台湾が朝鮮戦争に“派兵”。国民党軍から選抜された心理作戦要員はどんな役割を果たしたか

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1950年に勃発した朝鮮戦争で、中朝連合軍と戦った国連軍に「参戦していない」とされる台湾。しかしそれはあくまで表向きの話であり、特殊な任務を帯びた要員が派遣されていたというのが真実のようです。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では宮塚コリア研究所代表の宮塚利雄さんが、台湾国民党軍の特殊任務部隊員が朝鮮戦争で果たした役割を報じる記事を紹介。韓国の国防省軍史編纂研究所責任研究員を努めた男性の興味深い「秘話」を伝えています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:朝鮮戦争時に台湾が心理・情報工作──中国参戦で台湾の国民党などが参戦

※本記事は有料メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』2024年7月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

朝鮮戦争時に台湾が心理・情報工作──中国参戦で台湾の国民党などが参戦

朝鮮半島上空を乱舞する“風船ビラ”についていろいろ資料を収集しているが、私が本稿に今度そのことを書くことになったと知人に話したら、韓国の『月刊朝鮮』(7月号)に、「台湾が朝鮮戦争の時に韓国に派兵した」という記事が出ているが知っているか、と言ってきた。彼によると、記事は「台湾軍が心理・情報工作」を担当し、「大量のビラや写真を散布する活動を行った」というのである。

同誌にこの秘話を寄稿したのは徐相文・前韓国国防省軍史編纂研究所責任研究員で、6月25日の朝鮮戦争勃発から74年を迎えたことに合わせて寄せたものと言う。朝鮮戦争時に国連軍に参加したのは、14ヶ国の軍で台湾(国民党)軍は入っていない。

私は朝鮮戦争時に台湾に黒蝙蝠中隊なる組織が、アメリカ中央情報局によって開戦2年後の52年に台北に「西方公司」の全面支援で設立されたことを、いつも引用していた『台湾へ行こう』(藤田賀久 えにし書房)の「黒蝙蝠中隊文物陳館──台湾海峡を越えて大陸上空に侵入した極秘偵察部隊」で知った。この部隊の目的は、「国軍を支援し、台湾海峡の緊張を高めることにあった。緊張が高まると、中国は台湾海峡に気を取られ、朝鮮戦争に専念できなくなる。こうして中国の朝鮮支援をけん制することを狙った」ものであった。

一方、国共内戦で敗れ台湾に逃れていた蒋介石は、朝鮮戦争の勃発の報に触れると、国民党軍の朝鮮半島派兵を申し入れた。それは韓国軍と一緒に戦って鴨緑江や豆満江を越えて北上し、中国東北地方に共産党軍に反撃する拠点を作るのが狙いだったという。ところが、中国の参戦を誘発する可能性があるとして米英が反対。韓国の李承晩大統領も米軍の支援が手薄になるのを恐れて反対した。それでも蒋介石は諦めず、韓国内の国民党組織を拡大する一方、派兵支持を取り付けるため米有力紙に派兵計画を公表した。

台湾の朝鮮戦争参入は思わぬ転機によるものだった。戦争が開始して5ヶ月後の50年10月に中国が参戦してきたことにあった。前月に仁川上陸作戦で加勢した米国を中心とする国連軍と韓国軍にとって中国共産党軍(人民義勇軍)という新たな敵に対する情報収集や各種心理戦が急務となり台湾国民党軍の協力が不可欠となったのである。米軍は翌月、駐韓台湾大使館に対中心理戦の協力を要請した。これを受けた同大使館は陸上と上空からの拡声器を使った宣伝放送、ビラや写真の散布、中国共産党軍が寝返るための宣伝などを提案し、米軍は既に実施していた自分たち独自の心理戦を支援するよう台湾側に要請したのである。

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