6月14日にNTTドコモの新社長に54歳という若さで就任した前田義晃氏。NTTドコモといえば携帯大手にあって唯一銀行を持たないことで知られますが、新社長はどのような展開を頭に描いているのでしょうか。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』ではケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが、前田氏へのインタビューを通して得た同社の銀行業参入に対する「温度感」を紹介しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:d払いがPayPay、楽天ペイに勝つためには―-顧客囲い込みだけじゃない銀行業の必要性
ドコモがPayPayに勝つには銀行が必要なワケ
先日、NTTドコモの新社長、前田義晃氏のインタビュー取材をしてきた。吉澤和弘社長時代まで、毎年、夏頃に様々なメディアからインタビューを数日間にわたって受け続けるという、修行のような期間がNTTドコモの社長には設けられていたのだが、井伊基之社長時代には一切、行われていなかった。それが前田社長なって即復活。先週から今週にかけて、各メディアにインタビュー記事が大量に掲載されている。
NTTドコモが金融事業を強化していくなかで、銀行業への参入を窺っているというのは、これまでの記者会見や今回のインタビューでも登場してきた話だ。
筆者もインタビューの中で前田社長に銀行業参入に対する「温度感」を確かめたかった。
実際、すでにNTTドコモは三菱UFJ銀行と組んでポイントサービスを実施している。また、このタイミングで銀行業を始めるのなら、JALが住信SBIネット銀行と組み、マイレージ会員向けに銀行サービスを提供しているように、BaaSという仕組みを使えば、手っ取り早くドコモユーザーに銀行サービスを始めることも不可能ではない。
そんななか、前田社長からはキャリアにとって銀行は単に「一般ユーザーのためだけというわけではない」という話が出てきた。
筆者は昨年、個人事業主から法人化をした際、いくつかの銀行で法人口座をつくろうとあれこれ調べた。そんななか、楽天銀行とPayPay銀行は口座が作りやすく、また振込手数料なども安く、かなり使い勝手が良さそうだった。
一方で、auじぶん銀行は法人口座を強化している感じがほとんどなく、むしろ法人を邪険に扱っている印象であった。
「楽天銀行やPayPay銀行はなんでこんなに法人に手厚いのか」と考えたとき、楽天とソフトバンクはネットショッピングやスマホ決済サービスなどで飲食店や通販事業者との付き合いが多く、決済などの売上金を受け取るための法人口座が需要が極めて高いというわけだ。
PayPayなどは、PayPay銀行に口座があれば、売上金の受け取りスピードが速く、手数料も安かったりする。楽天銀行やPayPay銀行は一般ユーザーだけでなく、法人も強いというのは、そうした関係性があるからだ。
NTTドコモも、これからさらに非通信分野での収益を上げていかなくてはならない。街中でd払いを使える店を増やしていくには、d払いの売上げをすぐに、手数料も安く振り込める、自前の銀行が必要不可欠というわけだ。
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