日本も戦争に巻き込まれること必至。トランプに見捨てられたネタニヤフの暴走がアジアを“火の海”にする最悪のシナリオ

Donetsk,Reg.,,Ukraine,-,Feb.,14,,2024:,War,In,Ukraine.
 

足掛け4年に渡り、ロシアからの軍事侵攻を受け続けるウクライナ。大国間の思惑が複雑に絡み合う中にあって、未だ停戦の見通しが立たないのが現状です。事態は今後、どのような推移をたどるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、ウクライナを舞台に展開される米ロと欧州の綱引きを手がかりとして、世界各地の紛争が相互に連動する力の構図を解説。さらに、停戦が先送りされ続けた先に待ち受ける国際秩序の崩れ方と、日本を含む各国が直面し得る現実を多角的に考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:“ウクライナ”を巡る大国間の綱引きと国際情勢を襲う複雑な力の構図

実現しない停戦。ウクライナを巡る大国間の綱引きと国際情勢を襲う複雑な力の構図

「欧州にとってウクライナの“和平”は外交上のトッププライオリティー。欧州抜きの合意など絶対に認めない」

ロシア・ウクライナ戦争の直接的な当事者ではないはずの欧州各国ですが、2022年2月24日に起きたロシアによるウクライナ侵攻前後から、欧州各国はこう考え、ロシアの動きを“欧州の安全保障上の脅威”と考えて対応してきました。

「ロシアがウクライナを侵攻するのではないか?」との憶測が飛び、アメリカ政府内でもその可能性が高いとの分析がなされた際、ロシアに行動を思いとどまらせようとしたのは、バイデン大統領のアメリカではなく、フランスのマクロン大統領でした。

マクロン大統領は何度もクレムリンを訪れ、非常に滑稽に映るほど長いテーブルの両端にプーチン大統領とマクロン大統領が座って会談している様がメディアに捉えられていましたが、マクロン大統領の呼びかけも空しく、プーチン大統領は“ロシアに対する根本的な脅威の除去”を目的にウクライナ全土に対する侵攻を行いました。

当初、欧州各国は、アメリカ政府同様、3日もあればウクライナはロシアの強大な軍事力の前に陥落し、ロシアの傀儡になるか、ウクライナが崩壊するという予測を立て、ポスト・ウクライナの絵図を勝手に描いていたようですが、予想に反してウクライナ軍は奮闘し、ロシア軍による圧倒的な攻撃を撃退し、これまで約4年近く、戦況はさすがに悪化してきているとはいえ持ちこたえ、“ウクライナ”はまだ生きており、ゼレンスキー大統領は今も大統領の座に就いています。

戦争はまだ続いているわけですが、そのような中、鮮明になってきているのが、国際情勢における欧州の影響力の著しい低下と、欧米関係の亀裂の拡大、そして高まる欧州の焦りが生み出す“解決”に向けた障壁という悲しい現実です。

「では欧州は不要か?邪魔か?」と尋ねられたら、私は「そんなわけない」と答えます(実際に今週、いろいろな機会に尋ねられました)。

実際に欧州は和平合意や停戦の実現に対しては、正直なところ影響力は発揮できていません。

安全保障面のみならず、環境・エネルギー政策や農業政策、特許や規格の協議などでも、気前のいいことを言って大判風呂敷を拡げ、世界をリードし、常識に基づいた行動を取るかのような持ち出し方をするのがお得意ですが、実際にはいろいろな言い訳を付けて、何も悪びれる様子もなく微調整を繰り返し、気が付けば何ら行動が伴っていないというのも、また皮肉な現実だと思われます。

私も様々な交渉に携わる機会を頂きましたが、ほぼ毎回、欧州が「~すべき」と原則論を盾に高い理想を掲げ、口火を切って非常に景気の良い目標を掲げる度、額面通りに評価してはいけないと言い聞かせ、欧州の交渉担当者の変心を織り込み済みで、解決策の提案を行ったり、条件付きの合意(contingency contract)を締結したりしてきました。

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