探偵が事故現場の水位を確認してわかったこと
各証言から、鉄杭があって川に降りられる場所は1ヶ所しかなかった。この付近は、生活排水を管理する小さな水門の真横で、砂や砂利、貝殻の破片が散らばっている盛り上がった部分である。水位は30センチから90センチほど、優空君の身長は113センチメートルということから、この場から川におり、中心付近まで歩くことは可能であろう。また、この浅瀬はだいたい川の中心へ5メートル程度、横幅は2メートル程度の大きさで緩やかな盛り土のようになっており、徐々に深くなる形状であった。
この部分のみ川底は砂利などでしっかりしており、水圧を感じる程度で歩くことはできる。
ところが、その先に行くと、川底は泥状となり、大人でも足を取られる状態へと変化していく。捜索中の消防や警察官が足を取られ苦労をしたというのも納得できる状態となっている。
ただし、この辺りは水深が113センチ(優空君の身長)を超える。首の部分まで川に浸かっていると仮定すると、そのあたりの川底は砂利状であり、足場はしっかりしているのだ。
もしもへ泥状の川底に足が捕まったとすれば、完全に頭まで水の中に入らないと、当時の水位では、たどり着くことはできないし、小学2年生の子どもの力では、ヘドロから足を抜くことは不可能であろう。
さらに考察を進め、川などではよくある水流の変化や水温の変化により、足がつるなどの状況となってということも考えられるが、その場合、跳ねるようにすることはできない。
よって、ぴょんぴょんと跳ねるようにしてというのは、状況的に不可能であるのだ。
疑問点は多くあるが、各証言と遺品となったクロックス(サンダル)が犬走りにあったことから、この場では裸足で優空君が川に入ったことになるが、唯一川に降りられる川底は砂利状であり、開いたシジミの貝殻の破片などが点在しており、足の裏が切れてしまうのだ。
ここを裸足で歩くというのは、通常考えられないであろう。ましてや、この異臭のある川に入るというのは、尋常じゃないというのが私の感想だ。
優空君は泳げない
不審点はさらにある。優空君は泳げない。泳げない子が、少なからず腰以上の深さの場所に入るであろうか。この点は誰もが思う不審な部分であろう。
優空君らをよく知る人物からは、他の友人らが水深数センチほどの水辺でも、優空君は水には入らず、その近くで虫かごを持って友達らを眺めていたという証言もあった。
また、優空君が大事にしていた図鑑であるが、発見時、この図鑑はずっしりと重く感じたほど、びしょ濡れであったとのことだった。この図鑑は全面カラーであり、そのインクや紙の状態から、相当に水につけないとこのような状態にならない。
また、川の水位が上がって水につかったとすれば、当然にこの図鑑は流されてしまうであろう(通常、全面カラーなどでは水を弾く性質があり、浮いて流れる性質があろう)。
つまり、何度も変わった子どもたちの証言は、数日経ってからの告白のようにもなっているが、その全てが不自然であり、子どもだから証言が不安定という常識を超えている。