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もう誘惑の塊。NYに住む日本人社長が、日本のコンビニへ7年ぶりに入ってみたら…

日本にいると当たり前のように利用しているコンビニエンスストア。でも、在米者から見るとその素晴らしさは異常なほどなのだそうです。今回のメルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』ではニューヨークの邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋さんが、7年ぶりに日本のコンビニに足を踏み入れた体験記を綴っています。

楽園/あるいは ランチパックは国の文化遺産に指定しろ

日本帰国時、コンビニエンスストアの店員の「いらっしゃいませー」の掛け声に条件反射的に反応しない。気合いを入れて無視を決め込む、と誓った、その結果報告です。

僕たち在米者からすると、久々に行く日本のコンビニエンスストアは、もう、ただのアミューズメントパーク。 楽しすぎてなかなか出られません。いや、本当。

まずアメリカには日本のコンビニのような魅惑的な店が、ない。品揃え豊富で、明るくて、清潔。日本のコンビニにあたる、この街の “24時間営業ストア” は「韓国人経営のデリ」になりますが、見た目は昭和の「八百屋さん」。暗い店内に搬入時の段ボールのまま、マジックで値段を書かれた果物や野菜。目つきの悪い店主。

従来より明るいワット数の電球を使う事により、入店するだけでワクワクする効果をもたらすコンビニは、日本の誇る「街のほっとステーション」。

入店と同時に流れる店舗別ジングルも心を躍らせます。アナウンスで「暖か~い、おでんの季節になりました♪ 現在、一品どれでも70円のキャンペーン中で~す」なんて言われたら、声のする方向に「はい!!?」と返事しそう。せずともおでんは買う。買わないなんて選択肢はあり得ない。そこまで大人にはなれない。これ以上ないほどセブンアンドアイホールディングスの思う壺。

だとして、誓ったばかりです。

入店時の「いらっしゃいませ~♪」に意志を持ち「 “ちゃんと” 無視をする」。

気を抜くとニューヨーク時のように返事をしかねない。何度も練習した奥義「聞こえるか聞こえないかくらいのドウモ + してるかしてないかくらいの会釈 イン 同時」を試す時がきた。

果たして、シッカリと練習の成果を出せたと思います。自分なりには完璧にこなせた。なんなら気合い入りすぎて、いらっしゃいませと声かけしてくれた店員をちょとにらみ気味だったかもしれないほど。

24年間のニューヨーク生活で、最大7年間、日本帰国をしなかった時期があります。その際の7年ぶりに入ったコンビニは、記憶が飛ぶほど興奮した。刑期を終え出所した犯罪者の気持ちが理解できた。そうか、こんな感じなのか、と。

特にパン売り場コーナーなんて、息遣いのハァハァが自分の耳に届くほど。

小麦粉の輸入が制限されているニューヨークでは、日系グロッサリーでも日本製のパンを見ることがない。つまり7年ぶりに日本のパンに遭遇!したということです。

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想像してください。 日系人でもなく、27歳まで普通に日本人として日本で暮らし、毎日のようにコンビニに通っていた人間が、7年ぶりコンビニのパンに遭遇した瞬間の感動を。 日頃カッチカチのベーグルしか食べてない人間が7年ぶりにふんわりちぎれるチョコホイップパンを見た時の衝撃を。

すべてがヤバいくらい美味しそう。 7年ぶりということは、もちろんほとんどが初めて見る “新製品” です。

この興奮を伝えるため、その場でケータイから地球の裏に国際電話を掛けるます。電話に出た、ちょうど日本と真逆のこの時間に新聞の入稿をしているニューヨークのスタッフに「おまえ、モッチリ食感塩キャラメルロールって知ってっか?」

もしもし、の前にいきなり問う。 「シャちょー、切っていいっすか?」

ここで計算に入るわけです。 できることなら、この棚のパンすべてを買い占めたい。さすがにそれは無理なので、3個か。 いや、4個はイケるな。 この中から選抜4個。残酷かつ難関な課題を抱えます。これ以上過酷な試験はない。

ここ数年稀に見るほどの勝負に、仕事でも見せた事のない真剣な表情で4個を選ぶこと、20分-。さっき睨みながら入店してきた男が、今はパンコーナーでハァハア言ってる変質者に変わる( ヤマザキのランチパックだっけ?アレ、もう国の重要文化財にした方がいいよね)

