パリオリンピックで各国の熱い戦いが繰り広げられていますが、日本選手に負けた韓国選手の「敗者の品格」が話題となっています。無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、その詳細を語っています。
敗者の品格
「韓国卓球女帝」シン・ユビン(20、大韓航空)が韓国卓球史上20年ぶりに五輪女子シングルスメダルに挑戦したが、惜しくも天敵に遭い失敗した。それでも競技場を訪れた韓国のファンはもちろん、パリ市民まで敗者の品格を見せてくれたシン・ユビンに向かって熱い拍手を送った。
シン・ユビン(世界ランキング8位)は3日午後8時30分(韓国時間)、フランス・パリにあるサウスパリのアリーナ4で行われた世界ランキング5位の早田ひな(24、日本)と2024年パリ夏季五輪卓球女子シングルス銅メダル決定戦で2-4(11-9、11-13、10-12、7-11、12-10、7-11)で惜しくも敗れた。
韓国の卓球が女子シングルスでメダルを獲得したのは2回あった。1992バルセロナオリンピックでヒョン・ジョンファが銅メダルを獲得し、2004アテネオリンピックではキム・ギョンアがやはり銅メダルを獲得した。そしてシン・ユビンが20年ぶりに女子シングルスのメダル獲得に挑戦したが、残念ながら次の機会にということになった。
早田はシン・ユビンの天敵としてよく知られている。この試合前まで4回対戦しているが、いずれもシン・ユビンが敗れている。そして、この日の試合でもついに天敵を越えることができなかった。
シン・ユビンは1ゲームから11-9で勝利し勢いをつけていた。早田の内側と外側をまんべんなく攻略して流れを譲らず、このゲームを勝利にもたらした。序盤からシン・ユビンは攻撃が成功する度に片手を上げて「ファイト」と叫んだ。
早田は回転の多いサービスでシン・ユビンを攻略した。すると、シン・ユビンも同じようにサーブ得点で対応した後、また攻撃を成功させ、8-6のリードを奪った。続いて長いラリーの末、シン・ユビンのフォアハンド攻撃をハヤタが反撃したが、ネットに引っかかって9-6まで逃げ、結局11-9で勝利を奪った。
しかし早田はやはり相当の相手だった。第2ゲームでは、デュースの接戦の末、ハヤタが13-11で勝利し、ゲームスコアを1-1の原点に戻した。早田は試合序盤、3回連続でサーブがネットになったりもした。国際大会では異例の場面といえる。これでしばらく流れが途絶え、一点を奪われたシン・ユビン。しかし、再び早田の2連続凡失を誘導し、4-1までリードした。しかし、早田はシン・ユビンのバックサイドをうまく攻略し、勝負を5-6とひっくり返した。
その後、シン・ユビンが勝負を9-9の原点に戻した後、10-10になってデュースとなったが結局、早田のフォアハンドトップスピンを防げず、2ゲームを許してしまった。
そして続く3ゲームと4ゲームも早田ひなが勝ち切り5ゲーム目となった。5ゲーム目に突入すると、シン・ユビンは5-3でリードしていた状況で、強力なバックハンド攻撃とフォアハンド攻撃を交互に駆使し、連続得点に成功し、シン・ユビンが5ゲーム目は取った。しかし依然としてゲームスコア2-3でリードされているシン・ユビン。結局6ゲーム目も早田が取ってゲームスコア2-4でシン・ユビンは苦杯をなめることになった。(早田ひなの銅メダルが確定)
一方、早田は銅メダルが確定すると、コートにそのまま横になった後、喜びの感情をそのまま表した。しばらく立ち上がれないまま、とても感激した様子。一方、シン・ユビンは審判と順番に挨拶を交わすためにコートの両側を行き来した。続いてシン・ユビンが近づいたのはまさに早田ひなだった。横になっていた早田は、シン・ユビンが近づいてくるのを見るや、すぐに立ち上がった。そんなハヤタに向かってシン・ユビンは抱き合ってお祝いの言葉をかけた。「敗者の品格」が輝いた瞬間だった。
また、シン・ユビンは日本人監督にも近づき、礼を尽くしてお祝いの意を伝えた。もしかしたら天敵にうんざりしていたかもしれないが、シン・ユビンではあったが明るく笑って心から早田の勝利を祝福してあげた。
その後、シン・ユビンはベンチに戻った後、しばらくコートを離れることができずそのまま座っていた。女子卓球代表チームの呉光憲(オ・グァンホン)監督は、何かしばらく言葉をかけた。しばらくするとようやくシン・ユビンが立ち上がった。
すると観客席からは力強い拍手が沸き起こった。シン・ユビンはコートを一周しながら手を振った後、挨拶もした。すると、奇跡のように観衆の皆が立ち上がった。そんなシン・ユビンに向けて韓国や中国、日本のファンはもちろん、この日競技場を訪れたパリ市民もシン・ユビンが競技場を完全に抜けるまで熱い起立拍手を送った。
試合後、取材陣とミクストゾーン(共同取材区域)で会ったシン・ユビンは、オ監督とどんな話をしたのかという質問に、「監督が『本当にとても良くやった』と言ってくれました。多くの発展があったので、『今のように十分努力すればあなたはできる』というお話をしてくださった」と話していた。
続いてハヤタに近づきお祝いの言葉を伝えた場面に関して「私もそばで見てきましたが、その選手もそうですし、すべての選手が熱心に努力し、また切実です」とし「そういう部分では本当に認めてあげたいです。私もそうやってもっとしっかりした選手になりたいという気持ちで、お祝いの気持ちを伝えたと思います」と話した。
シン・ユビンはファンに向かって挨拶したことについて「応援してくださったことがとてもありがたかった。 そのおかげでここまで来ることができました。このようにパリで素晴らしい試合ができるようにしていただき、感謝しています」として次の飛躍を約束した。果たして、次は天敵を倒して明るく笑うことができるのだろうか。[アジア経済新聞ベース]
ピョンチャンオリンピックのスピードスケート女子500メートルで金メダルを獲得した小平奈緒と銀メダルのイ・サンファ(李相花)。あのときは泣きじゃくるイ・サンファを小平が抱き留めて慰めてあげる姿が全世界を涙に包んだ。筆者は今回のシン・ユビンを見ていてふと、2018年の小平奈緒とイ・サンファのことを思い出した。水と油のような日本と韓国ではあるけれど、必ず接点はある。
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