不登校の増加が社会課題として注目される中、近年の研究では、通学時間やネット利用といった行動面に加え、学校生活への満足度が欠席や遅刻に大きく影響することが明らかになっています。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイー河合薫の『社会の窓』』では、著者で健康社会学者の河合薫さんが、こうしたデータを手がかりに、「学校へ向かう理由」とは何か、そして子どもたちにとっての「居場所」の意味について考察しています。
「居場所」があるから。
子供たちの「不登校問題」が深刻化する中、日本体育大学などの研究チームが高校生約6,000人を2年間追跡した調査結果が、国際ジャーナルに掲載されました。
論文のタイトルは、「Factors associated with school absenteeism due to difficulty awakening」。
不登校になる学生の多くが 「朝起きられないこと」による遅刻や欠席を経験しているため、月2日以上の遅刻・欠席が発生するリスク=「不登校リスク要因」を特定した貴重な研究です。
調査の結果、不登校のリスクを高める要因として、以下の3つが明らかになりました。
・長い通学時間(1時間以上):欠席リスクが 2.93倍
・長時間のネット利用(5時間以上):遅刻リスク 1.87倍 / 欠席リスク 2.13倍
・学校生活への不満:遅刻リスクが 約2.8倍
一方で、興味深い「リスクを抑える要因」も明らかになっています。 運動部で1日2時間以上活動している生徒は 約6割、家で2時間以上勉強している生徒は約4割、それぞれ遅刻のリスクが低かったのです。
研究グループは。「勉強や部活に熱心な生徒は、時間管理がうまく、目的意識も高い」と推察しています。
なるほど。確かにタイムマネジメントの観点はあるかもしれません。
しかし、私はそれだけではないと思うのです。
「学校に居場所があること」自体が、学校へ向かう強力な動機になっているのではないでしょうか。
部活の仲間がいる。クラスに気心の知れた友人がいる。 どんなに眠くても「あいつに会いたい」「私を待ってくれている人がいる」。 そんな繋がりが、自分の存在意義(アイデンティティ)を支えているのです。
私自身、中学時代はクラスメートに会いたくて学校へ行き、高校時代は部活の仲間に会うために、毎朝遅刻ギリギリで校門までダッシュしていました。
「学校」という場が目的ではなく、「学校にいる仲間」という人に会うために。会って「私はここにいていいんだ」と思いたくて、そこに行くのだと思うのです。
子どもの自殺者数が過去最多を更新し続けているという、あまりに悲しい現実があります。 それもまた、「私はここにいていいんだ」という確信の欠如が子どもたちから生きる力を奪っているからではないでしょうか。
「居場所」とは、誰かに必要とされ、ありのままの自分を受け入れてもらえる安心感のこと。「自分を待ってくれている誰かの笑顔」という、ささやかで、かけがえのない繋がりのことです。
不登校が増え続けている背景には、私たち大人が、子どもたちに本当の意味での「居場所」を用意できていないという側面も、きっとあるはずです。
効率や成果ばかりが求められる社会の中で、どうすれば子どもたちが安心して「ここにいていい」と思える場を守れるのか。
みなさんのご意見、お聞かせください。
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