米でもイランでもない。米国防総省の幹部が指摘した“百日戦争”「真の勝者は中国」という不都合な現実

 

国際社会が危険視する中国「民族団結進歩促進法」の内容

3つ目は【英国スターマー首相の退陣に見る“ポピュリズムの波”の拡大】です。

これはもう、欧州各国にとっては決して対岸の火事ではないと言えます。

先ほど触れた通り、国家紛争と物価上昇はポピュリズムを勢いづかせ、民主主義と自由経済体制にとって強い逆風となります。その象徴が、英国のスターマー首相退陣です。

6月22日、スターマー首相は官邸前で演説し、「労働党は次期総選挙(2029年までに実施)に向けて誰が党首に適任かを問うている。党の意向を受け入れ、党首を辞任する」と表明しました。

2024年7月の総選挙で労働党を14年ぶりの政権奪還に導いてから、わずか2年足らずでの退陣となりました。5月の統一地方選での大敗を受けて、与党・労働党内で退陣圧力が強まっていたところに、最有力後任候補とされるバーナム前マンチェスター市長が国政に復帰したことで、続投は困難と判断したとみられます。

スターマー氏は、過去10年で6人目の任期途中退陣となる英国首相です。就任後は支持率が急落し、2025年秋以降の世論調査では純支持率がマイナス40%台後半からマイナス50%台まで悪化するという、英国首相として極めて低い水準に沈んでいました。

後任は、党首選の指名受付を7月9日に開始し、議会の夏季休会を挟んで9月の再開前に決める日程が想定されています。最有力候補はバーナム氏と見られていますが、正式な手続きが完了するまで、誰が新首相になるかは確定していません。

これを英国一国の政局と片付けるべきではないと、私は考えています。物価高と地政学リスクが同時進行する局面で、既存の中道勢力の支持基盤が急速に溶けていくという構図は、他の西側民主主義国にとっても他人事ではないはずです。

米イラン戦争による原油高、ウクライナ戦争の長期化による経済的疲弊、そしてそれに伴う各国国内政治の不安定化――これらは互いに独立した現象ではなく、一つの負の連鎖として理解する必要があり、迅速な対応が求められます。

4つ目のポイントは【中国政府による「民族団結進歩促進法」の施行】です。これは私なりに表現すると【法治の仮面をかぶった域外統制】と言えるのではないかと思います。

7月1日、中国で「民族団結進歩促進法」が正式に施行されました。前文と7章65条から構成されるこの法律は、「中華民族共同体意識」の強化を国家全体の基本任務として位置づけ、教育、言語、出版、インターネット、企業活動、宗教、対外発信、そして香港・マカオ・台湾、さらには海外華僑までを一体で規律する、極めて広範な構造になっています。

注目すべきは、第63条に代表される「域外適用」条項です。国外の組織・個人が「民族団結を破壊する行為」に及んだ場合にも法的責任を追及できると規定されており、日本国内での中国批判的な言論や、少数民族・人権問題に関する調査・報道も、理屈の上では対象になり得ます。

中国政府自身は施行にあたっての会見で「中国の内政に対する粗暴な干渉であり、国際慣例に合致した正当かつ合法な法律だ」と反論していますが、国際社会からは恣意的な法執行や越境的な弾圧への懸念が相次いで示されています。

台湾も適用対象に含まれており、台湾の市民に対しては“中華民族への帰属意識を増進し、同じ中国人であるという認識を強化すること”が求められています。

中国で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の報道官は、「もし台湾独立勢力が独立を謀ることを目的として民族団結を破壊する行為に及べば、法に基づき処罰される」と述べ、台湾市民であっても法律の対象となる可能性を示唆しました。

中国政府としては、この法律によって統一への機運を高めるとともに、大陸と距離を置く台湾の頼清徳政権に圧力をかける手段として利用したい思惑があるものとみられます。

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