中国の自動運転業界のスタートアップである小馬智行(pony.ai)が米国での株式上場に向けて準備を進めていることが話題となっています。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』は、pony.aiについて詳しく紹介し、今後の懸念材料などについても語っています。
中国自動運転新興Pony.aiが米上場へ、株主にはトヨタ自動車も
中国の自動運転スタートアップ小馬智行(pony.ai)が、米国でのIPO(新規株式公開)に向けて準備を進めている。
ナスダック市場に上場する可能性があり、自動運転業界の動向に注目が集まっている。
トヨタ自動車も出資しており、現時点までに出資比率は数%になる見込みだが、出資時点より企業価値は数倍になっていると予測され、トヨタの持ち株の評価益も増加している可能性が高い。
pony.aiとは?
pony.aiは、2016年に設立された自動運転技術の開発企業である。
主な事業は、自動運転タクシー、いわゆるロボットタクシー、自動運転トラック、自動運転技術のライセンス供与、研究開発の受託などがある。ロボタクでは、中国の広州、北京、上海などで、自動運転タクシーサービス「PonyPilot」を展開。
ユーザーはアプリを通じて自動運転タクシーを呼び出し、乗車が可能。ただし、現時点までに収益貢献は低いと思われる。
収益の柱は二つの事業
自動運転トラックは、それ専用のソフトウェアを開発し、物流会社などに提供している。
高速道路での長距離輸送や、港湾エリアでのコンテナ輸送などに活用されている。
ライセンス供与は、自動車メーカーや部品メーカーなどに供与。ライセンスを受けた企業は、Pony.aiの技術を活用して、独自の自動運転システムが開発可能だ。
この両者が今のところ、売上への貢献が高いと思われる。
ボッシュが特徴的な動き
ライセンスは、現在までに確認できるところで言えば、やはり株主の広汽集団、一汽集団、韓国ヒョンデ、ロバート・ボッシュなどに供給している。
興味深いのはボッシュで、ボッシュはpony.aiとは競合と思われる文遠知行(WeRide)からもライセンス供与を受けており、中国最先端の二社の技術を活用して、関連の技術開発に努めていると考えられる。
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トヨタの出資状況
トヨタは2020年2月、pony.aiに対して4億ドルを出資している。
当時はシリーズCラウンドで、pony.aiの企業価値は30億ドル程度とされていたため、その際の出資比率は10%を超える株主だったことになる。
pony.aiはその後も資金調達ラウンドを繰り返しており、企業価値は増大、上場時には100億ドル前後まで達する可能性がある。
トヨタによる売却はない
広汽集団は何度かpony.aiに出資ているが、トヨタの追加出資は情報としてはないので、トヨタの出資比率は上場時には数%程度になる見込み。
ただし、企業価値は数倍増しているので、評価益もそれに比例して増えることになる。
しかし、pony.aiは広汽トヨタと合弁してロボタク事業を推進しようとしている最中であり、上場後にトヨタが同株を売却する可能性は少ない。
懸念材料は米中対立
中国の自動運転企業が米上場を果たしたものの、もろもろの要因で上場廃止した図森未来(TuSimple)の事例がある。
TuSimpleとpony.aiでは背景が全く違うが、懸念されるのは同様に米中のデータ規制と対立。
自動運転というデータがすべての分野だけに、このリスクだけはどうしても避けることはできなさそう。
出典: https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1969302/000110465924109475/tm2310344-12_f1.htm
※CHINA CASEは株式会社NMSの商標です。
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