まぐまぐが配信するトーク番組「Why so good?」。MCの越川慎司さんが進行を務める今回、ゲストに迎えたのは、一般社団法人オープンクリニック代表の草野敏臣(くさの・としおみ)先生だ。長崎県のご出身で、長崎大学、国立がん研究センター、琉球大学などで研鑽を積み、琉球大学第一外科の元助教授。前ミッドタウンクリニックグループ代表も務めた、医師歴50年のベテランである。約30年の外科臨床、約10年の検診事業・自由診療を経て、いま「オープンクリニック」として総合診療に再出発した草野先生。日本外科学会認定外科専門医であり、米国外科学会フェローでもある。上條さんが読み上げたプロフィールだけでも聞きたいことが尽きない──そんな先生がリスナーに一番届けたい“グッド”なこと。それは、意外にも「美しくなることは、心の健康に通じる」という深いメッセージだった。
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「美」と「健康」は、対極ではなかった
番組の冒頭、越川さんが「今回リスナーさんに一番届けたいグッドなことは何ですか」と尋ねると、草野先生は静かにこう切り出した。
「最終的に行き着いたところなんですけども、美しくなるというのは、すなわち心の健康に通じると」
病気という考え方は、がんや成人病だけではない──。そう語る草野先生は、こう続ける。「美容という言葉がなんか軽んじられていますけど、やっぱり心が落ち込んだりいろいろしますから、その辺を改善すると明るくなりますし、最終的に人生も楽しくなる」。
美しさを追求すると、むしろ健康から離れる──。そんなイメージを持つ人は少なくないだろう。だが草野先生の見立ては真逆だ。美しさと健康はむしろ深く結びついている。人はなかなか人に話さないまま、こもって「美しくなりたい」と考える。けれども、だんだん分かってくると、結局は“自分が変わっていく”ことを実感し、結果的に社会にも貢献できる。長い臨床経験の果てに、先生はそう確信するに至ったという。
外科、検診、そして美容──“人生三期作”という生き方
この境地にたどり着いたきっかけは何だったのか。草野先生は「自然の流れなんです」と笑う。去年で、医師になって50年。最初は大学のアカデミアから外科の臨床をスタートし、次に、自由診療の代表である会員制の健康診断へ。普通の健診よりも一歩踏み込んだ検診事業を約15年続けた。そして三つ目のステージとして、美容の領域へと歩を進めた。
外科臨床、検診・自由診療、美容──区切ろうとしたわけではないのに、結果的におよそ15年ずつ、三つの“期”を重ねてきた。番組では、これを草野先生の「人生三期作」と表現する。越川さんは、働く人の多くがキャリアに悩む現状に触れながら、こう受け止めた。今の延長線上に未来があるとは限らない。少しずつずらしていくことで、これだけ豊かなキャリアが積み上がっていく──と。
外科医時代は、がんの診療が多かったという。手術の説明ひとつとっても、患者の受け取り方はさまざまだ。医療訴訟が増えたこともあり、最初から「余命は何ヶ月です」「治療法はご自分で選んでください」と告げられ、まるで投げ出されたように感じてしまう患者も多い。だからこそ、相手の心の中に入っていくことが何より難しく、そして大切だと先生は語る。「美しくなるとか、気持ちを安らげるということと、同じじゃないかと思うんですよね」。アシスタントの上條さんは、その姿勢を「美しさは、心の自信を可視化するもの」と言い表した。

話題の「直美」に、元大学教官が思うこと
近年、研修医が卒業後すぐに美容医療の道へ進む、いわゆる「直美(ちょくび)」が話題になっている。かつて大学の教官として若手を育て、自らも外科の道を歩んできた草野先生は、この流れをどう見ているのか。
先生は、決して美容そのものを否定しない。むしろ問題は「卒後の研修」にあると指摘する。外科系に入れば、教育過程を通じて技術を学ぶ機会が自然と与えられる。ところが、そうした修練の機会がないまま美容へ進むケースがある。「だから、国としてもそういうことを考えるべきじゃないでしょうか」。
