新たな紛争の種を生んでいるトランプの資源に対する欲
その後、ルワンダはカガメ大統領の下、“最も安定し、発展したアフリカの国”という地位に就きましたが、かつて作り上げられた対立構造は消え去ることは無く、それが昨年にトランプ大統領の仲介によって“停戦”“和解”した国境紛争に繋がっています。
この背景にあるのは、意図的に作られた差別的な扱いと“奪われた権利や財産を取り戻す”という強い願い、そして“既得権益を失いたくない”という損失回避の心理のぶつかり合いですが、これを言い換えると“領土欲”や“支配欲”、財産権の拡大などの欲のぶつかり合いが戦争の元凶になっていると言うことが出来ます。
そして今、トランプ大統領のアメリカ合衆国が抱く資源に対する欲(レアアースの獲得欲)が停戦と和平の実施を阻害し、ルワンダとコンゴ民主共和国の間での主導権争いを誘発し、新たな紛争の種を生んでいます。
ここで本来ならば旧ユーゴスラビアの崩壊と凄惨な戦争についてもお話ししたいところなのですが、諸々の制約があることと、恐らくかなりいろいろな思いが溢れ出てしまいそうなので詳しくはお話ししないでおこうと思います。
ただ、よく民族浄化の典型例として挙げられていますが、深く関わることになった身として言えることは、スラブ系のセルビア人(ロシア正教)とクロアチア人(カトリック)、そしてアルバニア系(ムスリム)の間の凄惨な殺戮は、結果として民族間および宗教間での“今も解決できていない”軋轢と心の壁を生み出しましたが、元々はチトー大統領が後継者を指名しないまま亡くなり、その後、後継者争いが激化した中で、最も“上手に”権力を掌握したのが、セルビア共和国のSlobodan Milosevic大統領で、そこに旧ユーゴスラビア共和国内で常に存在したクロアチア系とセルビア系の主導権争いによるテンションが化学反応を起こして、血で血を洗う戦いに発展し、そこに人口増加に伴って勢力を拡大していたアルバニア系ムスリムのグループとの三つ巴の戦いに発展したのがこの戦争であると理解しています。
その後のコソボ紛争も、長年のセルビア系(少数派)とアルバニア系(多数派)の間での戦いと捉えることが出来ますが、これは宗教・民族戦争ではなく、大多数のアルバニア系を少数派のセルビア系が支配し、アルバニア系の権利を認めていなかったことに対する怒りの爆発と捉えることができます。
コソボ紛争の調停に関わった際、多くのアルバニア系から「旧ユーゴスラビアの崩壊と、ボスニアヘルツェゴビナでの戦いが無ければ、コソボで蜂起することはできなかった」と言われました。
あえて単純化すると、これもまた統治権・支配を得たいという“欲”が土台にあり、その後、戦い・闘争を修飾するために民族や宗教的なバックグラウンドが加えられ、そして「800年にわたる土地の所有権問題」が持ち出されたことが分かるかと思います。
今、reconciliation (和解)のプロセスを様々なトラックを通じて行っていますが、まだまだセルビア系とアルバニア系の間での“主導権争い”を巡るぶつかり合いとテンションは解けていないと感じています。
では現在進行形の3つの大戦争(ロシア・ウクライナ戦争、ガザおよびヨルダン川西岸地区を巡るイスラエルとパレスチナの戦争+レバノン・シリア、そしてイラン情勢)とそれらに関連する国際社会における分裂の深まりはどうでしょうか?
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