米中首脳会談は“失敗”、中ロ両首脳会談は“現状維持を容認”。着実に進む「強欲に導かれる世界秩序」の構築

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「話し合いによる外交」が形骸化し、「力による現状変更」がまかり通る昨今の世界情勢。軍人のみならず無辜の市民の生命までをも奪う戦争は、どのような「論理」で引き起こされてしまうのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、国際紛争の背景にある「もっともっと」という欲の構造と、世界秩序が抱える危うさについて解説。その上で、顕在化する弱肉強食の世界で我々がどう生き続けていくべきかを考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:“もっともっと”という欲のぶつかり合いが世界を壊す──戦争の“本当の”原因

戦争の「本当の理由」とは何か。世界を壊す“もっともっと”という欲のぶつかり合い

「国際政治の本質は依然として陣取りゲームであり、例えてみればオセロゲームのようなものだ。そうであるなら、中東はオセロ盤の四隅にあたる地域である。そこを押さえれば、ゲーム全体を圧倒的に優勢に進めることができるため、誰もがそこを取りたがる」

これは『アメリカの中東政策とは何か?:石油、戦争、同盟』を書かれた溝渕正季氏による描写です。

ちょうど今週、ご著書を読んだのですが、巻末に記されたこの描写に出会い、「ああ、なるほど。全くその通りだ」と腑に落ちました。

これまでこのコラムでも“戦争はなぜ起こるのか?”について触れ、私なりの考えをお話ししてきました。

戦争の理由として、最もよく挙げられる理由は、宗教間の争いだったり、民族の違いだったり、そして政治体制・思想の違いだったりしますが、それらのほとんどは事後につけられた理由で、実際には個人や組織、国家が抱く「もっと、もっと、もっと」の欲の表現が戦争を引き起こしています。

「隣の芝生は青く見える」とよく言うように、隣国や競合他社などは自分が持たないものを持っていて、それが非常に輝かしく見え、それを手に入れるために戦いを引き起こすという流れになりますが、それに加えて現状に満足せず、もっと手に入れたいという欲が爆発する結果とも描けます。

その欲は、物欲や財産欲かもしれませんし、支配欲かもしれませんし、自己顕示欲かもしれませんが、誰かとシェアできる資源は限られており、自身の保有を増やすには、新しい何かを見つけ出して資源を作り出すか、誰かから奪わなくてはなりません。

これは、これまで数多くの紛争の調停に携わり、いろいろ経験してきた中で私が辿り着いた一つの答えです。

紛争や戦争、もめ事の現場には、確かに宗教や民族の違いによる衝突やテンションは存在し、それらが争いの火に油を注ぎ、どんどんエスカレーションしていくケースは多々あります。

いくつか例を挙げて説明いたします。

私が直接関わったケースではありませんが、かつてルワンダで起こった内戦とジェノサイドは、一般的にはツチ族とフツ族の争いと描かれます。

しかし、実際には、これは植民地時代の支配層と被支配層の固定化と、それに伴う民族対立の政治的な悪用です。

旧宗主国だったドイツやベルギーが、植民地における統治を効率化するためにツチ族を優遇する体制を組み込んで、元々フラットだった(上下関係が存在せず、平等だった)社会構造を潰し、その後、1962年の“ルワンダの独立”を機に、これまでの方針を覆して、人口の多数派であるフツ族による政権樹立を後押しして、完全なる対立構造を作ったことが、ツチ族とフツ族の間に拭いきることができない対立と憎しみを生み出し、それがジェノサイドに繋がったと考えています。

その後、ツチ族とフツ族が相互に虐殺を繰り返して100万人以上が犠牲になった内戦が90年代に起こりましたが、その争いの火はルワンダだけに留まらず、隣国コンゴ民主共和国にも飛び火し、地域戦争を引き起こしています。

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