警察庁の発表によれば、2025年の相談件数が9万8,000件以上にも及んだというDV。このような行為を「加える側」は、いかなる心理を持ち合わせているのでしょうか。今回のメルマガ『小林よしのりライジング』では漫画家の小林よしのりさんが、DV加害者に共通する思考パターンと男尊女卑の価値観の一致に着目しつつ、「男系固執」との連続性を考察。さらに彼らこそが「皇室の破綻」を招くとの厳しい批判を展開しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ゴーマニズム宣言・第597回「DV=男尊女卑=男系固執」
すべてが同一線上に。「DV=男尊女卑=男系固執」である訳
わしは「さす九」などと揶揄されるほど男尊女卑の風習が強い九州に生まれ育ち、今でも家事といえばカップ麺しか作れない。
だが、女性を暴力で従わせようとする男は昔から大嫌いで、母によく手を挙げていた父を、身体を張って止めたこともあった。
そういうわしだから「DV男」なんてものは虫唾が走るほど嫌いで、そんな奴が皇室について語るなんて論外だと即座に思う。
そもそも「DV」という言葉がいけない。「DV」なんてアルファベットの略語で言われても、「AV」や「PV」や「DVD」とどう違うんだ?と思ってしまう。これは「いじめ」と同じで、加害の悪質さを矮小化してしまう用語だ。
かといって、略さずにドメスティック・バイオレンス、訳して「家庭内暴力」と言っても正確さに欠く。暴力とはいえ「家庭内」のことなんだから、あくまでも内輪の問題で、当事者以外が関わるものではないというイメージになってしまう。
他に流通している言葉がないので、ここでもやむなく「DV」とするが、本来はこんな言葉で表してはいけない、重大で深刻な虐待行為なのだということを前提とした上で読んでもらいたい。
まず重要なのは、「DV加害者が自然に更生することはほぼない」という事実だ。
DVについては心理学・犯罪学・社会福祉の分野で多くの研究があるが、第三者の介入がなければ約40~約60%が再び暴力を振るうとされ、再発率は非常に高い。
これは、DVが単に「怒りを抑えられない」といった感情の問題ではないからである。
DV加害者の人格の根底には、女性を劣ったものとみなし、所有物のように支配するのが当然だとする思考パターンがある。このような人格を形成している思考パターンが、何もせずに自然に変わることなどないのだ。
DV加害者はその思考パターンを自明の理として、ほとんど無意識レベルにまで染み込ませているから、いくら暴力を振るって相手が傷ついても、当たり前のことをしただけだとしか思わない。「自分は悪くない」と信じて疑わず、「相手の態度が悪かった」「普通の夫婦喧嘩だ」などと、原因を相手に押し付けるのだ。
また、暴力を「しつけ」や「正当な行為」と捉える傾向もある。「間違いを正しただけ」とか「あくまでも相手のためを思ってしたことだ」とか言って、自分が振るった暴力を問題行為とは決して認識しないのである。
繰り返すが、このように固定した思考パターンが、自然に変化することはない。DVは「家庭内」の問題だから他人が関わるべきではないという認識は正反対で、第三者の介入が必要不可欠なのである。
今では「DV加害者更生プログラム」が世界的に確立している。だがこれが機能するためには、加害者本人が暴力は「相手が悪い」のではなく、自分の責任だと認めた上で、最低6カ月から1年以上は続く更生プログラムに、脱落することなく参加し続けなければならない。
このハードルがとんでもなく高く、更生プログラムは「再発率を10~20%下げる可能性」という評価に留まっている。効果はあるものの限定的で、劇的に改善することはないのだ。
DV加害者の更生には、アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症の治療と同様の、気の遠くなるほど長期に及ぶ、根気の要る取り組みが必要となる。
この記事の著者・小林よしのりさんのメルマガ






