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「中国から撤退しろ」という声が叫ばれる今、その振り子が“いつか逆に向く”と思うワケ

反中国の風が吹く今、メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、あえて中国ビジネスについて考える好機だと述べています。トランプ大統領の対中ディールはどのような未来をもたらすのか、中国との新たなビジネスモデルについて準備を今から進めることが重要だとし、今やっておくべきことを紹介しています。

今だからこそ、中国ビジネスについて考える

今日のテーマは、中国ビジネスです。現在は反中国の風が吹いています。しかし、振り子はいつかは逆方向に動くのです。反中国に振り切った今だからこそ、次の中国ビジネスを考える好機だと思います。

1.反中国のトレンドが示す現実

近年、中国を取り巻く国際的な環境は急速に変化しています。中国不動産バブルの崩壊や日本企業の撤退、さらには米国による中国孤立化政策などが相まって、リアルでもネット上でも反中国の動きが加速しています。このような状況は、単なる一時的な現象ではなく、世界的な潮流として定着しつつあります。

こうした動きの背景には、単なる政治的対立だけでなく、経済的なリスク管理や企業の戦略的な再編成が含まれています。

例えば、日本企業の撤退は、中国市場の不透明性やリスクを回避するための動きであり、米国の孤立化政策は、技術覇権争いの一環としての側面もあります。

このような状況下で、企業や個人が中国との関係をどのように再構築するかが問われています。

2.中国は消えない現実

反中国の世論が高まっても、中国が世界経済から完全に消えることはありません。中国製品は依然として世界中で流通し、中国人観光客の訪日も続いています。また、日本企業の多くは中国市場への依存を完全に断ち切ることが難しい状況にあります。

しかし、中国国内では反スパイ法の施行や日本人への嫌がらせといったリスクが増大しており、現地でのビジネス活動には慎重な対応が求められます。その結果、オンライン会議や日本国内での商談といった新しい形態のビジネススタイルが主流になりつつあります。

これにより、物理的な距離を超えた新たなビジネスモデルの構築が必要とされています。

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3.トランプの対中ディールがもたらす未来

トランプ大統領が再選し、中国との関係はさらに複雑化するでしょう。トランプ氏は、中国の弱体化と孤立化を推進する一方で、最終的には何らかのディールを仕掛ける可能性があります。習近平体制の崩壊や中国の経済的な弱体化が進む中で、トランプがどのような取引を行うかが注目されます。それに対応する戦略を考えることで、日本の新たなビジネスチャンスを生む可能性があります。

このような状況を見据え、日本企業は中国市場の変化に迅速に対応するための準備を進める必要があります。特に、政治的なリスクを最小限に抑えつつ、経済的な利益を最大化するための戦略が求められます。

4.今、やっておくべきこと

これからの中国ビジネスを見据え、今から準備すべきことは何でしょうか。まず、目先の利益追求にとらわれず、長期的な視点で戦略を立てることが重要です。

具体的には以下のような取り組みが考えられます:

リスク分散:中国市場への依存度を下げるため、他のアジア市場や新興国市場への進出を検討する。

デジタル化の推進:オンライン会議やデジタルプラットフォームを活用し、物理的な距離を超えたビジネスモデルを構築する。

法規制の理解:中国国内の法規制や商習慣を深く理解し、リスクを最小限に抑える。

人材育成:中国ビジネスに精通した人材を育成し、現地の状況に柔軟に対応できる体制を整える。

これらの取り組みを通じて、日本企業は中国との新しい関係を築き、将来のビジネスチャンスを最大限に活用することができるでしょう。

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(参考)トランプ氏の対中ディールとは

トランプ前大統領が再び政権を握った場合、彼の対中ディールは、過去の政策や発言からいくつかの特徴的な方向性が予想されます。

1. 強硬な関税政策の継続と交渉の道具化

トランプ氏は1期目の政権で、中国からの輸入品に対して高関税を課し、これを交渉の武器として活用しました。彼は「アメリカを再び偉大にする」というスローガンのもと、国内産業の保護と貿易赤字の削減を目指し、中国に対して強硬な姿勢を取り続けました。再登板後も、関税を引き上げることで中国に圧力をかけ、譲歩を引き出す戦略を採用する可能性が高いです。

特に、関税を単なる制裁手段としてではなく、中国からの投資や市場開放を引き出すための交渉材料として活用する「条件付き関税」政策が考えられます。

このアプローチでは、関税率を中国の投資額や貿易条件にリンクさせることで、米国の利益を最大化する狙いがあります。

2. 技術覇権争いの激化

トランプ氏は1期目で、中国企業に対する規制を強化し、特にハイテク分野での競争を激化させました。TikTokやHuaweiなどの中国企業を標的にした制裁や規制は、米国の技術的優位性を守るための措置とされました。再登板後も、米国の技術覇権を維持するため、中国の技術産業への圧力を強める可能性があります。

また、サプライチェーンの脱中国化をさらに推進し、米国内での製造業復活を目指す政策が展開される可能性もあります。これにより、米国企業が中国市場への依存を減らし、国内雇用を増やすことを目指すでしょう。

3. 習近平政権との直接交渉

トランプ氏はビジネスマンとしての経験を活かし、個人的な交渉を重視する傾向があります。彼は1期目でも習近平国家主席との直接会談を通じて、貿易戦争の一部緩和を試みました。再登板後も、習近平政権との直接的なディールを模索し、米中関係を再構築する可能性があります。

ただし、この交渉は単なる妥協ではなく、米国の利益を最大化するための厳しい条件を伴うものになると予想されます。 例えば、中国の市場開放や知的財産権の保護、国家補助金の削減などが交渉の焦点となるでしょう。

4. 日本を含む同盟国への影響

トランプ氏の対中政策は、同盟国である日本にも大きな影響を与える可能性があります。彼の「アメリカ第一主義」に基づく政策は、同盟国の利益を必ずしも優先しないため、日本は独自の対中戦略を強化する必要があるでしょう。

結論

トランプ氏の対中ディールは、強硬な関税政策、技術覇権争いの激化、直接交渉を通じた譲歩の引き出しといった要素を含むと予想されます。これらの政策は、米中関係だけでなく、国際経済や同盟国の戦略にも大きな影響を及ぼすでしょう。

編集後記「締めの都々逸」

「振り子も 振りきりゃ 必ず止まる そしたら逆に動き出す」

人がやらないことをやる。それが私のモットーです。「中国なんて危ないよ」と言ってるときに中国に行って、「中国はまだまだ行ける」というときに中国から撤退し、みんなが「中国から撤退しろ」というときに、次の中国戦略を考える。そんな感じでしょうか。

AIに関しては、いち早く確かめて、いち早く飽きて、今になって再開しています。おじいさんがAIを駆使したら若返るのかなあ、なんて考えています。(坂口昌章)

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image by: Shutterstock.com

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