自殺した社員に上司はどのような物言いをしていたか
たとえば、上司が男性に対して連日のように「バカ!」だの「マヌケ!」だのと怒鳴りつけていたのなら、これは完全に「パワハラが原因」ということになります。それでは、実際にはどんな物言いをしていたのでしょうか?どの媒体よりも詳しく具体的な朝日新聞の記事には、上司の発言について次のように書かれています。
上司は、男性が作った2年目社員報告会の資料について修正の指摘をする際に「そんなこと書く?」などと発言。賞与面談で「仕事受け身だよね」「いつまでもお客さまじゃどうかな?」などと述べた。
これらが問題の発言だとすれば、自分から進んで仕事を見つけず、上司から指示されるまで何もしないことを「仕事受け身だよね」と言ったり、本社から子会社への出向を「いつまでもお客さまじゃどうかな?」と言ったり、確かにネチネチした嫌な物言いをされていたことになります。このレベルのイヤミでも、来る日も来る日も言われ続けたら、蓄積されたストレスでメンタルにダメージを受けると思います。
しかし、あたしの感覚では、これらは「パワハラ」と言うほどでもないように感じます。記事の通りに「明白なパワハラとはいえない」という判断が一般的のように思います。
また、日本経済新聞は、時事通信社とも朝日新聞とも違った表現の見出しで「東京ガス子会社社員の自殺、業務原因と認定 遺族補償不支給取り消し」というものでした。こちらは「パワハラ」という言葉は使わずに「業務原因と認定」としているので、朝日新聞の報道内容とも合致します。そして、記事では次のように書いています。
小原一人裁判長は、上司や先輩社員が決算処理などで忙殺されていたことから業務の具体的な指示をせず、男性は一人で自席にいる時間が長かったと指摘。グループ内で疎外感や無力感を味わい、相当な精神的負荷があったと認定した。
こちらの記事内容が事実であれば、上司は厳しい言葉でパワハラまがいのことを繰り返したというよりも、忙しくて右も左も分からない出向社員の面倒など見ている余裕がなく「ホッタラカシにしていた」ということになります。そして、そうだったと仮定すれば、朝日新聞が報じた上司の具体的な発言「仕事受け身だよね」や「いつまでもお客さまじゃどうかな?」というイヤミも、辻褄が合うように感じます。
ま、どちらにしても、男性のうつ病や自殺の原因が「仕事」だったことは明白であり、労災認定して遺族補償給付を行なうように命じた裁判長の判断は正しかったと思います。しかし、このニュースを報じる上で、見出しや記事に「パワハラが原因」と書くか「パワハラではないが『強い心理的負荷』」と書くかによって、読者が受ける印象は大きく変わってしまいます。
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