かつてないほどに混乱し、分裂が深まる国際社会。その責をトランプ大統領一人に負わせる論調が大勢を占めていますが、果たしてそれは真実なのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、世界を「漂流状態」へと導いた要因を分析。その上で、さらなる大混乱に日本がどう備えるべきかを考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:迷走する国際情勢 分裂の深まりと国際社会が抱く淡い期待
「すべてをトランプの所業」とする姑息。分裂深まる国際社会が抱く淡い期待
「トランプ大統領が政界から去れば、きっと国際情勢はまた“正常な状態”に戻るだろう」
いろいろな機会に耳にする希望的観測ですが、果たしてどうでしょうか?
「一方的に要求を突き付け、相手が抵抗したり、相手の対応が気に入らなければ関税措置に訴えて脅す」
「平和の使者を標榜していたかと思うと、突如、圧倒的な軍事力を盾に強引な行動に出る」
「トランプ大統領の対応は予測不可能で、中長期的なビジョンもなく、その場しのぎの対応になり、それが世界全体を混乱に陥れる」
いろいろなトランプ批判が挙げられていますが、ではトランプ政権が終わったら、国際情勢は正常運転に回帰するのでしょうか?そもそも何が“正常な状態”かが分からなくなっていますが、現在の混乱は本当にトランプ大統領のせいなのでしょうか?
答えから言うとNOでしょう。
混乱は2014年にロシアがクリミア併合を強行した際に、非難はしても、経済制裁とロシアのG8からの排除を除き、大した対応を取ることが出来なかったことから始まるのではないかと見ています。その時、トランプ氏はまだ大統領ではありませんでした。
またトランプ氏が大統領としての1期目を務めている際には、コロナウイルスのパンデミックが起き、世界経済と物流が実質的に止まりました。この際、あまり報じられなかったのですが、富める国々は自前でワクチンを開発し、自国民に接種を促しつつも(強制的に)、世界における数多くの途上国への分配を渋り、途上国側の不満が爆発し、少し古い表現になりますが、南北対立が顕在化しています。その分断は今もまだ世界に残留しています。
そしてロシアによるウクライナ侵攻という、ロシアが国際法を無視し、自国のロジックをベースに看過できない行動に出た際、アメリカの大統領はバイデン氏で、その際も2014年のクリミア併合時同様、欧米諸国は仲間たちを募り、対ロ経済制裁を課すものの、ロシアの蛮行に対する行動、言い換えるとウクライナにNATO軍を配置してロシアとの対峙というリスクを冒してでも、ロシアの蛮行を早期に止めるという選択はせず、結果、ズルズルと悲劇が繰り返され、その戦争は今でも大きな被害と破壊を生み出しています。
トランプ大統領が就任して、再度和平協議的なものが表舞台に出てきて、ニュースを賑やかにしたものの、これまでのところ、全くと言っていいほど成果を生み出してはいません。
トランプ政権で対ウクライナ問題を担当している知り合い曰く、「トランプ大統領が登場した時には、すでに状況および情勢は固定していた。アメリカ政府が貫く他国の戦争に巻き込まれるべきではないという基本姿勢と、ロシアとの直接的な軍事衝突は回避しなくてはならないというボトムラインから、できることは少ないのが事実。それにこれはアメリカの戦争ではなく、欧州の戦争であり、アメリカの軍隊を派遣してまでコミットする必然性が見つからない」という認識があるようです。
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