日本のお隣、中国では新エネルギー車(NEV)の勢いが止まらないようですが、そんな中でも存在感をあらわしているのが日本のトヨタです。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』は今回、広州汽車集団とトヨタ自動車の合弁会社である広汽トヨタのHEV(ハイブリッド車)「シエナ」が好調であることを紹介。一体、何が起きているのでしょうか?
高級ミニバンに続々参入の中国NEVも敵わない、トヨタMP HEV
中国高級ミニバン市場に新エネルギー車(NEV)が続々と参入して久しい。
基本的にはBEVは受け入れられず、現在はBYDの高級ブランド「騰勢(DENZA)」のMP PHEV「D9」が首位を固めている。
その中でも堅調な売れ行きを維持しているのが広汽トヨタのMP HEV「シエナ」だ。
一汽トヨタの姉妹車「グランビア」と合わせて考えると、実はやや落ち目の「D9」を上回る。
BEVでも、PHEVでもないHEVが中国高級ミニバン市場で受け入れられ続けている理由とは?
D9急成長でもシェア浸食無し
「D9」が月販1万台前後で推移し、中国高級ミニバン市場で存在感を示して久しくなっている。
一方で、そこまでパイが大きいわけではない中国高級ミニバン市場は「D9」によって、他社は大きく浸食を受けているだろう、と予想された。
しかし両トヨタのMP HEVは現在も堅調だ。
シェアが削られているのは上汽GMのビュイック「GL8」で、その凋落は著しい。
凋落激しいのはGL8
数年前まで、中国の高級ミニバンと言えば「GL8」だった。
急に大事なお客さんを送迎する、となったら、真っ先に手配するのが「GL8」であり、日本人にはあまり馴染みのない車種かもしれないが、中国では人気で、個人的にも中国においては多くお世話になった。
ただ、以上の使い方から分かる通り、「GL8」はビジネス用途というイメージが極めて強い。
つまり、「GL8」は二列目の座り心地に特化した高級ミニバン、という位置づけが中国でも広く定着している。
現在までに「GL8」も様々なモデルチェンジを経て、決してそうした既定イメージのモデルではなくなっているが、人に一旦定着したイメージはなかなか払しょくできない。
HEVのみのシエナ
2021年になり、広汽トヨタがシエナの生産を開始、HEVのみの設定で、ガソリン車は無し。
プリウスなどを除き、HEV設定のみは中国において、トヨタの初のケースかもしれない。
シエナは販売当初から相応の売れ行きを見せた。
一つに、アルファードにあこがれが強い中国において、そのトヨタのミニバンがまだ手の届く価格で販売されている、という点が大きかっただろう。
MPVは家庭向き
もう一つ、これは現在の中国ミニバンでは常識だが、広汽トヨタのシエナは中国において初めて、ミニバンというものが実は家庭用途に適している、ということを示したこと。
それまで中国において高級ミニバンはGL8しかり、アルファードしかり、ビジネス用途のものというイメージが強く、そのためにパイも大きくならなかった。
そこに風穴を開けたのがシエナだという。
三列ともに快適
三列ともに快適、家族3人、あるいは4人、その両親2人が乗っても快適な家庭向けミニバンとして急速に定着したシエナ。
そしてそれに続いて一汽トヨタから姉妹車としてリリースされたグランビアは、パワートレインに関係なく、これはこれで強烈な印象を中国に残し、それは今も続いている。
DENZAのD9は確かに成功したが、シエナ&グランビアの牙城は崩せていない。
しかしここにBYDのMP PHEV「夏」が乗り込んでくる。シエナ&グランビアと比べて10万元(約200万円)以上安い「夏」はやはり今後の中国高級ミニバン市場の目玉だ。
出典: https://auto.gasgoo.com/news/202409/28I70406458C110.shtml
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