ホンダが2024年4月に中国の北京モーターショーで発表したBEV(二次電池式電気自動車)の「イエ」シリーズが、1年を待たずに「消滅」の危機に陥っています。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では今回、中国ホンダの「イエ」というブランド名が消える可能性がなぜ高いのか、中国自動車業界の事情なども交えながら解説しています。
ホンダ、中国専用BEVシリーズ「イエ」発表1年満たずで消滅か
ホンダが中国専用BEVシリーズとして満を持して華々しく発表した「イエ」が消滅しようとしている。
2024年12月に「イエ」が不安だと指摘したが、その通り、ある意味迷走している形になっている。
その初弾の中型SU BEVにおいて、広汽ホンダはすでに「イエ」表記を中止、「広汽ホンダP7」の車種名を使い始めている。
東風ホンダのその姉妹車の車名は依然として「イエS7」を使用しているが、これが「東風ホンダS7」になるのも時間の問題か。
東風ホンダの方が「霊悉L」が大ゴケしているので骨身に染みていそうだが、そうはなっていないのも興味深い。
発表当初から否定的
「イエ」が発表されたのは2024年4月の北京モーターショーでのことで、「P7」「S7」と、第2弾のコンセプトモデルとなる「GT CONCEPT」が公開された。
この発表と同時に中国では、この名称や別ブランド化に賛否、というか否定的な言論が目立つようになった。
「よりにもよってBEVのブランド名に“火”偏のある漢字を選んでどうする」という、BEVがよく発火する中国ならではの突っ込みもあった。
また、普通の指摘として、「漢字そのものの意味こそよいが、ブランド名としての独自性や認知度が不足している」というのもあった。
泡沫ブランド扱い
さらに、「不安になったホンダ中国が、イエという名称、ブランドに関するマーケティングを改めて行っている」という情報が広まった。
ホンダ中国はこれを否定、新ブランドの命名に対する確固たる自信がある、と表明した。
中国では既存メーカーによる新ブランド、全く新たな新興が続々出現する中で、せっかくのホンダブランドを生かさずに、別枠の「イエ」を持ち出しては、そうした現れては消えていく泡沫ブランド扱いされる可能性も指摘されていた。
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今の中国でBEVは厳しい
「イエ」はまだ、エンブレムはホンダのものを援用しているので、直感的にホンダとの関連が分かりやすい面はある。
しかし、ブランド名もエンブレムも別のものにした東風ホンダ「霊悉L」が直近、全く売れていないし、売れる気配を見せていない。
そもそも数年前、「少なくとも中国ではこれからはBEVの時代だ」と騒がれた際に企画されたと思われるBEVシリーズで、おそらく足元の中国市場の環境変化に適応できていないようだ。
現状中国でBEVが売れているのは、米テスラ、BYDの小型ハッチバック、五菱(Wuling)のミニEV程度であり、蔚来(NIO)も厳しく、小鵬(Xpeng)が足元では盛り返している程度なのが実情だ。
時代はPHEVでありREEV、というのが現状の中国だ。REEV本家の理想(Lixiang)、一気に躍進したファーウェイの他、長安や東風の新ブランドのREEVも売れるようになっている。
中国では「e:N」も不発
やはり失敗したと言ってもよいホンダの中国におけるBEVシリーズ「e:N」は、そもそもホンダブランドで展開している。
ホンダブランドで展開しても売れないものを、全く馴染みのない別ブランドを立ち上げても、うまくいきようがない。
これは後出しじゃんけんではなく、奇しくも「イエ」発表時の本レポートでも不安点は指摘していた。
俯瞰の広汽ホンダが初手?
広汽ホンダがいち早く「イエ」を見限ったのは、「e:N」の失敗、兄弟会社の東風ホンダ「霊悉L」の失敗を俯瞰して確認していたからかもしれない。
ただし、さすがに東風ホンダも広汽ホンダの動きに追随する可能性が高く、「イエ」は発表1年足らずで、すでに終焉の兆しが見えている。
出典: https://auto.gasgoo.com/news/202502/10I70418066C501.shtml
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