大切なのは、技術だけではない。医療を施す側の「精神的な余裕」だと先生は言う。それがなければ最悪の結果になりかねない。その教育をどこで身につけるか──美容分野では、そうした機会がやや少ないのではないか。だが、そこを是正すれば、外科系との差はさほどないはずだと先生は考えている。
そもそも、医療と美容は根本的には同じものだ、と草野先生は説く。日本では「病」に「美」を持ち込むと、まるで禁断のもののように捉えられがちだ。けれども国際的には、気になることを良くする、それが自然なこと。背が高くなりたいと願うのと同じように。「これは病じゃない、という線引きではなく、精神的に安心・安定することこそが医療の原点ではないでしょうか」。
ビジネスパーソンへ──「美」と自己効力感の意外な関係
この番組を聴くビジネスパーソンの多くが、キャリアに“モヤモヤ”を抱えている。越川さんは、働く人の87%がキャリアに悩んでいるというデータを挙げつつ、こんな視点を投げかけた。今は「自己効力感」がキーワードで、何かに自信がないと、仕事を即断・即決・即実行できないと言われている、と。
もし美によってトラウマやマイナスの感情が和らぎ、少しでも自信を持てたら、精神的にも安定し、仕事の成果にもつながるのではないか──。この問いかけに、草野先生は深くうなずく。「まさにその通りだと思いますね。心に余裕ができると、表面に出す態度も変わってくる。相手のために、しっかりしたことができるんじゃないでしょうか」。
仕事ができる人の共通点は、即断・即決・即実行ができること。迷いがある人、初動が遅い人は効率が落ちてしまう。プライベートの悩みが軽くなり、自信を持って前に進めるようになる──美を追求することは、仕事の力にも、精神の安定にも、そして肉体の健康にもつながっていく。番組の中で、そんな循環が浮かび上がっていった。
また草野先生は、事業としての医療を続けるうえで「経営基盤」の重要性も強調する。外科の手術も、検診事業も、責任者の立場になれば経営のことが常に頭をよぎる。それは治療にも影響する。「経営状態が良くないと、いい医療はできない。これは昔から一貫して変わりません」。福岡を拠点に選んだのも、出身地の長崎に近く、友人・親族も多く、そして九州で最も将来性のある街だから、という現実的な判断があった。
AIには語れないこと、そして75歳からのビジョン
興味深いことに、草野先生は「美」についてAIチャット(ChatGPT)に尋ねると、自分たちが考えもしなかったことがどんどん出てくる、と語る。機械のほうが意外と理解している面もある、と。だが司会者は、こう応じた。過去のデータを収集・整理するのはAIのほうが得意だ。けれども、今日のような話をAIはしてくれない。欲求も経験も肉体も持たないのがAIの特徴であり、だからこそ、人と人との対話によって刺激を受ける機会はとても貴重なのだ、と。
今後のビジョンを問われると、草野先生は、少し変わった外科の教育も含め、「直美」がより良い形になること、そして成人病だけにとどまらない多様な疾患への考え方を是正することに、何らかの形で貢献したいと語った。御年75歳。「平均寿命でいくと、あと10年は大丈夫みたいです」と穏やかに笑う先生に、司会者は「まだ全然大丈夫です。人生100年時代ですから」と応じた。
悩んだ時こそ──リスナーへの励ましのメッセージ
番組の最後、「夜、自信がなくて明日仕事に行くのが嫌だ」と感じている人へ、励ましの言葉を求められた草野先生は、こう語りかけた。
「自分が得意なこと、別に人と比べる必要はありません。悩んだ時こそ、“俺はこれができる”“これが好きなんだ”と考えて、生活習慣をそちらの方に向けていけば、仕事のほうも、多少はいい方向に行くんじゃないでしょうか」
他人との比較ではなく、過去の自分との比較。そこで自信を積み上げていけば、仕事もうまくいき、健康もついてきて、美しくなれる──。50年の医師人生と“三期作”の果てにたどり着いた草野先生の言葉は、キャリアに迷う私たちに、静かで確かなヒントを残してくれた。

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※本記事は、トーク番組「Why So Good?」の放送内容をもとに再構成したものです







