【中国のSLBM発射実験が突きつけたもの】─ 台湾統一への意志と、抑止のシグナル ─
7月6日、中国人民解放軍の原子力潜水艦が太平洋の公海に向けて潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を1発発射しました。中国人民解放軍の発表によると、訓練用の模擬弾頭を搭載したもので、日本のEEZ(排他的経済水域)の外に着弾したとされています。
中国国防当局は「事前に関係国へ通告済みで、国際法及び国際慣例に合致する」と正当性を主張し、中国外務省の報道官も「関係国は過度な解釈を控えてほしい」と述べています。
しかし、発射されたのは新型の「巨浪(JL)3型」である可能性が高いとみられ、その射程は1万キロメートルを超えると言われており、それは南シナ海など中国近海から発射しても、アメリカ本土の大部分に到達しうる能力があることを誇示したと言えます。これは、2024年に発射された大陸間弾道ミサイル「東風31」と合わせ、海と陸のどちらからでもアメリカ本土を核攻撃しうる能力を誇示した形になります。
中国共産党系メディアの環球時報は、今回の発射について「中国の台湾統一への決意を改めて示すもの」と解説し、「完全統一を実現する意志を誤って判断してはならない」と論じました。
台湾総統府はこれに対し「国際社会を威嚇する意図がある」と非難する談話を発表しています。
ちなみに、今回の発射実験は、この時期に日本とフィリピンが台湾海峡周辺のEEZ境界画定交渉を始めたことへの強い牽制ではないか、という見方もあります。また、トランプ政権が台湾への武器売却を計画していることを踏まえ、核による威嚇を通じてこれを牽制しようとしたのではないかという指摘も出ています。
日本政府は、木原官房長官が「日本の領域やEEZの上空を通過したことは確認されていない」と説明する一方、中国側に深刻な懸念を伝達し、軍事活動の活発化について再考を強く求めました。日本のメディアの中には、「際限なき核軍拡競争を招く危険な挑発である」と厳しく批判する論調もあります。
私がこの一件から読み取るべきだと考えるのは、中国が意図的に「解釈の余地」を残した形でシグナルを送っているという点です。事前通告を行い、国際法上の手続きを踏みながらも、タイミングと能力誇示の両面で強いメッセージを込めるという手法は、全面的な軍事衝突を避けながらも、自国の意志を相手に伝えるという、抑止と対話のあいだの微妙な均衡を取ろうとする行動だと私は見ています。
台湾海峡とその周辺は、東アジアの安全保障とサプライチェーンの双方にとって極めて重要な結節点です。この均衡が崩れたときの影響の大きさを、私たちは改めて認識し、対応策を迅速に用意しておく必要があります。
そして、この抑止の論理は、最終的には核戦略へとつながります。
【核をめぐる各国の動き ─ 静かに進む「核の多極化」】─ 抑止だけでは説明できない現実 ─
今回の一連の出来事を追う中で、私がもう一つ強く懸念しているのが、核兵器をめぐる各国の動きです――(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2026年7月10日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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