軍事力のみでは安定を取り戻せなくなった、現在の世界情勢。中東や欧州、そして東アジアで相次ぐ不穏な動きは、その事実を如実に表していると言っても過言ではありません。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、ホルムズ海峡の再緊張やトルコの存在感、さらに中国の「軍事的なシグナル」等を詳しく検証。その上で、軍事的抑止と並行して「対話の窓口」を維持する重要性と、揺らぐ世界秩序の行方について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです
管理される不安定化(Managed Instability)の時代-イラン戦争後、世界秩序はどこへ向かうのか
戦争は、一瞬で世界を変えることがあります。しかし、平和は一瞬では生まれません。対話とは、未来を諦めない人々が積み重ねる、最も現実的な選択です。
これは私がどこかの会議で行ったスピーチの一部です。
米イラン間、ロシア・ウクライナ戦争、タイとカンボジア、インドとパキスタン、アルメニアとアゼルバイジャン…いろいろな衝突の際に“停戦”が目指されます。
しかし、平和の到着点ではありません。
最近も世界中の現場を見ていて、改めてその言葉を噛みしめています。
6月にイラン戦争の停戦、いわゆる「イスラマバード覚書」が結ばれてからまだひと月足らずというのに、7月6日から7日にかけて、ホルムズ海峡付近でカタールとサウジアラビアのタンカーが相次いで攻撃を受け、これに応じてアメリカ軍がイラン国内80カ所以上を再び攻撃するという事態に至りました。
停戦とは決して「終わり」を意味しないのだということを、世界はまた思い知らされています。
同じ7月7日から8日にかけて、トルコのアンカラでNATO首脳会議が開かれ、ウクライナへの約700億ユーロ規模の軍事支援が合意されました。
中国は太平洋に向けて潜水艦発射弾道ミサイルを試射し、台湾と日本に強い緊張を与えています。
ロシア・ウクライナ戦争では、ロシアが東部の要衝コンスタンチノフカの制圧を発表する一方、ウクライナは長距離ドローンでロシア最大級の製油所を攻撃し続けています。
一見すると、それぞれ別の地域で起きている無関係な出来事に見えるかもしれません。しかし私には、これらすべてが一つの構造の中で連動しているように見えます。
中東、欧州、アジア。舞台は違えども、そこで問われているのは同じ一つのことです。
【対話の窓口を、誰が、どのように維持するのか】
今号では、この一週間で急速に動いた国際情勢を、中東、トルコ、中国、核をめぐる各国の動き、そしてロシア・ウクライナ戦争という5つの切り口から読み解いていきます。
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