中国「人型ロボット大国」という幻想。心臓部は「日本製部品」頼みという不都合な真実

Beijing,,China,,18,June,2026.,Advanced,White,Humanoid,Service,Robot
 

中国でいま、人型ロボット人気が過熱状態にあります。ダンスやマラソンをこなす動画がネット上に氾濫し、市民は自国を世界最先端の「ロボット大国」と信じ込んでいます。しかしその心臓部は日本製部品に頼り切りで、産業ロボットの大手企業はこの分野への参入を尻込みしているのが実情です。メルマガ『勝又壽良の経済時評』では、著者で元『週刊東洋経済』編集長の勝又壽良さんが、補助金に群がる新興企業の実態と、中国が抱える需要ゼロという深刻な矛盾を鋭く読み解いています。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

中国「人型ロボットの謎」、大手企業尻込み 新興企業が資金調達で過熱化 技術「日本より10年遅れ」

中国では、人型ロボット人気が過熱状態にある。ネット上に氾濫するのは、ロボットがダンスを踊ったり、マラソンを走ったり、家事をこなしたりする動画である。市民はこれによって、中国が世界最先端の「人型ロボット国」と信じているほどだ。習近平国家主席には、国民を喜ばせるまたとないニュースとなっている。

政府の15次五カ年計画(2026~30年)では、ロボティクス(人間生活に役立つロボット研究)を中国経済の新たな成長エンジンに位置付けている。25年のロイター報道によると、当局は24年以降、人型ロボット開発支援に少なくとも200億ドル(約3兆2000億円)を拠出している。政府は、人型ロボットをEV(電気自動車)に次ぐ成長産業へ育てる計画だ。この政府の熱気を受けて、新興ロボット企業が続々と名乗りを上げ、証券市場で資金調達を始めている。

人型ロボットに関わる動画の氾濫は、投資家に夢を持たせている。新興企業が、これを資金調達に利用していることは明らかだ。公式推計によると、知能ロボティクス分野の登録企業は、24年末時点で45万社を超える。4年前の3倍以上に膨らんだ。6月時点で、人型ロボット関連の新興企業約50社が、香港での新規株式公開(IPO)計画を提出した。この一連の動きから、中国がロボット大国として台頭する、と憶測を生むまでになっている。

人型ロボット分野の登録企業が、45万社を超えているのは明らかに「バブル」である。儲かりそうだということで、ロボットと無関係な企業が名乗り出ている結果とみられる。半導体企業の勃興時でも、無関係な不動産業や極端な例では理髪業までが「半導体」へ群がった。この伝で言えば、人型ロボットでもこういう無関係な筋が、投機的な意味で名前を出して、補助金に与ろうということであろう。

見落としていけないケースは、既存の産業ロボット企業が、人型ロボットへ名乗り出ないという現実だ。これこそ、中国での人型ロボット製品化がいかに困難であるか。また、収益見通がつかないかを示唆している。結論として、現状では人型ロボット需要が見込めないのだ。この裏には、中国の不規則な産業発展構造の歪みが災いしている。全産業が、「不完全雇用」状態にあるので、人型ロボットの導入が必然的に失業者を生むのだ。この点についての詳細な説明は後で行う。極めて重要なポイントである。

この点で、日本とは事情が大きく異なっている。日本は、各産業が完全雇用による「人手不足」状態にある。これに加えて、企業データが完備している。人型ロボットを導入できる基盤が整っているのだ。日中では、このように人型ロボット需要の違いが明確である。人型ロボットについて、中国を日本と同列に論じるのは間違いである。日本は、中国からみれば異次元の世界である。

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