「パワハラが原因」か「強い心理的負荷」か?東京ガス社員自殺を巡る判決報道“食い違い”の違和感

Jakarta,-,February,29,2024:,Tokyo,Gas,Co.,Ltd.,Tokyo,Gasu
 

同じ事件を扱っているにもかかわらず、メディアにより記され方が大きく異なることも少なくない裁判を巡る報道。その「表現の違い」が読み手の印象を大きく左右するのは言うまでもない事実です。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、「東京ガス社員自殺事件」の判決を取り上げ、各メディアの見出しや内容の差異を検証。その上でパワハラの定義について考察するとともに、森友問題で自ら命を絶った財務省局員をきっこさん自身が「パワハラ殺人の被害者」と断定せざるを得ない理由を記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:パワハラという殺人

森友問題が何よりの証拠。パワハラという殺人

いいかげんドナルド・トランプや高市早苗の話題にも疲れて来たので、今回は久しぶりに政治から離れて国内の社会ニュースを取り上げようと思います。

で、4月13日付でネット配信された新聞各紙の国内の社会ニュースの見出しだけをさらってみたところ、あたしは1つのニュースに目が止まりました。それはニュースそのものが気になったのではなく、2つの媒体が正反対に報じていたからです。それは次のニュースです。

東京ガス子会社に出向していた男性社員の自殺を巡り、男性の両親が労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の判決が13日、東京地裁であった。地裁は自殺と業務の因果関係を認め、遺族補償を不支給とした労基署の処分を取り消した。

2017年3月、東京大学を卒業した男性は、翌4月、新卒で東京ガスに入社しました。そして、1年後の2018年4月、子会社の「東京ガスエンジニアリングソリューションズ」への出向を命じられて財務グループに配属しました。すると、男性(当時24歳)は、その後「うつ病」を発症し、4カ月後の同年8月に自殺してしまったのです。

男性の遺書には「毎日怒られてばかり」「もう限界」などと書かれていました。そのため、男性のご両親は「息子のうつ病と自殺は仕事が原因」として労災保険法に基づき、三田労働基準監督署に「遺族補償給付」を請求したのです。しかし、三田労基署は「業務との関連性はない」として「労災」とは認めず、不支給処分としたのです。

どうしてもこの処分に納得が行かなかったご両親が「労基署の処分取り消し」を求めて、2024年、東京地裁に提訴した…という流れで、提訴から2年後の今回、その判決が出た…というニュースです。判決は先ほどの記事の概要の通り、ご両親の訴えが認められて労基署の「不支給」という処分が取り消されたわけですが、大切な息子さんを失ってから、ここまでに8年間、本当に長い道のりだったと思います。

で、今回のあたしの疑問ですが、このニュースを報じた時事通信社の記事は「東京ガス社員の自殺は『労災』 出向先上司のパワハラ原因―東京地裁」という見出しで、記事にも次のように書かれていました。

子会社に出向していた東京ガスの男性社員=当時(24)=が自殺したのは、繁忙部署への異動や上司のパワハラが原因だとして、両親が国に遺族補償給付の不支給決定取り消しを求めた訴訟の判決が13日、東京地裁であった。地裁はパワハラなどが原因として労災を認め、決定を取り消した。

これ、見出しにも記事にも「パワハラが原因」と繰り返し書かれてますよね?でも、朝日新聞の記事は「24歳の自死を労災と判断 パワハラではないが『強い心理的負荷』」という見出しで、記事にも次のように書かれていたのです。

判決は、上司の言動は「業務に関連した指導や注意であり、明白なパワハラとはいえない」としつつ、男性が職場で疎外感や無力感を抱いていたと指摘。上司の言動に加え、男性が上司について「怖い」と述べたのに会社が適切な対策をとらなかったことが、精神疾患や自死につながったと判断した。

この朝日新聞の記事内容が事実だとすれば、この裁判を担当した東京地裁の小原一人裁判長は、問題の上司の言動や態度などについて「業務に関連した指導や注意であり、明白なパワハラとはいえない」と前置きした上で、うつ病や自殺と業務との因果関係を認めて、会社側に責任があったと判断したことになります。そうであれば「パワハラが原因」と報じた時事通信社の記事は「事実とは違う」ということになってしまいます。

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