高知県南国市で8月22日、友達と遊びに出かけたまま自宅に戻らなかった小学校2年生の男児が、近所の川から遺体となって発見されました。しかし、この件に関わる人々の証言内容が次々と変わり、新たな「疑惑」まで浮上しています。そして、とても十分な捜査が行われたとは言えない状況の中、警察はこの件を「事故」として処理しようとしているというのです。果たして、真実はどこにあるのでしょうか。男児の遺族の要請を受けて現地に入った現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんは、自身のメルマガ『伝説の探偵』で、今回の調査によって掴んだ数々の「事実」を報告しています。
【続報あり】高知小2水難事故に「事件性」示す新事実。捜査を妨害する者の正体とは
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高知県南国市小2水難事件、調査ファイル~その1
2019年8月22日、高知県南国市の小学2年生、岡林優空(ひなた)君の行方が分からなくなり、父親が警察に通報した。その後、近くの下田川で遺体で発見された。警察の調べで、当時一緒に遊んでいたのは小学1年生から5年生までの4人であり、助けを求めず、その場から立ち去ったと話したということがわかった。
同年10月15日、遺族は警察に再捜査を求める署名を募り、7万6,000人を超える署名を集めて、高知東署に提出した。
一方、同年10月16日、高知新聞はこの事件を詳しく調べたとする県警幹部を取材したという形で大きめの記事を発表しているが、ここでは、事故であるとしつつも捜査は継続するという主旨で書かれていた。
私がこの事件を知ったのは9月ごろで、別のいじめ事件の関係者から一報を受けた。そこから注視していたが、遺族が極めて苦境に立たされていることは容易に想像がついた。調査についての要請があったのは10月に入ってからであり、各予定の調整をして10月17日、現地へ飛んだ。
8月22日、下田川捜索から遺体発見までの概略
8月22日の経緯は次の通りである。
優空君が自転車で遊びに出たのは、午後1時ごろであった。この地域では午後5時にサイレンが鳴って子供たちに帰宅を促すが、午後5時になっても帰ってこないことを心配した家族が、優空君を探しに出る。探しに出たのは5時36分頃であった。
午後7時26分頃、優空君の父親が近所の遊んでいたと思われる友人宅などに尋ね回る。しかし、誰も一緒には遊んでいないと話す。
午後7時半頃、警察に通報、捜索が始まる。
午後8時2分頃、優空君の父親が前述の友人宅の裏側およそ50メートルほどの場所で、優空君の自転車を発見する。
午後8時28分頃、警察官が優空君のサンダル(クロックス)と図鑑を下田川の堤防下、犬走り部分で発見する。
午後9時20分頃、消防に通報。下田川にて捜索が開始される。警察の調べで、当時小学1年生から5年生までの児童が一緒に遊んでいたことが判明、その中の小学4年生の児童から「優空君はひとりでラッコ泳ぎをして川に沈んだ、怖くなって帰った」との証言を得ている。
翌23日午後4時20分頃、下田川で優空君の遺体を発見した。
コロコロ変わる証言の変遷
現場となった下田川は生活排水が流れ込む川である。確かに、シジミをとるお爺さんらもいるが、汚水と言える生活排水が流れ込むこともあり、川は臭いがあり、緑色であった。
当然ながら水位の上下(干潮満潮)もあり、1日のうちに川の状態は変化する。
8月22日当日は、高知県の山側で雨が降っていたこともあり、水かさが増していた。優空君が亡くなったであろう時間帯は、小潮の干潮に差し掛かるあたりであるが、通常より水位は高かった。
子どもらの証言は二転三転しており、初めは遊んでいない、会ってもいないと証言していたが、その次は、下田川水門近くのブロックのところで遊んでいて、優空君が一人で泳ぎ出して流されたと証言している。当然、子どもらは川に入っていないと証言した。ところが、後に一部の子が濡れていたという事がわかると、証言が変わる。
当時一緒に遊んでいた子どもたちは、A君(小1)B君(小3)C君(小5)が兄弟であり、D君(小4)の4人であった。
その次の証言は、優空君を含めて川の浅いところで遊んでおり、C君が泳いだのを見て、優空君が勝手に図鑑を持ってラッコ泳ぎを始め、沈んだと証言した。この際、優空君は助けてと何度も叫んだという。それを見て怖くなって、助けも呼ばず逃げたということであった。
ところが、この2つの証言では川の流れに逆らって遺体が動いたことになり、不自然であった。
そこで、次は、優空君とC君が、川の深いところで遊んでいて、前証言と同様のような状態で優空君が沈んでしまったと証言を変えた。
ところが、優空君はお風呂の水に顔つけるのが精一杯のレベルであり、泳ぐことはできない。そこで、次の証言が出る。
優空君と唯一泳げるとされるC君が川の深いところで遊んでいて、優空君が首まで川に浸かる形になって、ピョンピョンと跳ね始めた。「助けて」と何度も言い、沈んでしまった。それをみて、怖くなり、助けも呼ばずに逃げてしまった。
私は優空君父や支援者の方と22日の当日に近い状態の下田川に入り、水位などを確認した。