「トランプさえ退場すれば世界が正常に戻る」は幻想。国際社会に混乱を招いた犯人は誰なのか?

 

中国の「中南米と北極圏」への進出も徹底的に阻止

その中国の世界進出、特にアメリカが歴史的に(一方的にではありますが)裏庭と考えている中南米および北極圏における影響力の拡大に対し、徹底的に備え阻止するという基本姿勢が浮き彫りになってきています。

例えば1月3日の対ベネズエラ攻撃と大統領夫妻の拘束は、表向きは麻薬カルテルの撲滅が理由の一つに挙げられましたが、世界最大の埋蔵量を誇る原油資源の掌握とOPECプラスが握る原油価格に対するコントロール体制を崩壊させるという狙いも透けて見えました。

ただ、ここでもう一つ出てきているのが、総額1.3兆ドルとも言われる中国からベネズエラの油田および原油精製施設等への投資をアメリカが凍結し、中国の経済的な覇権を崩壊させようという狙いも見えてきます。

国際的な議論の場では、中国政府がアメリカ政府に対して、その権益に対しての補償を求める訴えを起こしていますが、トランプ政権側は聞く耳を持っていないとのことです。恐らく今年中に数度予定されている米中首脳会談時のホットイシューの一つになるものと思われます。

これに関連して、ベネズエラにエネルギーを依存してきたキューバも、アメリカが対キューバ原油の供給を停止させる動きを見せていることで、重大な危機に直面することになりそうですが、キューバにも肩入れしている中国は、ベネズエラ周辺に近づけないことと、ベネズエラからの原油をキューバに回してやることができないため、アメリカ政府の(特にルビオ国務長官の)キューバ潰しが加速しています(そしてトランプ政権はキューバを中ロから取り戻し、現政権を倒して、親米国に変えたいという企みもあるという説があります。そうなると反米ニカラグアも危ないのではないかと…)。

舞台をグリーンランドに移すと、ここでも米中対立のネタが見つかります。

トランプ大統領がグリーンランドに拘り続ける理由は、もちろん噂に違わず、レアアースの権益の獲得もあると思われますが、一番大きな理由はグリーンランドの物理的な位置が、アメリカおよび北米大陸、そして欧州にとって非常に戦略的な場所にあることではないかと考えます(実際に世界地図をご覧になれば分かりますが、グリーンランドは北米大陸の続きではないかと考えられるほどアメリカ大陸に近接しており、ヨーロッパに比べると近いことがお分かりになるかと思います。実際に地図学の分野では、グリーンランドはアメリカ大陸に含められています)。

その戦略的な重要性がさらに高まったのは、皮肉なことにトランプ大統領がまやかしだと非難する気候変動問題の影響だと思われますが、厚い氷がずっと張っていて艦船の航行には向かないとされた北極海の氷が溶けて、軍艦および商業船の新たな航路として用いられるようになってきました。

先日のコラムでもお話ししましたが、以前、デンマーク政府とスウェーデン政府、英国政府の共催で行われたWilton Parkの会合「気候変動と安全保障」では、北極海の氷が溶けることによる軍事的なプレゼンスへの大きな影響について議論され、その中で「北極海の制海権を握るものは、軍事的にも物流的にも世界を制することになる」という結論が導かれました。

また、現在、北極海の深海には各国の潜水艦が潜水していて、非常に近接した状態でパワーバランスを保っていると聞きました。

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