国内格安SIMのmineo(マイネオ)が、「iPhoneはスマホユーザーの会話を“盗聴”し、その属性や内容に応じて広告を表示しているのでは?」という疑惑に対する“禁断の実験”をおこなった結果をX(旧Twitter)にポストし、その内容について批判が殺到。ポストを削除したのちに謝罪する事態となっていたことが分かった。
一体、何が炎上の原因だったのだろうか? 本当に、そんな広告の出し方が公然とおこなわれているのだろうか? そこで、経済崩壊と食糧危機を警告する「千円札の謎」や自衛隊「怪ポスターの謎」を解明するために結成されたばかりの、MAG2NEWS特異現象捜査部は今回、この「スマホ“盗聴”都市伝説」を徹底解明してみたい。
広告の表示は「盗聴」が原因?マイネオ実証実験が物議
マイネオは18日、「スマホ企業はユーザーの会話を盗み聞きしている?」という都市伝説が本当かどうかを実証する実験として、独自の実験結果をXに連続でポスト。
「もしかしてiPhoneって私たちの会話を聞いてるんじゃないか?」と思ったことはありませんか? 検索もしていないのに、さっきまでしていた会話を聞いていたかのような広告が出てきてビックリしたなんてことはないでしょうか? 周りの人に聞いてみると「あるある!」という体験談がちらほら。
マイネオはX公式で問題提起し、以下のような実験を開始することを宣言。
というわけで「iPhoneは会話を聞いているのか?」という実験を実施! 3つのテーマを設定して、30分間iPhoneの前で友人と会話。そのあとにInstagramのストーリーズの広告を20件チェックし、どのような広告が出てくるか確認しました。 なんと「もしかして!?」という結果に!
と、上記のように、Instagramのストーリーズの広告を20件チェック。その会話のテーマとして、
- 子供に英会話を習わせたい
- 引越し業者を探している
- ホットサンドメーカーが欲しい
の3つを話したとしている。そして、
さらに、iPhoneに話を確実に聞かせるためにLINE通話で、先ほどのキーワードをテーマに30分会話してみました。
と、なぜかLINE通話で上記の会話をして実験したとしている。そしてマイネオは、
結果、なんと「子供の英語教育に関する広告」が出現!やっぱりiPhoneは話を聞いている…!?
と実験結果を結論づけていた。
この実験内容についてネットユーザーからは、
<iPhoneの実験と言いながら、なぜLINE通話で実験するんだ?>
<マイネオが聞いているように思えちゃうんだが>
<こんな雑な調査結果を公式で出していいの?>
<引越し業者とホットサンドメーカーはどこへ?>
<陰謀論にもほどがある!>
といった批判の声や疑問の声が殺到。
こうした意見を受けてマイネオは20日、「特定の企業やサービスを貶める意図はございませんので投稿を削除いたしました。お騒がせし、大変申し訳ございませんでした」と、一連の投稿を削除した上で謝罪するポストを投稿した。
一昨日に投稿した内容について、特定の企業やサービスを貶める意図はございませんので投稿を削除いたしました。
お騒がせし、大変申し訳ございませんでした。— mineo【公式】 (@mineojp) April 20, 2024
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スマホ企業の「盗聴」は世界の常識?
