サムソンの一部労働組合が無期限ストライキを行っています。それに対して国民からは批判の声が大きい様子。無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、その理由を語っています。
国民の血税で三星労組を支援するってか
今月8日にゼネストを開始した全国サムソン電子労働組合(全三労)が10日、無期限ストを宣言した。全三労は8日から3日間、1次ストライキを行った後、15日から5日間、2次ストライキを行う計画だったが、この日突然無期限ストライキに入った。
現在、サムソン電子には計5つの労組があるが、全三労だけがストライキを行っている。三星電子の全職員約12万5000人のうち、全三労の労組員は3万1000人余りで、半導体を作るDS(半導体事業部)所属が約90%に達するという。現在、集会などストライキ現場に参加する人員は会社推算3000人余り、労組推算6500人余り。全三労は労使協議体合意案(5.1%)より高い5.6%年俸引き上げと成果給支給基準変更を要求している。
ストライキ参加人員が少なく、実際に半導体生産に支障が生じる可能性は低い。しかしファウンドリー(半導体委託生産)では信頼度が落ち、顧客誘致に困難をきたす恐れがある。米国・日本・台湾・ヨーロッパなど全世界が激しい半導体競争を繰り広げるなかで労組ストライキで国内半導体競争力が毀損されかねないという憂慮が出ている。
戦略産業である半導体は、国内投資と雇用、生産に及ぼす影響が莫大だ。上半期の輸出の中で最も高い割合(20%)を占めている。このため、国民の血税を投入して先端半導体の敷地を造成し、昨年だけで三星電子に6兆7000億ウォン(ナラサリム研究所推定)の税金減免の恩恵を提供した。
特に最近、サムソン電子が人工知能(AI)半導体で苦戦中であることを勘案すれば、労組ストライキは火に油を注ぐようなもの。業界関係者は「平均年俸1億2000万ウォンの労組が会社と国家経済を人質に自分たちの要求を貫徹しようとするもの」と非難している。
会社側によると生産支障は今のところまだ現場で発生していない模様だ。しかし、ストライキのニュースが外信に乗って伝えられファウンドリー(半導体委託生産)顧客誘致に困難をきたすという憂慮は大きい。 業界関係者は「半導体は希望する製品を適時に供給することが何より大事」として「グローバル顧客会社は今回のストライキで収率(正常製品生産比率)に影響を受け、納期が遅延しないか見守っているだろう」と話した。
今回のサムソン電子労組ストライキに対して批判的声が大きいのは、ストライキの大義名分や状況が納得しにくいためだ。サムソン電子の役職員の平均賃金(登記取締役を除く)は1億2000万ウォンで、国内賃金労働者の上位4%に該当する。今年初め、経営陣と社員代表間の公式窓口である労使協議会で合意された年俸引上げ率5.1%を拒否し、5.6%引き上げを要求している。労組は最近、会社が受け入れられない条件を追加で掲げている。労組法上「無労働無賃金」原則により支給できないストライキ参加労組員らの賃金を補填しろというもの。
国家的次元で半導体支援のために敷地提供と税金控除など大々的支援をし、人材育成のために大学制度まで変えることを考慮すればサムソン電子高額年俸者のストライキは社会的に容認しにくいという指摘が出てくるのも当然。「自営業者が出した血税で億台年俸者ストライキを支援する」というようなネット内の書き込みが目立つ。
韓国の半導体産業とサムソン電子が直面している状況は決して容易ではない。急成長している人工知能(AI)半導体は、米国(設計)と台湾(生産)を中心に動き、最近日本が世界最大のファウンドリー企業であるTSMC生産施設を相次いで誘致し、参入している。
韓国の半導体は圧倒的な競争力を見せてきたメモリーを前面に押し出して「半導体戦争」に対応してきていたが少しずつ限界を見せている。米国のNVIDIAと台湾のTSMCが急成長する間、サムソン電子の半導体は昨年約15兆ウォンの営業損失を記録した。
しかも三星電子はHBMで苦戦し、最近、半導体のトップを電撃的に交代した。半導体業界の関係者は「サムソン電子はメモリー半導体の好況で上半期に好業績を上げたが、数年後の状況は断言できない」としている。本来労組のなかった三星だった。今は母体を食い荒らすほどの激しさで闘っているようだ。隔世の感がある。
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