アメリカとイランによる停戦合意の成立後も、なお先行きが見通せない中東情勢。米国側の「大幅な譲歩」とも受け取れる合意内容に対し、イスラエルの動向が新たな火種となる可能性も浮上しています。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、米国とイラン間の「了解覚書」やイスラエルの動きを詳しく解説。その上で、ウクライナ戦争や日本を取り巻く安全保障環境、さらに「世界平和の構想」について独自の視点で考察しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:トランプ氏の見事な敗北
それでも「勝った」といつもの強がり。トランプが喫した見事な敗北
米国は、イランに負けて賠償金まで払うことになった。それでもトランプ氏は勝ったという。この合意に反対のイスラエルはヒズボラへの攻撃を続け、この合意を阻害している。今後を検討しよう。
なぜアメリカはここまで譲歩せざるを得なかったか
米国とイランの停戦合意が成立して、停戦になった。米国はイランとの14項目の「了解覚書」の全文を公開した。主な条件には以下が含まれる。
- 米国、イラン、およびその同盟国は、レバノンを含むすべての戦線で軍事作戦を即時かつ恒久的に終了することに合意する
- 米国とイランは、互いの主権および領土保全を尊重し、互いの内政に干渉しないことに合意する
- 米国とイランは、相互に延長されない限り、60日以内に最終合意を交渉し、達成することにコミットする
- 米国は直ちに海上封鎖の撤廃を開始し、30日以内に封鎖を完全に終了する
- イランは、最大限の努力を払って、ホルムズ海峡を通る商業船舶の安全な通航を60日間、料金なしで確保する
- 米国および地域のパートナーは、イランの再建および経済開発のための少なくとも3,000億ドルの相互合意された計画を策定する
- 米国は、国連、IAEA、一次、二次制裁を含むイランに対するすべての種類の制裁の終了に向かって取り組む
- イランは核兵器の取得または開発を行わないことを再確認し、IAEAの監督下で濃縮素材の備蓄に対処することに合意する
- 最終合意が達成されるまで、イランは現在の核プログラムの現状を維持し、米国は新たな制裁を課さず、追加の軍を展開しない
- 米国財務省は、イラン産原油、石油製品、デリバティブ、および関連する銀行、保険、輸送サービスに対する免除を発行する
- 米国は、凍結または制限されたイラン資金および資産を完全に利用可能にする
- 米国とイランは、MOUの実施と最終合意の将来の遵守を監視するための執行メカニズムを確立する
- MOUの署名および主要な停戦、封鎖、海運、石油免除、資産解放条項の実施後、米国とイランは最終合意の交渉を開始する
- 最終合意は、拘束力のある国連安全保障理事会決議によって承認される
この覚書は、最終合意の交渉のための60日間の期間を開始する。
この停戦合意で、イランのモハンマド・ガリバフ議長は、「トランプ氏との交渉を通じて、軍事行動では決して達成できなかったほど多くの成果を上げた」言い、続いて「新たに台頭するグローバルなブロックには、中国とイランが絶対的な中核を成すだろう」と宣言したが、ロシアを除外した。
ロシアはウクライナ戦争に劣勢になり、とうとう、援助するイランにも見下されたようだ。それと、イランの中東における位置づけは大きな物になったようである。
このように停戦項目を見ると、米国が大きく譲歩しているが、なぜ、ここまで譲歩する必要になったのかである。それは、戦争を終わらせないと、石油備蓄が後約4週間で枯渇することにより、1バーレルが150ドル以上になりえたからだ。
しかし、イスラエルのネタニアフ首相は、米イラン合意を受けても、レバノンからは撤退しないと発言し、イスラエルがリタニ川南部ではヒズボラの残党に対する攻撃継続をするとして、米イランの合意を阻害した。
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