米中関係の新たな局面を印象づけたと言っても過言ではない、北京での首脳会談。さらにジャーナリストの富坂聰さんは、両国の立ち位置にも変化が見え始めたとしていますが、そう判断する根拠はどこにあるのでしょうか。富坂さんは自身のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』で今回、会談後に浮かび上がった米中双方の思惑や関係性の変質ぶりを分析。その上で、中国が提唱する「建設的戦略安定関係」の意味と、協調へと向かう両国の現実的な選択について解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:やはり予想通りだった米中首脳会談で、アメリカが中国の「協調」に乗った理由
消えたアメリカの「上から目線」。中国の「協調提案」に米国が乗った理由
北京の人民大会堂前で習近平国家主席と握手を交わしたドナルド・トランプ大統領が、普段の様子と何か違って見えたのは私だけだろうか。
笑顔を浮かべ、訪中を喜んでいるように振舞っているものの、どこか心ここにあらずとの印象を残したからだ。
イランとの問題もあり、忙殺され、準備不足がたたったのだろうか。
ただ、いずれにせよ米中首脳会談はまずは落ち着くところに落ち着いたというべきだろう。
このメルマガの読者ならば、予想外な展開は何もなかったはずだ。「対中カードのないトランプ氏が台湾問題でディールする」という結果にも驚きはないだろう。私がちょうど1年前から予測してきたとおりの展開だからだ。
その上でトランプ訪中をざっと振り返っておきたいのだが、まず注目はアメリカのメディアの反応だ。
米テレビの三大ネットワークはキャスターとスタジオを北京に移し、現地から番組を放送した。なかでも熱心だったのはFOXニュースで、数日前から北京入りし、いくつかの特集番組を報じた。
またABCテレビもトランプ訪中に合わせた特集を組んでいたが、際立っていたのは小学生がAIを使って起業し、利益まで上げているというレポートだった。
一方で以前であれば中国にスポットライトが当たれば、インスタントに取り上げられた国内の人権侵害やウイグルやチベットなど少数民族の問題がどのメディアからもほとんど消えていることが気になった。トランプ大統領が人権などに関心が薄いという特徴があるにしても、時代の変化を感じずにはいられないのだ。
さらに大きな変化は、互いの立ち位置だ。
以前であれば、中国が何かしらの達成目標を持って臨み、アメリカがそれに応じるか否かが大枠の焦点であった。
例えば、コロナ禍前であれば「投資協定を結びたい」とか、その後でも制裁関税の撤廃や輸出規制、中国企業に対する参入障壁の緩和などがテーマとなった。
これに対してアメリカ側が上から目線で中国の内政に関してさまざまな注文をつけるというのが一つの形だった。
ところが今回は、イランでの和平の仲介やレアアースの輸出規制の完全撤廃、アメリカの農産物や航空機の購入など、目立ったのはアメリカ側の要求であり、中国がそれにどの程度応じるかが焦点となっていたのである。
中国が欲しいのは、米中関係の安定である。今回の会談で中国側が「建設的戦略安定関係」という言葉を使い、トランプがそれを否定しなかったことが話題となった。
中国が求めている「建設的戦略安定」とは、少し言葉を補えば共存という認識の共有であり、換言すれば「米中関係から『不可測性』を排除すること」にもなる。
いずれにせよ中長期的な関係を見据えた提案だ。
これに対しアメリカは、目の前の中間選挙(今秋)までに何らかの成果を持って帰らなければならないという焦りがあり、明らかに焦っていた。そのことも会談の性質に影響を与えたのだろう。
互いに同床異夢の要素を残しながらも何とか関係を前に進めることで折り合ったのは、対立よりも協力して発展という中国側の主張にアメリカ側が耳を傾けざるを得なかったからだ。
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