ホルムズ海峡の封鎖が顕在化させたアラブ諸国の分裂
イランとしては、アメリカとイスラエルによる一方的な不条理に屈しない姿勢を示すためにホルムズ海峡の封鎖という禁じ手を繰り出し、イランのプレゼンスを高めているわけで、自己顕示欲は満たされているかもしれませんが、世界は大きなショックに見舞われ、それが世界経済の流れに止めを刺す恐れが出てきています。
アメリカもそれに気づいているため、Operation Freedomと名付けてアメリカ艦隊によるタンカー救出作戦が継続していますが、いろいろな点から見ても、これは不発と言え、反対にイランの革命防衛隊による封鎖が機能し続けていることを印象付け、それが湾岸諸国の減産が不可避な状況を作り出し、親米の湾岸諸国の収益を大幅に減少させるというとてもネガティブな状況を作り出しています。
これによりイランに対する態度を巡り、アラブ諸国が分裂する状況が顕在化しています。自国の施設が相次ぐ攻撃に晒され、実質的に生産能力を大幅に失い、おまけに“油詰まり”(原油を輸出できない状況が継続することで生産済みの原油の行き場がなくなり、それが減産を強要する事態)により大幅な減収を続けていることから、UAEはイランと真っ向から対立し、何とイスラエルと米国に接近して、反イランキャンペーンを実施しています。
それはイランからの攻撃対象であり続ける可能性が高まるという事態を受け入れるという決定と理解できますが、その背後には“イランは許さない”という思いの他に、イスラエルとの経済的な関係強化がUAEにもたらす利益の確保(もしかしたら独占)という欲が見え隠れし、圧倒的なアメリカとイスラエルの軍事力を後ろ盾にして、あわよくばアラブ圏の主導権をサウジアラビアから奪い取ろうという欲も見えてきます。
UAEとは違い、サウジアラビアをはじめとするスンニ派諸国は、イランとの対立の継続が自国にとっての利益とはならないという認識の下、危機の封じ込めを優先し、まずは状況を鎮静化して一刻も早いbusiness as usualの回復を狙う動きに出ています。
これらの国々は、ほぼ例外なく、イランからの攻撃に晒されていますが、サウジアラビア政府が危機回避のために模索しているものとして、イランとの不可侵協定構想があり、仮にイスラエルとイランの戦争が続いた場合にも、この協定を元に、イランによる自国への攻撃を封じ込めるという“安全策”に出たものと考えられます。
この方向性には、すでにトルコやカタール、エジプトなどが追随の意向を示していますが、イランからの出方とアラブの友好国の意向によっては、すでにパキスタンと締結済みの相互防衛協定にイランを含めるか、もしくはイランと同様の協定を締結することも視野に交渉を進める意向という情報も入ってきております。
それぞれの国々の“欲”や意向が入り混じっているのが、現在の危機的な国際情勢の真の姿と言えますが、ホルムズ海峡の封鎖によって引き起こされている地政学的なストレステストを通じて、私たちは「いかに一つのチョークポイントに依存しているか」という深刻な脆弱性を浮き彫りにし、対策を誤れば、各国間の緊張が高まり、そのまま不必要な戦争に発展する可能性が高まる危険性を指し示しているように見えます。
この危機的な状況はいったい誰の“欲”を満たすものなのでしょうか?棚から牡丹餅・漁夫の利を得る“湾岸諸国以外の産油国”や、たまたまホルムズ海峡でタンカーが足止めされていない海運会社でしょうか?それとも、湾岸諸国のオイルを必要としないアメリカでしょうか?
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