なぜ逃げられない?「支配型DV」と男尊女卑が生む支配の実態
だがそれでも、露骨に殴る蹴るしてケガを負わせるようなケースは、問題が顕在化しやすいだけまだマシかもしれない。
実際には、表沙汰になりにくい「支配型DV」というものも存在する。
支配型DVとは身体的暴力だけでなく、日常生活のあらゆる面を支配・管理することで相手の心理を操作し、従わせる行動パターンである。
具体的には、相手の行動や交友関係を監視する、外出や仕事を制限する、金銭を管理する、携帯・SNSをチェックする、家族や友人との関係を断たせる、といったことを威圧や脅しを交えて続けていく。
そうして被害者は次第に自由な行動ができなくなり、自己判断能力を喪失する状態に追い込まれてしまうのである。
支配型DVでは、加害者は身体暴力よりも心理的操作を巧みに駆使する。
例えば、何かにつけて「そんなこと言ってない」「お前の記憶違いだ」「考え過ぎだ」などと相手の言うことを否定し、「お前の認識がおかしい」と思わせる。これを繰り返すことで、被害者は自分の判断に自信を失っていく。
また、暴力を振るった後で「お前が怒らせた」「普通にしていれば怒らない」などと責任転嫁する。その結果、被害者は「自分が悪いのではないか」と感じるようになる。
さらには、暴力を振るっておいて、その後で急に優しくなったり、謝罪したり、愛情表現をする。これを繰り返すことで被害者は「本当は良い人なのでは」と感じてしまい、どんなに酷いことをされても離れられなくなる。
そしてトドメとして、加害者は「あの友達はお前に悪影響だ」とか「家族はお前を理解していない」とか言って、被害者を他の人間関係から切り離し、孤立化させてしまう。こうなると被害者には支援の手も届かず、自ら助けを求めることも難しくなる。これでDV支配の完成である。
もし仮に、一度DVで警察沙汰になったのに離婚もせず、その後は問題も聞かれずに長年経過しているケースがあっても、加害者が更生したと見るのは早計だ。実際には巧妙に支配型DVへ移行し、DVが水面下に潜っただけという場合の方が遥かに多いはずだ。
このような、おぞましいとしか言いようのないDV行為の基盤にあるのが「男尊女卑」というわけだ。
改めてまとめておくが、「男尊女卑」とは、「男性の方が女性より本質的に優れている、または上位である」という価値観だ。
男尊女卑の男は、「男より優れた女」や「女より劣った男」がいることを決して認めず、「女性は感情的でリーダーには向かない」などと決めつける。
女性個人の知性・能力には目もくれず、ただ「可愛いかどうか」にしか関心がない。
そのため会議や議論でも女性の発言は軽視するが、同じ意見を男性が言うと評価する。また、女性の専門性は過小評価する。
それで女性が成功したら敵意や不快感を持ち、女性上司を認めなかったり、女性が昇進したら「特別扱いだ」と反発したりする。
あるいは女性が社会に進出すること自体を不当だとして、「男は外で働くもの、女は家庭を守るもの」と性別で役割を決めつけ、家事・育児の責任を全て女性に押し付ける。
しかも男尊女卑の男は「女性はこうあるべき」という観念が強いから、恋愛関係になると服装や交友関係を細かく管理するなど、支配的な態度を露わにすることがある。
それでいて、男尊女卑の男は「自分は差別していない」と強く主張する特徴もある。「女性を守っているだけ」「女性のためを思って言っている」などと説明し、差別だという認識すらしていないことも多い。
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