日本も戦争に巻き込まれること必至。トランプに見捨てられたネタニヤフの暴走がアジアを“火の海”にする最悪のシナリオ

 

欧州が果たしている「ブレーキをかける」という役割

しかし、欧州の存在は、交渉においては非効率であるものの、例えば今回のアメリカとロシアの間で起草された“ウクライナ”に関する合意案・和平案のような無茶ぶりに横やりを入れ、“解決策”が著しく当事者間のバランスを欠くようなことにならないように口出しをすることで、ロシア・ウクライナ戦争の停戦・和平合意の交渉が“ウクライナの実質的な消失”に繋がらないようにブレーキをかける役割を果たしていると考えています。

もちろん、欧州の行動はただの良心や恵まれているものの余裕に起因しているのではなく、欧州には欧州なりの利害が十分に絡んでいます。

ウクライナがロシアからの侵略の前に崩壊することは、欧州全域をロシアからの直接的な脅威に晒すことに等しいため、欧州地域全体の安全保障という観点からも、ロシアがウクライナをはじめ、周辺国に対して領土的な野心を持つことができないようなシステム作りが必要になります。

よく「ウクライナを欧州防衛のための緩衝地または盾として用いるつもりだ」と、欧州がロシア・ウクライナ戦争の停戦・和平にコミットする意図を非難する声も聞かれますが、100%それが間違った認識ではないにせよ、原理原則として主権国家を武力で蹂躙するという国際法違反を咎めるという法の支配の徹底と、国際秩序の維持という大事な要素もあると考えられます。

ゆえに、欧州の調停官仲間によると「欧州の行動および発言の軸となる要素があるとすれば、それは“このディールが公正かどうか”ということ」だそうです。

それゆえ今、アメリカとロシアが、ウクライナ(と欧州)を除外する形で、ウクライナ(と欧州)の運命を決めようとしていることに反感を抱き、和平協議および案が“まとまった”という情報が入ると、疎外された者同士、ゼレンスキー大統領を囲んで、ウクライナの戦いの後ろ盾であることを強調し、トランプ大統領とアメリカ政府に対して修正案を突き付けるという行動を繰り返しています。

「アメリカは欧州を重要な内容を決める協議の場に参加させないにも関わらず、資金的な援助や軍事的な援助の内容や方向性などを勝手に決めて押し付けてくる。これは決してフェアだとは言えず、欧州としては到底同意できない」

表向きは恐らくこう言うことなのだと思いますが、欧州が不快感を示す理由として考えられる要素として「戦後復興におけるウクライナにおける権益をアメリカが独占するのではないか」という猜疑心の存在があると思われます。

戦後復興プロセスについては、かつてのアフガニスタン復興の知見と経験を活かして日本も主導的な役割を果たすと期待されていますが、トランプ大統領が“停戦”や“和平”を語る際、その案には必ず【復興事業へのアメリカ企業の参加】や【レアアースやエネルギー資源の開発と権益に対するアメリカのシェア】の内容が含まれていることに鑑み、欧州の“仲間”曰く、「アメリカの目的は、和平の実現というよりは、権益の確保と拡大であり、それが達成できるのであれば、戦争の結果にはあまり関心がない」という認識があるのだと考えます。

それが意味するのが、「分け前をよこせ」という欲に絡んだものなのか、それとも欧州各国が主張するように「ロシアの蛮行により失われた正義をウクライナに取り戻すことが優先」というきれいごとなのかは分かりませんが、理由はいかなるものであったとしても、ロシア・ウクライナ戦争の停戦合意はどんどん先延ばしになっています。

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