イラン戦争に伴うホルムズ海峡の閉鎖で、深刻な影響に晒されている国際社会。そんな中にあって日本メディアはしきりに「中国の苦境」を伝えていますが、はたしてそれは真実なのでしょうか。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』ではジャーナリストの富坂聰さんが、かような報道と現実のズレを2つの観点から検証。その上で、中国を取り巻く国際環境の変化と各国の動きを詳しく紹介しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:イラン戦争の裏で、外交、台湾海峡問題で静かに点数を稼ぐ中国の思惑
日本メディアの「読み違い」か?イラン戦争の裏で、外交、台湾海峡問題で静かに点数を稼ぐ中国の思惑
アメリカとイスラエルがイラン攻撃に踏み切って以降、ホルムズ海峡が事実上封鎖され、世界のサプライチェーンに深刻な影響が及んでいる。
なかでも話題は、ホルムズ海峡を通るエネルギー・物資に大きく依存するアジアへのダメージだ。
最も強い逆風にさらされているのが台湾だろうことは想像に難くない。日本や韓国も同じように先行きが懸念されている。
そうした中、なぜか日本のメディアでは中国が被る打撃に焦点を当てた報道が目立つのだ。
その中身は大別して二つある。一つは友好国・イランの窮地を同じく中国の窮地としてとらえようとする国際政治の視点からの見方だ。もう一つは、イラン産原油の90%以上を中国が輸入していることをとらえ「中国経済への深刻なダメージが及ぶ」との憶測記事だ。
だが現状を見る限り、中国がどちらの視点からも「慌てふためいている」様子は伝わってこない。やせ我慢しているということでもなさそうだ。
いったいなぜなのだろうか。順番に見てゆくことにしよう。
まずは、国際政治の視点から。アメリカとイスラエルのイラン攻撃で国際秩序の崩壊が話題になる中、中国を取り巻く環境はむしろ中国有利に変化しているからだ。注目される動きは主に二つだ。
いずれもミドル・パワーと呼ばれる国々の動向だ。特に欧州を中心にホルムズ海峡問題に対し「アメリカ抜き」で向き合おうとする動きだ。中心はイギリスのキア・スターマー首相やフランスのエマニュエル・マクロン大統領だ。米外交誌『ザ・ディプロマット』はこれを「ヘッジング同盟」と報じている。
そしてもう一つは米誌『フォーブス』が「中国ピボット」と呼んだ、ミドル・パワーの国々の北京詣でとも言うべき現象だ。
北京詣での最初の流れは2025年末から翌年初めにかけて見られた。
具体的には、昨年末に韓国の李在明大統領とフランスのマクロン大統領が訪中。年が明けると1月にカナダのカーニー首相、フィンランドのペッテリ・オルポ首相、そして英国のスターマー首相が北京を訪れ、2月末になると今度はドイツのフリードリヒ・メルツ首相が、首相として初の訪中を果たすという動きだ。
2月の末には周知のようにアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃が始まり、ホルムズ海峡の封鎖をめぐり世界が固唾を飲んで戦局を見守っていた。
そうした中「中国ピボット」と呼ぶべき2回目の流れが4月に起きる。アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国のハーリド・ビン・ムハンマド・ビン・ザーイド皇太子、スペインのペドロ・サンチェス首相、ロシアのラブロフ外相、ベトナムのトー・ラム国家主席(ベトナム共産党中央委員会書記長)がそれぞれ北京を訪れたのである。
一連の会談で習近平国家主席は、「世界が『ジャングルの掟』に逆戻りすることに旗幟鮮明に反対する」と語り、アメリカの動きをけん制した。
イラン攻撃をめぐり米中が対峙する中、かつてならスペインもUAEも中国とあえて距離を詰めるような外交をすることはなかったはずだ。それだけ世界の景色が変わっていることを意識させた。
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