国際秩序の「揺らぎ」が状態化しつつある昨今の世界情勢。力による外交がまかり通り、従来の国際協調の枠組みが機能不全に陥りつつあるのが現状です。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、トランプ政権の対外政策を論考の中心として、「秩序が存在しない世界」とも言える現在の国際情勢を分析。さらに大国間の力学や分断の進行がもたらすリスクと、模索されるべき国際関係のあり方について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:世界秩序が存在しない世界-力による外交・安全保障が作り出す暗中模索の国際情勢
大国の「力任せ」が翻弄。秩序なき世界の只中にある国際情勢
「トランプ大統領は結局自分と交渉しているに過ぎない」
米イラン間の停戦合意やホルムズ海峡の開放などを巡る交渉。ロシア・ウクライナ戦争の仲介。ガザ停戦協議の条件交渉と終戦後の復興プランについての協議。トランプ関税の引き上げを巡る発言、ベネズエラへの攻撃と石油市場の支配を目論む姿、キューバに魔の手を伸ばそうとする気まぐれ…。
例を挙げればキリがないように思いますが、多くの国際問題に対するトランプ大統領と政権の対応を見ていると、二つの特徴が見えてきます。
それは【毎日発言内容が変わり、毎日気が変わること】と【自分の意見に酔いしれ、交渉相手の話や要望、懸念などには全く関心がないこと】です。
彼のそのような姿勢や方針を、周りは揶揄してTACO(Trump Always Chickens Out)と表現しますが、TACOは必ずしも悪いことばかりではありません。
現在進行形の米イラン間の和平・停戦協議やホルムズ海峡の支配を巡る駆け引き、イランの濃縮ウランの扱いと核開発の可否を巡るやり取りなど、国際情勢における最悪の事態を防ぐために合意されなくてはならないことが山積みですが、トランプ大統領がちらつかせる“破壊(一つの文明が終わるという脅し)”は、期限が迫るごとに延長され、究極の破壊と引き返すことが叶わないpoint of no returnを越える事態を、すれすれのラインで回避しています(とはいえ、複数の情報によると、トランプ大統領がイランに対する核兵器の使用の可能性を匂わせたため、統合参謀本部議長が大統領から核のボタンを取り上げたというような噂が出ていますが、その真偽のほどは確認できていません。ただ、個人的な感想になりますが、強ち嘘とも言い切れないような気がしてなりません)。
「解放の日」と呼んだホワイトハウス・ローズガーデンでの相互関税措置の発表以降、EU諸国や英国、日本などの同盟国を含む各国に対して脅しをかけ、MAGAを実現すべく、米国内への投資を呼び込み、国内の製造業を復活させようと目論んでいますが、今年2月の米連邦最高裁の違憲判断に続き、世論調査(米ABCニュース)で高関税への国民の不支持率が64%に達したことが伝えられると、11月の議会中間選挙への影響を懸念してか、ここでもまたTACOが発動され、“貿易戦争の勝利”を宣言して、関税ショックの矛を収めたことで、今のところ、国際経済へのショックの度合いは、予想よりも控えられているように見えます。
経済的なショックで要れば、2月末の対イラン戦争勃発威光発生しているホルムズ海峡閉鎖の影響の方が、国際経済に深刻な損失を強いています。
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ






