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ロシアの北海道侵攻は「トンデモ論」なのか?歴史で考える第三次世界大戦の予兆

ここ最近、ロシア軍による日本周辺での哨戒飛行が定期的に行われ、領空侵犯もソ連崩壊後に何度も確認されています。対ロ制裁を続ける日本とロシアの関係は冷戦後で最悪のレベルにまで落ち込み、ついには「ロシアによる北海道侵攻論」という一見「トンデモ論」まで浮上してきました。メルマガ『安恒理の「ここでしか書かない話」~メディアの裏を読む~』で私は「第三次世界大戦はすでに始まっているのではないか?」と警鐘を鳴らし、過去のノモンハン事件や第二次世界大戦の教訓に照らし合わせ、未来の戦争の予兆を懸念しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:内憂外患~~日本を取り巻く危機

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歴史は繰り返さない。が韻を踏む

9月21日号で「第三次世界大戦はすでに始まっているのではないか」と記した。

ここでは別の視点で考えてみたい。

第二次世界大戦勃発のきっかけは1939年9月1日のドイツのポーランド侵攻ということが通説となっている。学校で使われる歴史教科書にはそう書かれている。

この歴史的評価に異議を唱える説は、欧米あたりの歴史家の間で広まっているそうだ。

(余談だが、この説を日本に大々的に紹介したのは、朝日新聞ではないだろうか? 朝日新聞としては、なにもかも「日本が悪い」「日本の軍人が悪かった」という方向にもっていきたいのでは、などと邪推してしまうが……)

ドイツのポーランド侵攻前、モンゴルと満州国の間で国境線をめぐって小競り合いが続いていたが、これが日本の関東軍とソ連軍の正面衝突へとつながる(ノモンハン事件)。その間、ソ連はドイツのヒトラーと独ソ不可侵条約に向けた協議を続けていた。 ソ連としては、西で対独戦、東で対日戦の両面作戦はどうしても避けたいところだった。

そのためドイツと不可侵条約を締結、日本軍と対峙した。 後顧の憂いがなくなったソ連は、ノモンハンに軍隊を集結した。

これまでの通説では、ノモンハン事件では日本軍が一方的に大敗したことになっているが、最近の研究では日本軍も相当に奮戦したという。戦死者でいうとソ連軍の損害のほうが日本軍をはるか上回っていることが、各種報告書に記載されている。

ソ連軍は戦車を中心とした機械化部隊で日本軍を撃退し、勝利したという後世の評価だ。実際にどちらが勝利したかといえば、戦闘の目的である「領土の確保」ということであればソ連軍の勝利であることは間違いない。

日本軍はソ連の損失より機械化部隊の脅威により、戦意を失ったことには違いない。 いずれにしろこの戦いの後、9月16日、ノモンハン停戦が成立。スターリンが東京に送り込んだリヒャルド・ゾルゲの情報で日本がソ連と全面戦争をする意思がないことを確認すると、ドイツとの密約に従ってポーランドに侵攻した。極東に配備されていた戦力の多くをヨーロッパ戦線に配備することも可能になった。

ノモンハン事件もまさに、第二次世界大戦を引き起こす要因の一つになったことは事実。第二次世界大戦の起因は、それこそ第一次世界大戦の戦後処理、あるいは世界恐慌なども挙げられるだろう。それらと並んでノモンハン事件もまた、第二次世界大戦起因の一つのピースには違いない。

なぜ、この過去の話を持ち出したか。

「歴史は繰り返さない。が韻を踏む」という名言にしたがって、過去の歴史を振り返ってみた。もし、どのタイミングで第三次世界大戦が勃発か分からないが、遠因の一つに「ロシアのウクライナ侵攻」も重要なピースとなるかもしれない。

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ロシアの北海道侵攻は「トンデモ論」なのか?

 一つのウワサ、それこそ都市伝説の類かもしれないが、プーチンロシア大統領は北海道に侵攻することも想定していたという。 戦術、戦略的には無理があるにせよ、「国家のすすむべき進路」の一つに、北海道侵攻も一つの選択肢のなかにあっても不思議ではないし、ないほうが不自然だ。

もちろん、そうなればアメリカとの衝突にもつながるので、単独では行なわず、中国の台湾進攻などと並行して北朝鮮も巻き込んで検討することがあってもオカシクはない。 中国は現状では間違いなく拒否する。いまの戦力ではとてもアメリカには対抗できず、そもそも中国としては「戦わずして勝つ」ことを目指して、武力に訴えるのは最終手段と考えている。

現状からロシアの立場から見てみよう。 いま戦力、とりわけ陸軍の戦力はウクライナ戦線に注力されている。背後(東)から日本・アメリカから攻めてこられたら両面作戦を強いられるロシアは苦しくなる。

もちろん日本にはその選択肢はないしアメリカにもないだろう。 ただ北方領土という係争地を抱えてロシアとしては完全に安心しきれる状況ではない。

最近、日本近海で中ロの海軍が演習を行なったり、中国軍用機、ロシア軍用機が日本の領空を侵犯したりしているのも、けん制のほかならない。それだけ中ロも焦っていることの証左だろうが。

ところでロシアの北海道侵攻という「トンデモ論」を持ち出して、「まさか!」とお笑いになった方もいるだろう。しかし、ロシアにはウクライナ侵攻以前にも前科がある。

第二次世界大戦で日本がポツダム宣言を受諾し、武装解除しようとしたそのとき、ソ連軍は満州や南樺太、千島列島に侵攻してきた。 このなかで千島列島では、最北端の占守島では占守島守備軍第91師団2万3000人は、果敢に応戦。見事にソ連軍の侵攻を食い止め、北海道を占拠しようとするスターリンの野望を打ち砕いたのだ。

現状ではロシアが北海道に侵攻してくる可能性はほとんどないだろう。だがロシアの専制主義体制が続く限り、その野望を完全に捨て去ることなないと思っていた方がいい。

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image by: shutterstock.com

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