一瞥すればそれぞれ個別に起きているようにも見える中東危機やウクライナ戦争、そして中国を巡る国際情勢の変化。しかしその底流には、これまで前提としてきた秩序の「耐用年数切れ」といった共通した構図があるようです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、米イラン合意の空洞化やロシアの宇宙通信インフラを狙うウクライナの攻撃、さらには中国の域外的な法的圧力等を分析。その上で、「言葉で合意したこと」と「実際に実行されること」の間にある大きな溝と、日本に求められる備えについて考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです
“言葉の合意”と“実行”の間にある溝‐中東、宇宙、英国、中国から読む秩序の劣化
「戦争の終結ではなく、世界秩序の再交渉が始まった」
先週号でそのようにお伝えしたかと思います。
【関連】トランプ米でもイスラエルでもイランでもない。なぜ中東情勢の“最重要プレイヤー”が「中国」なのか?
イラン・イスラエル間の軍事衝突が小康状態となったことで、中東は「平和」を迎えたように見えますが、実際には、戦場が外交の舞台へ移っただけです。
米国、中国、ロシア、欧州、湾岸諸国はいずれも、次の秩序を誰が設計するかを巡る新たな交渉に入りました。今週の世界を理解する鍵は、「停戦」ではなく「秩序の再交渉」にあります。
実際に国際社会において何が起きているのか?それを紐解いていくうえで、私は大きく分けて5つのポイントを挙げることができるのではないかと考えています。
- 「合意した」は「解決した」ではない――米イランMOUの空洞化
- 戦争の重心が地上から宇宙へ移った――ドゥブナ攻撃が示す新しい戦争のかたち
- 物価高とポピュリズムは連動する――英国スターマー退陣が示す西側の脆さ
- 軍事侵攻だけが侵略ではない――中国民族団結法が突きつける新しい脅威の形
- すべてに共通するのは「情報とインフラの支配権」争いという構造
そして、
【世界秩序は「停戦後の交渉フェーズ」に入った】
【中国は米国の戦略資源の分散を好機と捉えている可能性が高い】
【ロシアの最大の課題は戦場ではなく、国内の持続可能性になりつつある】
【日本は「傍観者」ではなく、「信頼される交渉の場の提供者」としての役割を強化すべきである】
ということもできると考えます。
それでは今週も国際情勢の裏側についてお話しいたします。
一つ目は【米イラン間の緊張】についてです。ここでは「『合意した』という言葉の中身が、まだ誰にも見えていない」という表現ができます。
6月17日の覚書(MOU)合意以降、米イラン関係は「戦闘停止」という表面上の落ち着きと、「解釈の食い違い」という水面下の緊張が同居する、極めて不安定な状態が続いています。
まず押さえておきたいのは、両者の主張が根本のところで噛み合っていないという事実です。
【ホルムズ海峡の通航料】について、米国は「国際水路であるため通行料の徴収は許されず、それにイランも賛同している」と主張する一方、イランは「航行管理のためのサービス料としての通航料徴収は自国の権利である」と主張しています。実際に戦闘終結に向けた覚書では60日間限定で無償通航に合意していますが、その後については両者の認識が根本的に異なったままです。
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