新千円札の顔となった北里柴三郎。近代日本医学の父として知られる彼が、成しえた快挙や信念について、無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』で紹介しています。
新千円札の顔・北里柴三郎の信念
去る7月3日、新紙幣が発行されました。
千円札の肖像となったのは、「近代日本医学の父」であると同時に、「感染症学の巨星」として世界的にも賞賛される北里柴三郎。
その北里柴三郎の印象に残るエピソードが、『致知』2017年2月号の特集総リードに紹介されています。
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1891(明治24)年、ベルリン滞在中の北里柴三郎を一人の青年が訪ねてきた。
ストラスブルグ大学留学中の医化学生で、後に京都帝国大学総長となる荒木寅三郎である。
時に柴三郎38歳、寅三郎25歳。
柴三郎は33歳で内務省衛生局からドイツへ留学、コッホのもとで研究に打ち込み、1889(明治22)年、当時誰もが成し得なかった破傷風菌の純粋培養に成功、世界の医学界を驚かせた。
さらに翌年、破傷風菌に対する免疫抗体を発見し、これを応用した血清療法を確立、「世界の北里」と評価される存在になっていた。
その柴三郎を一学究が訪ねたのである。
何か悩みがあるらしい後の帝大総長に、柴三郎はこう言った。
「君、人に熱と誠があれば、何事でも達成するよ。
よく世の中が行き詰まったと言う人があるが、これは大いなる誤解である。
世の中は決して行き詰まらぬ。
もし行き詰まったものがあるなら、それは熱と誠がないからである。
つまり行き詰まりは本人自身で、世の中は決して行き詰まるものではない」
当時、近代医学における欧米諸国と日本の格差は圧倒的なものがあった。
この彼我の差を克服すべく、さまざまな困難と闘いながら自ら一道を切り拓いてきた柴三郎。
その体験が言わせた信念の言葉である。
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