂肪酸のうち60%を占めていて、その約80%がオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)です。
豚脂は、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸も豊富で、意外にもヘルシーなんですね。
とんかつ定食なら、
1) 一価飽和脂肪酸
2) 多価不飽和脂肪酸
3) 食物繊維
の3つの栄養素をしっかり含んでいていて、GLP-1の分泌を高めてくれることとなります。
「そもそもインスリンが出ているのであれば、酸化ストレスやAGESのことを考えると、食後の血糖値が140くらいでもご飯は食べない方がいいのでしょうか?」
そうですね。
ご飯を食べて食後の血糖値が140mg/dlなら正常型ですが、このとき、大量の追加分泌インスリンが出ています。
インスリンの功罪のうち、功のほうは医師もよく説明してくれるのですが、罪のほうは、ほとんど説明してくれないです。
しかし、過剰のインスリンは、活性酸素を発生させて酸化ストレスリスクとなり、老化、動脈硬化、がん、アルツハイマー病などの元凶となります。
従って、仰る通り、血糖コントロールができている限り、インスリンの血中濃度は低ければ低いほど身体には優しいと言えます。
そうなると、一番好ましい食事は、スーパー糖質制限食を実践して、必要最小限のインスリン分泌で血糖コントロールしていれば、酸化ストレスリスクも最小限となり、AGEs蓄積も最小限となります。
やはり、美味しく楽しく末長く、スーパー糖質制限食実践で健康長寿を目指すのがお薦めですね。
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