トランプが“最強の軍隊”で破壊する国際秩序。それでも世界の分断修復に「米国の力が不可欠」という皮肉

 

イランに与えてしまった軍事核保有の「絶好の口実」

とはいえ、非常に精巧な弾道ミサイル技術を持ち、実際に弾頭に核を搭載できる超精密型の弾道ミサイルを開発して保有し、今回もイスラエルに対する反撃に投入していることから、「イランが核開発に勤しんでいるのではないか」という嫌疑が生まれるのは致し方ないこととは考えます。

しかし、イランを核保有国にしない、その一線を越えさせないための恐らく唯一かつ最後のストッパー・箍(たが)として機能してきたハメネイ師を殺害し、そして米・イスラエル共同でイランに対する徹底的な攻撃を続けることで、今ではイラン国内の強硬派(革命防衛隊など)に核爆弾を持つ、または製造する絶好の口実を与えてしまったのではないかと非常に懸念しています。

“イランの核を阻止する”

この目標は果たして達成されたでしょうか?非常に疑問です(もしかしたら、イスラエルは自らがイランを徹底的に破壊することを正当化するために、イランに核兵器を持たようとしているのかもしれないと、勘繰ってしまいたくなりますが、どうでしょうか?)。

そしてイラン情勢で大きな懸案事項になっている“ホルムズ海峡の閉鎖”ですが、
トランプ大統領は「世界のために、海峡を開放すべく米国は努力している」と自らの行動を事あるごとに称賛していますが、「そもそも一体誰がイランにホルムズ海峡を閉ざさせ、結果として世界の石油価格を高騰させたのか?」という大きな問いと惨状を、あえて無視しているのか?それとも忘れているのか?または…。

その真意は分からないものの、その問いにはこれまでのところ、全く答えていないように見えます。

ベネズエラ侵攻の際に掲げた「世界の原油市場の解放」という目的は、自らのイラン攻撃によって打ち消されるどころか、さらなる価格高騰を招き、かつ石油関連製品の供給ストップという、致命的な状況を生み出し、世界経済に大きなショックを与えています。

米国は産油国であるため、中東産のオイルへの直接的な依存はほぼないとはいえ、米国内のガソリン価格は急騰し、今では国民生活に負の影響を与え、それが米国内での反対に拍車をかけ、ついには自らの支持基盤であるMAGA派(米国第一主義に共鳴する国内の支持派)からも、イラン戦争への反対の声が日に日に高まってきている始末です。

アメリカ国内で起きている混乱について何か物言うつもりはありませんが、後先考えずその場の思い付きで世界最強の軍事力を盾に行動し、同盟国を含む世界のすべての国々に損害と懸念を与え、ついには国際協調体制(戦後体制)の終焉に止めを刺してしまう事態を招いてしまいました。

結果、世界の分断は加速し、法の秩序や国際法の遵守というルールは完全に退潮し、世界大戦と人道危機を食い止めるための国際枠組みは崩壊し、至る所で力による支配が現在化しようとしているように感じます。

以前、触れたように、ロシアはウクライナに侵攻し、アメリカは(イスラエルの口車に乗せられて)イランに侵攻し、力による現状変更と国家的なエゴを追求する動きに出ていますが、ロシアはウクライナの、アメリカとイスラエルはイランの、強力な抵抗の前に消耗しています。

中国は米ロの“失敗”を眺めつつ、慎重に分析を重ね、習近平国家主席が掲げる【大中華の再統一】という宿願実現には欠かせない台湾の併合をどのように実現すべきかの策を練っているのではないかと考えます。

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