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人工知能ブームが起きれば半導体が人材不足に。我が国で予測される「47万人足りぬ状況」

各国が力を入れている半導体分野。しかし、工場を作ったはいいが人材不足が深刻化しているといいます。無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、世界中で不足している半導体人材について詳しく語っています。

世界中でAI人材不足

人工知能(AI)ブームが起きると世界各国が「半導体自立」旗印を掲げ数十兆ウォンを注ぎ込み先端半導体工場を大量に建てている。だが、実際に建設から製造・研究に至るまで全領域で人材不足に苦しめられている状況だ。

特に東アジアで半導体覇権を握ろうとしている米国・ヨーロッパは2030年までに半導体人材47万人が不足していることが分かった。現在、韓国の半導体産業従事者17万人の3倍に近い数字だ。

半導体・AI分野の人材を確保するための世界各国と企業の競争は激しい。3月、マイクロソフト(MS)はグーグルディープマインドを共同創業したムスタファ・スレイマンを迎え入れるために彼が造ったAIスタートアップであるインプレッションAIを買収した。具体的な買収費用は明らかにされていないが、10億ドル以上になるという。ドイツは政府レベルで台湾に半導体留学生を送っている。

AI加速器(半導体の一種)市場を独占しているエヌビディアは、半導体人材をブラックホールのように吸い込んでいる。グローバル採用プラットフォームリンクトインの資料を分析してみれば、NVIDIAがサムソン電子から引き抜いていった半導体人材は515人、その反対は半分の278人だ。SKハイニックスからNVIDIAに行った人数は38人だが、その反対は一人もいない。彼らが人材を吸い込めば、その後の嵐は韓国に影響を与えざるを得ない。韓国のAI・半導体人材不足現象が今後さらに深刻化する可能性が高くなっているわけだ。

半導体の人材不足は韓国だけでなく米国・欧州・日本の各先進国が最も頭を悩ませている問題だ。単純製造人材だけでも少なくとも1年は教育課程を経なければならない。研究開発人材は、少なくとも10年は投資してはじめて「ものになる」といわれている。AI半導体戦争で勝利するために韓国だけでなく米国、台湾、日本、ヨーロッパなどが半導体工場建設計画を発表しているが、人材は不足している。世界的な人材不足問題が短期間で解決されにくいこともわかっている。

米国半導体産業協会が推算した半導体人材不足分は2030年までに6万7000人に達する。働く半導体エンジニアが引退を控えているのも問題だ。サムソン電子など半導体工場が密集しているテキサス州オースティンでヘッドハンターとして仕事をするローレン・ハートは「7~15年目の中間レベルのエンジニアががらんとした状態」として「エンジニアの空白を退役軍人で埋めている」と話した。

軍で特定の電子装備を扱ったり、核施設のように敏感な装備を扱った経験のある退役軍人たちは、半導体ヘッドハンターたちのターゲット1位だという。連邦政府も深刻性を認知し、2022年チップス法(半導体支援法)発表当時、18兆ウォンを人材養成および研究開発分野に注ぎ込むことにした。

欧州連合は「EUチップス法」補助金62兆ウォンを前面に出して市場占有率を10%水準から20%まで引き上げるという戦略だ。これに伴い、インテルがアイルランド・ドイツ・ポーランドに半導体工場を建設することにし、TSMCもドイツに新規工場を建設する計画だ。

しかし、やはり人手不足が深刻だ。グローバルコンサルティング業者PwCによると、欧州半導体業界は2030年までに半導体専門人材40万人が追加で必要な状況だ。ドイツ経済研究所は「ドイツ内だけで半導体人材が6万2000人不足し、彼らの高齢化が深刻で10年内に3分の1が引退するだろう」と指摘した。

ドイツは非常策として台湾に半導体留学生を送ることにした。今年1月、ドイツのザクセン州はドレスデン工科大学とともに台湾TSMCに大学生30人を派遣した。台湾中央通信社によると、彼らは国立台湾大学とTSMCに5か月間滞在し、半導体製造関連教育を受ける予定だ。

TSMC半導体工場ベルトに連結された台湾と日本も人材が不足しているのは同じだ。「半導体大国の復活」を目指す日本は、TSMC工場を九州熊本に誘致した。日本経済新聞によると、今年2月にこの工場がオープンしたが、日本全国から半導体人材がここに集中したため、他の地域で空洞化現象が発生するという問題が生じているということだ。

福岡のある半導体部品メーカーは「TSMC熊本工場に人材が集中し採用が難しい」と嘆いた。彼らは今後、TSMC第2工場が建設されれば、人材空洞化現象はさらに激しくなると見ている。日本電子情報技術協会によると、日本の半導体主要企業8社は今後10年間、4万人の人材が不足するものと予想する。

TSMCの本丸である台湾は東南アジアから製造人材を需給している。米国IT専門誌レストオブワールドは「TSMCは24時間待機できるエンジニアを望んでいるが、台湾の若者たちがこのような働き口を無視する状況」とし「これを解消するためにベトナム・タイ・インドネシアなどから人材を需給している」と話した。実際、台湾統計処によると、今年の台湾大学留学生のうち23.7%がベトナム出身、14%がインドネシア出身だ。[朝鮮日報参照]

image by: Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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