妥協なき選択を終え、やっと選び終わった戦士は満足感ととにドリンクコーナーに足を運びます。

ここでも愕然とする、、、 「お茶だけで何種類もある!!!!!!!!」

実際、アメリカの小売店で見るドリンクコーナーは僕が渡米した25年前から比べ、顔ぶれはほぼ一緒です。 多分、そのずっと前から同じ。 そしてこれから先もずっと同じ。

コーラ。 スプライト。 ドクターペッパー。 マウンテンデュー。 それぞれのライト。 チェリー。 カロリーゼロ。 があるだけ。 全員の好み趣向にいちいち合わせられない多民族国家は、逆に選択肢が絞られていく。これは僕が発見した法則。

単一民族国家は趣味趣向が同一からスタートできるのど、選択肢の幅が逆に広がっていく。日本の方がイチプロダクトにおいて、種類数が多い。

すべてが美味しそうに見える日本製のソフトドリンク売り場を前に今度は「まいっちゃったな~…。 困っちゃうな~…」とニヤニヤ、声は出ずともニヤけている自分に気づく。いや、気づいていない。

ガン飛ばして入店してきた男が、パンコーナーでハァハアいって、今度はドリンクコーナーでニヤニヤしてる(そろそろ通報されるぞ)

やっとペットボトルのお茶とストローを挿すタイプのコーヒーを持ってレジに向かう途中、「おにぎりコーナー」を通ってしまう。コンビニの棚位置が巧妙に配置されてるの、本当だな。

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ここにきて、フリダシ。

長時間かけて選び終わったカゴの中の4個のパンが、ブレるなとささやいてくる。またゼロからの選考ほどの体力も気力も残っていない。

韓国海苔使用まぐろユッケおにぎり…?やみつき!焼豚炒飯おむすび…?もちもちいかめし おこわおむすび…勝てるわけがない。これほどの強烈な誘惑に勝てる人間であればとっくに億万長者になっている。

その時です。信じられない!と思わず二度見したのは何の具も入ってない、海苔も巻かれてない「塩おむすび」なる商品。

えっ!!なにコレ!冗談でしょ。 。。お米の美味しさと塩加減だけで勝負するってことだよね!!??僕が日本にいた頃にはなかったよ、こんなの。

って、つまり、、…一周したってこと? だよね。この国はどこまで行ってしまうのだろう…。

どうする。パン2の、おにぎり2か。 あるいはパン1で、おにぎり3か。 いや、あえてパンを捨ててのおにぎり4か。 熟考は続きます。苦しくなってきて泣きそうにもなる。

ガン飛ばして、ハァハァ言って、ニヤニヤして、今は目が真っ赤。 今考えると通報しなかったアルバイトくんに感謝だな。

結果2-2でやっとレジにたどり着きました。すでにクタクタになっている僕は、カウンターで販売してるホットコーナーを視界に入れないように努力する。チラッと見えただけで「横浜中華街特選豚まん」と「欧州ビーフカレーまん」が気になって気になって仕方なかったもの。 このままだと本当にコンビニで1時間以上が経過してしまう。

これだけ購入して「798円です」といわれた際は、感動して鳥肌が立ちました。コノコのバイト代ハドコカラデテイルノ?

おつりを丁寧に両手で渡してくれて(賭けてもいい。 ニューヨークでそんな店員を見る事なんて絶対にない)しかも、ビニールの買い物袋の取っ手部分を、持ちやすいようにクルクルとひとつにして、わざわざこちらに向けて頂いて候。そしてチップも払ってないのに「ありがとうございましたー♪」の笑顔。

来日前、固い決意で「無関心ルール」を胸に刻んでいましたが、もうどうでもいい。 溢れんばかりの感動が抑えきれず、「こちらこそー!」とお辞儀してました(実話) 入店時、にらんでごめんね。

ガン飛ばし → ハァハア → ニヤニヤ → 熟考 → 涙目 → レジにてお辞儀。脱走してきた入院患者だよ。

まさにアミューズメントパーク。 いくら長居しても飽きないエンターテインメントスポット。

リア充満喫。十分な満足感で晴れやかに退店しようとした、その時。

プー、プーと、表にパンの搬入トラックが今まさに店先に駐車しました。

新商品が、搬入される可能性があるって、こと、だ、よ、ね。それらが棚に並ぶのを見届けずに帰るほどの潔さが、自分にはあるのだろうか。、、、

ふりだし。

ここにきて、ふりだしに戻る。

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image by: Terence Toh Chin Eng / Shutterstock.com

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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