マイネオの騒動はさておき、この「実はスマホ企業がユーザーの会話内容を聞いて広告を出しているんじゃないか説」、実は単なる「陰謀論」とも言い切れない面があるのも事実だ。
なぜなら、顧客の行動履歴を元に顧客の興味関心を推測しターゲットを絞ってネット広告配信をおこなう「ターゲティング広告」は、今や一般的だからである。
過去には、AIアシスタントの「Siri」「アレクサ」「グーグルアシスタント」の盗聴問題が事件化。2019年に「Siri」は会話に人の名前や住所などが含まれれば個人を特定できてしまうと指摘されていた。
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米国系の大手テック企業によるこの手の「盗聴問題」は、発覚するたびに「意図しない不具合」などとしてウヤムヤに処理、修正されている。しかし、米国が意図的なバックドア(本来、IDやパスワードを使って使用権を確認する機能を無許可で利用する目的で、他人に知られることなくコンピュータ内に設けられた接続機能)を仕込んでいるのだとみる向きもある。
最近では、MLBドジャーズの大谷翔平選手が被害に遭った水原一平容疑者による不正送金問題の捜査に関連して、「米国は世界中のメールを記録に残している」との指摘もあり、この捜査能力の高さは、そのまま恐ろしさにも変わっている。
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これは、米国からロシアへと亡命したアメリカ国家安全保障局(NSA)および中央情報局(CIA)元局員のエドワード・スノーデン氏の主張とも重なるものがある。
スノーデン氏は、英紙ガーディアンにNSAの極秘ツールであるバウンドレス・インフォーマントの画面を示した上で、クラッパー国家情報長官が議会公聴会で否定した2013年3月に合衆国内で30億件/月、全世界で970億件/月のインターネットと電話回線の傍受が行なわれていたことを暴露していた。
同氏によれば、ネット傍受はクラッキングではなく、アプリケーションプログラミングインタフェースのような形のバックドアによるもので、コードネーム「PRISM(プリズム)」と名付けられた監視システムによって行なわれていたとしている。
伝説のハッカーである、ケビン・ミトニック氏も、自身の著書『伝説のハッカーが教える 超監視社会で身をまもる方法』などの中で、超監視社会で身を守ることがいかに困難であるかを指摘していることでも、それは顕著だ。
はたして、こうした監視の目から逃れる「対策」はあるのだろうか?
監視の目から逃れる“対策”は?
「このような監視に対抗しようというプロジェクトとして<PRISM Break>というものがあるんです」と話すのは、40代のネットメディア編集者だ。
「ソフトウェアの配布者が、利用者の持つ権利を制限的にすることで自身や利用者の利益およびセキュリティを保持しようとする、いわゆるプロプライエタリ製品は危険なので、オープンソースに乗り換えようという運動です。他にも、Windows、Mac、iPhone、一般的なAndroidスマホはすべて監視・盗聴対象なので危険とされており、OSはPCならLinux系OS、スマホならオープンソースのAndroid系OSが推奨されています。さらに、ボイスアシスタントの中にもオープンソースのものがあります」
同編集者によれば、Webメールに関しては、ドイツ拠点の「Tuta(Tutanota)」や、スイスに拠点を置く「Proton Mail」などが、GoogleのGmailに比べてプライバシー保護に優れているとされているという。
これらのMailサービスは良くできているようだが、問題もある。それは、LINEなどの一般的なアプリが使えなくなってしまうことだという。
「プライバシー保護を最優先してしまうと、飲み会で女子とのLINE交換すら不可能になってしまうのが難点ですね(笑)」(同前)
たしかに、それはかなりの痛手ではある。
今どきの女子に「テレグラムやってる? Signalやってる? Sessionやってる?」と聞いても、可愛い女子がこれらをやっている確率はほぼ0%だろう。
「それぞれ優れたツールですが、日本では麻薬売買など良からぬ用途に使う人間が多いんです。以前、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で、お笑いコンビのザ・マミィの酒井さんが、連絡にテレグラムを使っていることを告白しましたが、スタジオが変な空気になっていました(笑)。それくらい、業界では怪しいツールと思われているということですよね。若い女性と遊ぶことはあきらめた方がいいのかもしれません」 (同前)
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同編集者の情報を参考にしたとしても、これらのツールや対策では、現実問題として監視の目を逃れるのは不可能ということだろう。それでも徹底したいのであれば、あなたのスマホは、勤務先から時間外に緊急のメール連絡が飛んでくるだけの「拷問ツール」になってしまうが、それでも良いのだろうか?